第6話 辛い日々は続く
大急ぎで動物病院へと向かった。もう診療時間は過ぎているが、
気にしないで中に入ってと言われた。
「………」
もう動く事のないちょろがそこにいる。
脳味噌が現実を把握していないかのようで、
まるで頭の中がからっぽになったようだ。
これは本当に現実なのか?
「突然の心臓発作です」
獣医さんから説明を受けた。結石に関しては、大きな問題はなかった。
手術が上手くいけば大丈夫のはずだった。
しかしながら、多少太り気味だったちょろは、気が付かないうちに
心臓への負担がかかっていたらしい。そして何らかの原因で発作がおき、
それが命取りになったらしい。
どうして心臓の事に気が付いてやれなかったのか。
獣医さんにとっても想定外だったんだ。誰も責める事は出来ない。
ようやく現実が受け入れられて、自分の目から涙が溢れてきた。
あまりにも突然な別れ。看取ってやれなくてゴメンよ、ちょろ。
まさか、1年も経たないうちに同じ業者さんに連絡を入れる事に
なるとは思わなかった。もしまるも手遅れだったら、
1年以内にすべての家族を失う事になっていたかもしれない。
まるだけでも生き残ってくれてよかった。
また同じお寺で葬儀をする。ちょろは体が大きかったため、
ももの時より一回り大きな骨壺に収められた。
大きい体ながら、甘える時は思いっきり甘えてくる。
時にももにちょっかいを出してふてくされてもいたが、
自分が帰宅する時には、いの一番で出迎えてくれたなぁ。
色々やらかしはしたけど、やっぱり可愛い自慢の子の一人だよ。
今までありがとう、ちょろ。
一緒にいてくれてありがとう。
そしてちょろとの別れからのショックも癒えていない中、
4月から新しい職場での仕事になる。
ちょろとの別れを引きずって仕事での失敗が無いようにしないと。
そして新しい職場。気分を切り替えて辛い気分を吹き飛ばそうと思ったが、
現実は甘くなかった。職場の人とは相性が最悪だった。
何というか、ここの職場の人は頭が固いというか、
ここのやり方じゃないとダメというか、規則通りに行動しろと。
そういう事を五月蠅く言ってくる。その分ストレスも溜まってくる。
確かに仕事量は今までよりも多いから、要領よくやらないといけないのは
分かるけれど、暫くの間は慣れなくて四苦八苦したものだった。
何より部長が石頭だったから、気安く相談出来なかった。
唯一の救いは、上司の一人が以前別の職場で仕事を教わった人だった事か。
でも翌年には定年退職するのだそうだ。
そういえばこの時期は、まるが一人だけだったな。
ももとちょろが寝ていたケージは、どうしても片づけられなかった。
だからまだ寝室は狭いままだ。ストレスで気持ちが安定しなかったのかも。
負の連鎖から抜け出せるのはいつになるのだろうか?
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