第4話 ありがとう……。ゴメンね……。
ももの血液検査等の結果を聞くために獣医さんの所に行ったのだが、
注げられた言葉は衝撃的だった。
「残念ながら、この子は長くありません」
血液検査の結果、ある数値がどうしようもない事になっていると。
もう腎臓がかなり悪い状態だと。
もちろん、即入院となった。
頭がからっぽになり、この現実を受け入れられなかった。
まだまだ若いのに。どうにかなるんじゃないのか?
根拠もなく、そう思った。
そうだ、ももはプライドが高い子だった。
飼い主に心配かけないよう、辛くても気丈に振舞っていたんだ。
多分、そうだと思っていた。
それが裏目に出て、こちらが気が付かなかったのは……。
変化を見抜けなかったのが口惜しい。飼い主失格だな。
次の日から可能な限り、出勤前にもものお見舞いに行った。
限られた短い時間しか会えないが、ももには頑張ってほしいと。
そして良くなってまた抱っこしてあげたいと。
足に繋がれた点滴のチューブが痛々しい。
でも本当にもう短い命なのか?そう思えるほど元気そうには見えた。
いや、やっぱり我慢しているのかな?
そして運命の7月23日を迎えた。
その日は土曜日で仕事も休みだったので、相方と一緒にお見舞いに出かけた。
何とか良くなってほしいと、短い時間ながらももを励ましていた。
その時は、特に変わった様子もなく現状維持の状態だった。
それ以後は、家で大人しくしていた。何だか雨が降りそうな微妙な天気だった。
夕方くらいだったか、電話が鳴り響いた。誰だろう?
出てみると動物病院からだった。
「ももちゃんが危篤状態です。出来るだけ早く来てください」
大急ぎで支度をして、家の近くにある動物病院へと行った。
まだ大丈夫だと思っていたのに、どうしてなんだ?
すぐに診察室の奥にある、ももがいるケージに向かう。
もう、おちゃんこする元気もなく、寝そべったももがそこにいる。
気丈に振舞う元気さえ無さそうだった。
それでも自分達が来たとき、心なしか嬉しそうな顔をしたように見えた。
「頭を撫ぜたりして励ましてやってください」
もう自分達にはどうすることも出来ない。最後まで見守るしか出来ない。
何と不甲斐ない事か。自分達は何て無力なんだ。
相方と一緒に、頭を撫ぜながら、ももに声をかける。
「今まで一緒にいてくれてありがとう。うちの子でいてくれてありがとう」
「不甲斐ない飼い主でゴメンね。痛みを気付いてやれなくてゴメンね」
「もっと一緒に遊んでやれなくてゴメンね。
ちょろとまるを連れて来れなくてゴメンね」
「こんな飼い主なのに、甘えてくれてありがとう。
もっと抱っこしてあげたかったよ」
「ももはいつまでも自慢の子だよ。色々なものをもらえたんだ。ありがとう」
もう苦しさでどうしようもないはずだけど、
どこか安らかな表情をしたようなももがいる。
もうお別れの時が近いのかもしれない。
自分も相方も涙が止まらなかった。ももを連れて行かないで。
そしてこの時がやって来た。獣医さんに声をかける。
ももは辛いのによく頑張った。もうゆっくり休んでいいよ……。
最愛の子であるももが天に召された。
まだ7歳の若さだった。覚悟をしていたが、ポッカリと穴が開いたようだ。
天国で幸せに暮らせるといいなと、思うしかなかった。
外は雨が降っていたようで、地面が濡れていた。
きっと涙雨だろう。
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