第12話 リアネス国
リキ。
それが今の私の名前だ。
ここまで歩いて行く中で、この"リキ"という人物を少し理解した気がする。
まずリキはこの国の王子である。
最初は疑っていたけれど、あのリキが言っていた"王宮での生活"のことや、ルキアが"殿下"と呼んだことによってその可能性は濃くなった。
そして、街の人たちのコソコソと話すその内容で確信した。
「リアネスの未来をあんな王子に託すなんて無理よ…」
「…魔女の子だぞ、なんと穢らわしい…」
今もこうして街を歩くと聞こえてくる話し声。
私の耳にはしっかりと届いていた。
"リキ"という人間は、魔女と呼ばれる母親の子であり、ここリアネス国の王子だ。
話を聞いているだけで情報が次々と耳に入って来た。
どれも良い話とは言えないけれど、リキはこんな暴言を吐かれながら暮らしていたのか。
私に会った時、穢らわしいと言っていたのもこうした周りの影響もあるのではないかと思い始めた。
そしてリキ自身も恐らく人々に対して冷たく当たっているのだと想像出来た。
皆が口々にリキの態度について不満を述べ、この兵士たちの態度も少し変だったから。
一体、リキはどれだけ冷たく当たっていたのか。
そんな疑問が次々と溢れ、耳を塞ぎたくなるような重い道のりを私はゆっくりと歩いて行った。
人々の言葉にすっかり疲れてしまった私は、目の前に大きな城が見えて来たことに気づいていなかった。
一歩一歩重い足を前に出し人々の不満を聞いて歩く。そうして久々に顔をあげると、そこには広い草原が広がり、その先に大きなお城が建っていた。
『わぁ…』
絵本でしか見たことがなかった城を目の前にして私は思わず目を見開いた。
ぽつぽつと並ぶ家を超え、壮大に広がる草原に辿り着いた時、その城は姿を現したのだ。
白を基調としたそのお城は高く聳え立ち存在感がある。
遠くに見える城門には兵士が構え、馬に乗った貴族や騎士らしき人たちが行き来していた。
絵本で読んで想像してたより何倍も大きく見えた。
草原までやってくると雪はすっかり無くなり溶けていた。
さっきまで森の中にいたのが嘘のように空は晴れ、雲が所々に散りばめられている。
穏やかな風が私の頬を掠めては空高く舞い上がって消え、まるで新しい私を応援するかのように背中を押した。
この広い草原で、思わず駆け回りたい気持ちになりながらも私は城へと歩みを進めたのだ。
やがて草原を越えると、遠くから見えた兵士が二人並ぶ城門までやって来た。
ここまでの道のりで、誰一人として声を発さなかったのは少し驚いたけれどもしかしたらこれが普通なのかもしれない。
周りにいた兵士は私に一礼するとそれぞれ持ち場に戻るのか解散をした。
ただルキアだけは私の側にいたままついにその大きな城門を潜ったのだった。
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