第3話 前兆

初めてももを迎え入れてから、もう6年が過ぎた。

もも、ちょろ、まるの3人は、まぁ仲良くしているかな。

ももは相変わらずプライドが高く、じゃれ合うのは好まない。

ちょろは、ももに近づいたら猫パンチで威嚇されてシュンとなる。

でも、ももの機嫌がいいときは、寄り添う事もあるかな。

そしてまるだけど、この子は本当に人見知りをしない子だ。

玄関に知らない人がいるときでも、平気で近寄って来る。

知らない人を見かけたら、一目散に逃げてしまう

ヘタレのちょろとは大違いだ。


いや、ヘタレとは言っているけど、ちょろは知能は高かったと思う。

教えたわけでもないのに、いつの間にか体を駆使して

引き戸を開けるようになっていたし、気が付いたら、トイレのタンクに流れる水で

水遊びをするようになっていた。それを見ていたまるも、

いつの間にか一緒になって水遊びしたり、手で水をすくって飲みようになったっけ。

ももは真似しなかったけど。やっぱりプライド高い子なのね。


そういえばまるは、プライドの高いももとも、すぐに仲良くなったっけ。

ももは、ちょろとはなかなか慣れ合わなかったのに何でだろうとは思っていた。

そんなある時、何気なくそれぞれの血統書を見ていたら、意外な事実がわかった。

なんと、ももとまるとは血の繋がりがある事がわかったのだった。

成程、だから相性が良かったんだな。納得した。


3人を養う事で、生活にも変化が色々と。

まずは、気軽に旅行等には行けなくなった事。

まぁ猫様の世話もあるし、それは仕方ないかもしれない。

どうしても遠出をしなければならなくなった時は、

まるを購入したペットショップに預ける事になる。

ここはペットホテルもやっているので。

しかしながら、ここで生活していたまるは兎も角、

ももとちょろは、なかなか慣れなかった部分がある。

特にももは、最初に預かってもらった時は、

ストライキを起こしてしまい、餌を食べないどころか、

トイレさえもしないという事態に。

こういうところが頑固だったりするんだよね。


3人いると、やはり出費も多くなってくる。

餌も安いものではなく、獣医さんの所で扱う様な餌にしているので、

どうしても単価は高くなる。人間様よりも高い位だ。

猫砂代もばかにはならない。

いざという時の為の保険にも入れているし、毎年の予防接種がある。

ノミダニ対策に薬もつけている。

避妊や去勢の手術もしなくてはいけない。などなど。


意外なものだと、携帯の充電コード代。

やはり猫様はひも状のものが好きなようで、

ももやちょろが、よく線を咬んでダメにしてしまっていた。

咬まれないようにコードを隠したりしても、油断していたら咬まれていたり。

有線のイヤホンやヘッドホンも犠牲になった。

結構高めのヘッドホンのコードをかじられた時は、泣きたくなったなぁ。

そういえば、古新聞を縛ったりする時に紙ひもで縛ったりしていると、

ももやちょろがいつの間にかやってきて、紙ひもとじゃれ合ったりしていたっけ。

でも不思議とまるは、そんなに興味を示さないな。


そしてどうしてもかかるのがエアコン代。特に夏場は、猫様がいる

寝室は一日中、エアコンを使っている。

でも人間様よりも猫様の健康が大切だと、相方との意見は一致している。

冬場も出来るだけ暖房を入れるようにしているが、部屋を抜け出て

窓際で仲良く日向ぼっこしている時もあったっけ。

そういうのを見ていると、何だか微笑ましく思ってしまう。



そんな日々がずっと続けばいいなとは思っていた。

でも現実は、かくも残酷である。


後から知ったのだけれど、スコティッシュフォールドという品種は、

他の種類と比べると、育てやすい半面、寿命が多少短めという事だ。

そして病気にかかりやすい面もあるという。

特に結石が出来やすいとの事。


そういった病気とかに関する事は、この当時はあまり意識していなかった。

それが判断ミスへと繋がる遠因になろうとは思ってもいなかった。


ももの胃腸の調子が悪くなる事が何度かあった。

この子は胃腸が悪いからと思っていて、しっかり検査を受ける事はなかった。

まぁ大丈夫だろう。そんな軽い気持ちだった。


「ねぇ最近、ももって、ちゃんとおしっこしてる?」


ある時、相方からこう聞かれた。そういえば、回数が少ないような。

もしかしたら、トイレ以外でやっているのかな?

その時はそんな認識だったので、それ程気にしないでスルーしていた。


「やっぱり、しっかりおしっこしてないんじゃ?」


どうも様子がおかしいと感じ、行きつけの獣医さんの所に向かう。

そして思わぬ事を告げられたのだった……。




○○○○


次回は悲しい部分を書きます。

そういうのが嫌な方は、スルーしてください。

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