第2話 お弁当

☆住山楓(すみやまかえで)サイド☆


くぅ!腹立つ!

徹の為にスマホを届けた挙句の果てにわ、私のスマホを使うって...。

いくらフリマサイトだからってありえない。

どうしてもスマホを徹に使ってもらうのが許せないのもあったから「代わりに私を使ってほしい」と言った。


すると徹はこんな感じの反応をした。

「おおそうか。ならお前をこき使ってやる。先ずは1万円返金の為に俺にお弁当を作るんだ」という感じの。

私は真っ赤になって「そんなのできるわけないでしょ!」と言ってしまった。


だけど嫌じゃないのは何故なのか。

私は「?」を浮かべながらお弁当を作る。

朝の5時からだ。

それからちょっとだけ欠伸をしながら徹の元に向かう。

そして家の前で待っているとドアが開いた。


「...うわ!?お前何をしているんだ!?」

「え?何をってお弁当作るって約束だったでしょ」

「そ、そうか。...え!?本当に作ったのか!?」

「そうだよ」


それから私は青い布の包みを徹に渡す。

すると徹は赤面しながらその青い包みをもどかしい感じで受け取る。

私はその顔にニヤッとした。

「あれあれ?オタクくんはこういうの耐性が無いのかなぁ?」と言ってみる。

すると徹は「うるさいなぁ」と赤面して言う。


「...お前の弁当とか数年ぶりだから」

「え?...あ。...確かに...」

「...正直。嬉しいんだよ」

「...」


カァッと耳まで赤くなる。

それから私は目を逸らした。

そして唇を噛む。

そんなこっぱずかしい事を良く言える。


「...ねえ。徹」

「...何だ」

「学校では内緒ね。...私達の事」

「フリマサイトでまた縁が繋がった事がか」

「そう。...だって私達の学校生活に影響するから」

「...そうだな。確かに」


そして歩き出す私達。

そして徹を見る。

身長が...私より遥かに大きい。

こんなに男の子って成長するんだなって思える。


「...私が身長勝っていたのに」

「いつの時代の話だよ。人は成長するもんだぞ」

「まあ確かにそうだけど。腹立たしい」

「イライラしてもしゃーない」


そんな感じで話しながら歩く。

それから途中で人混みが多くなり別れた。

このまま歩いていたら誤解される。

そう思ったからだ。



私は特進クラス。

そして徹は普通クラス。

そんな感じで別れているのだが。

私は特進クラスで授業の準備をする。

するといきなり背後から胸を揉まれた。


「きゃ!?」

「えへへ。楓ー」

「もう!陽子!いい加減にして」


佐野陽子(さのようこ)。

17歳。

日焼けした感じの身長があまりない少女。

小学生に思えてしまうが大切な私の友人だ。

童顔で可愛い。


「今日は眠たそうだね?どうしたの?」

「え?そうかな。眠たそうに見える?」

「うん。とってもね。...どうしたの?」

「勉強していてね。疲れているだけかも」

「あー。そっか。成績がね」

「...私、あまり優秀じゃ無いから」


特進クラスは優秀な子が多い。

だから私みたいなのは論外なのだが。

母親と父親の意見でこのクラスになってしまった。

だからこそ苦労も多いが。

だけどその分私は...こうして環境に恵まれている。


「私も優秀じゃ無いよ?だから気にしない気にしない」

「待って待って。陽子は勉強あまりしてないでしょ」

「そうだね...うん。だって楓が好きだからそれだけで良いかなって」

「...あのねぇ」


そんな感じで会話をしているとチャイムが鳴った。

それから先生が入って来る。

その様子を見た陽子は「じゃあね。楓」と言いながら手を振った。

私も手を振りながら意気込む。

そして勉強を始める為の準備をし始めた。


☆神嶋徹(こうしまとおる)サイド☆


うーむ。

昨日はムカついたから勢いで「お前弁当作れ」と言ってしまったが。

迷惑だったかもな。

後で撤回しないといけない。

そう思いながら居ると「よお」と声がした。


「?...野上」

「どうしたんだ?凹んだ顔して」

「...いや。どうもしてないな」

「もしかしてスマホか?まだ買い替えて無いのか?」

「い、いや。それはまた別だな」


野上劉生(のがみりゅうせい)。

俺の親友の男子生徒。

少しだけチャラいホストみたいな野郎だが。

とても良い奴だ。


「じゃあ何だ?」

「...女子に謝るにはどうしたら良い」

「...?...お前何をしたんだ?」

「ちょっとな。気になる事をしてしまった。だから謝りたい」

「ああ。そういう事か。...なら直接面と向かって話した方が良い」

「そりゃそうだな」


そんな感じで野上は言うのに答える。

それから肩を竦める野上。

俺は「?」を浮かべて見る。

すると野上は「まあ俺の場合はそれが出来なかったからな」と少しだけ複雑な顔をした。

ああ。成程な。


「幼馴染さんか」

「まあな。小学校低学年の時に無言で別れたから何とも言いようが無いけど後悔しか無くてな」

「...そうか」


野上はその子の事が好きだったらしい。

今でも引き摺っていた。

俺はその姿を見ながら考えた。

そして決意をした。

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