第3話 人質の諭吉
うーむ。
このままではいかん気がする。
弁当作れとか命令形で言うのもな。
それも何だか俺の性に合わない。
思いながら俺はお弁当を取り出して屋上で野上と食べる。
「あれ?お前お弁当とか作るたちだっけ?」
「ああ。...あー。えっとな。俺のお姉ちゃんが作るって言ってな」
「あ?お前にお姉さんいたっけ?」
「親戚が作るって言い出してな」
「変わってんぞ」
まあ何でも良いだろとにかくよ。
俺はお弁当を開ける。
するとそこにはふりかけ卵のかかったご飯。
おかずにミニハンバーグとかプチトマトとか色々入っていた。
全て手作りの様に見える。
アイツ何時から作ってんだよ。
「お前のお弁当旨そうだな」
「ああ。味は保証できるぜ。だって俺の親戚が作ったもんだし」
「嘘つけこのハゲ。お前の親戚にこんな律儀な奴が居るか?」
「ハァ?殺すぞ?お前は俺の事を何も知らない」
ったくな。
考えながら俺はお弁当を食べる。
明らかにアイツの。
つまり楓の腕が上がっている。
滅茶苦茶美味いんだが。
どうなっているんだ。
「俺卵焼きもーらい」
「お前ざけんな!返せよ?!」
「うめぇな。これ。結構愛情が籠ってんぞ」
「...愛情...か」
そんな事は無いと思うけどな。
俺は思いながら苦笑しつつお弁当を少しずつ食べていく。
そうしていると野上が「そういやさ」と聞いてきた。
俺はその言葉に「ああ」と返事をする。
「お前って幼馴染居るのか?」
「ほぶふぁ!!!!!」
何でそれを知ってんだよ!!!!!
俺は絶句しながら野上を見る。
すると野上は「いや。一個下の妹がな。噂を耳にしたって言ってな」と言ってからパンを食べる。
俺はたらたら汗を流しながら「まあ男だしな」と答える。
まさか学校1の美少女。
つまり楓の事を知られる訳にはいかない。
すると野上はジト目になった。
「お前それは本当だな?なら放課後に紹介してくれよ。俺も友人になりたい」
「...それは無理だ。アイツは引っ込み思案の野郎だしな」
「そんな無茶苦茶な事が?お前と幼馴染なのに?」
「ああ。ぱ、パーカーを主に着ている」
「はぁ?」
意味不明という顔をする野上。
それからパンくずを払ってからぐしゃぐしゃとビニールを丸める。
そしてゴミを袋に詰めた。
そうしてから「引っ込み思案にしては簡易過ぎないか?」と野上はジト目に更になる。
「...野上。1つ言うが」
「...あ?何だよ」
「俺は美少女に好かれない。俺は気持ち悪いオタクだ。2次元らぶゆーだ。分かるか?だから3次元で愛なんてありえない」
「キモイなお前」
「そう。だからこそ...」
そこまで言っているとスマホが鳴った。
それはメッセージアプリの通知だ。
それから俺は「何だってんだ」と思い開く。
そして文章を見た。
そこに楓から(お弁当、美味しかった?)と文章が来ていた。
(まあまぁだな)
(は?もう作ってあげないんだけど)
(お前な。なら食料品代を返せ。ふざけんな)
(偉そうに。1万円ぐらい良いでしょ。私の可愛さに貢いだって事で)
(すいません。返して下さいませお代官様。マジ高校生で1万円が詐欺られるのはキツイ)
(...まあ良いけど。でも返さない)
何でだよ。
俺はその文章を見ながら「?」を浮かべていると(こ、今度買い物に付きあって)と送られてくる。
はい?
俺は「???」となりながら文章を顎に手を添えながら見る。
そうしていると野上が「おい。誰とメッセージしてんだよ」と言ってきた。
「大丈夫だ野上。俺の嫁だ。2次元の。AIだよ」
「気持ちわりーなテメェは...」
「煩いな。嫁を舐めんな」
「知らんわ」
そう言いながら居るとメッセージがまた送られてくる。
間髪入れずに送られてきた。
(ねえ。聞いてる?)という感じでだ。
俺は(すまないが今は忙しい)とメッセージを送った。
するとむすっとした様なキャラクターのスタンプがありいきなり無料通話でプルルルルと電話が掛かってきた。
とりま切ってみる。
しかしまた掛かってきた。
何だよ?!と思いながら疑問符を浮かべている野上を見る。
「か、母さんだ。すまないが電話に出たい」
「分かった。電話して来い」
「有難うよ」
そして俺は駆け出してから陰で電話を掛ける。
「お前本当にふざけんな!何だよ何度も!」とコソコソしながら言葉を発する。
すると楓は『だって私を無視するから』と怒った様な言葉を発する。
俺は盛大に溜息を吐いた。
「お前な。今はめちゃ忙しいって言ったろ」
『逆に忙しい時ってある?徹に』
「...お前ぶっ殺すぞ。マジに。忙しい時は忙しいんだよ!!!!!」
『ほーん。じゃあ100文字で述べてみてごらんよ』
「無理だろ!!!!!」
ああもうめんどい!
思いながら居ると『だって徹が心...じゃない。私はアンタが心配なの。私はお姉ちゃんだから』と言ってくる。
このクソガキ。
うん?でも最初の方何つった?
『とにかく...買い物の件。宜しく』
「...拒否権は?」
『1万円分のフリマ代は私が吸収するって事で』
「おかねがえじでよぉ!!!!!」
『返さないもーんだ。ふーん』
あぁぁああ!!!!!この野郎!!!!!
俺は頭を抱えながら電話を切る。
何でこんな目に遭うのだ俺。
考えながら俺は野上の元に戻った。
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