第2話 新しいお友達
ももを飼い始めて1年が過ぎた。初めはおっかなびっくりしながら
悪戦苦闘していたけど、餌も固形のものに変えれたし、
すくすくと育っていった。ただ、ももはツンデレで、なかなか懐いてくれなかった。
かなり経ってからようやくデレてくれて、それはもう幸せな気分で一杯だった。
「そろそろ、ももにもお友達が欲しいんじゃないかな?」
ある日、相方からこう提案された。確かにそうだろうけど、
でもそこまでお金もないしなぁ。多分、無理じゃないかな。
でも、出会いはいつも偶然にやってくる。
普段あまり行かないペットショップに、全身がほぼ真っ白の
スコティッシュフォールドがいた。凛々しい顔をしたオスの子だった。
何でも、ちょっと茶色の毛が混じっているから、値段が安くなったのだと。
それでも、ももを購入した金額の4割ぐらいの値段がする。まぁ生まれたばかりではなく、生後半年ぐらいだからべらぼうには高くはない。無理すればなんとか……。
「この子ならいいお友達になるんじゃないかな」
ほぼ即決だった。でもまたローンが……。
名前に関しては、また喧喧囂囂だったけど、最終的に
チョロチョロ動くからと、『ちょろ』に決定した。まぁ納得かなぁと。
しかし、このちょろだけれど、お店にいた時はそれこそ猫かぶっていたようで、
まぁやんちゃな事。よく夜中に一人で運動会してた。
最初は、ももとも仲良く出来ず、ちょっと失敗したかなと思ったけど、
段々と仲良くなって安心した。でも、ももの方が序列が上のようで、
ちょろは頭が上がらないようだった。
そう、ちょろはビビりでヘタレだったのだ。でも体だけはかなり大きくなって
最終的には5キロ近くにもなってしまった。お腹も垂れてしまったので、
獣医さんにはダイエットしろって言われてたなぁ。
体がある程度大きいから、割と力もあったりした。
そして忘れられない飼い主を病院送りにした事件。
何で興奮したのかわからないが、自分の左腕に絡みついてのケリケリ連打。
ちょうど爪も伸びていたので、あっという間に左腕がひっかき傷だらけに。
血も滲んでいて、雑菌が入ったらヤバイと、
夜間診療の病院に駆け込む事になりました。あの時は参った。
思わず、「焼き猫にしてやる!」って言ってしまったけど、許してね。
そして脱走事件。ある日、帰宅して玄関を開けたら、物凄い勢いで
ちょろが飛び出して行ってしまった。いきなりの事で呆気に取られてしまった。
すぐに探したが、まるで見つからない。
もしかしたら遠くへ行ってしまったのだろうか?
恐らく、顔は真っ青になっていたのだろう。そしてもう一度探してみる。
ん?車のタイヤの影に……。
タイヤの影に小さく丸まっていたヘタレのちょろがそこにいた。
うん、あの時は焦ったなぁ。兎に角、無事でよかった。
そういえば、ももはそういった飼い主を困らせたエピソードって
あまりなかったなぁ。せいぜい、壁で爪とぎしてボロボロにしたくらいか。
その代わり、普段はプライドが高そうな雰囲気なのに、
甘えてくる時はベタ甘えだったりした。親ばかみたいだけど可愛い子なのよ。
更に1年程が過ぎた。もうどちらも大きくなった。
くりくりで可愛いおめめだったももは、飼い主に似たのか、
若干、眼光が鋭くなった気がする。でも相変わらず、おちゃんこしている時は
気品に溢れている。
そしてちょろは、日に日に大きくなっている感じだ。餌も抑え気味にしているのに、
何故なんだろう?お腹が垂れ気味なのが気になり始めた。
幸いにして、これまで大きな病気もなく過ごせている。
毛玉ではなく、何度か餌を吐き戻したので、獣医さんの所に行ったくらいか。
そして、ももに与えられた消化不良用の薬、錠剤を小さく砕いて与えたけど、
どうやらまずいみたいで、口に入れても、すぐに舌で戻してぺっと吐いたっけ。
その時は若干、苦労したなぁ。
そんな中、ペットショップに、ももとちょろの爪切りをしにいった。
爪切りが上手く出来ないので、とあるペットショップにお世話になっている。
ももはいつも、大人しく爪切りをやってもらえるようだが、
ちょろは機嫌が悪いと大暴れするようだ。迷惑をかけて申し訳ないという思いだ。
そしてある話を聞いた。ここはもうペットの販売から撤退すると。
最後まで売れずに残っていた子が一人いるけど、どうするんだろう?
もう2歳ぐらいになるから、引き取り手がいないかもとの話だった。
爪切りに来るたびに、愛くるしい顔に癒されていたけど、どうなるか気になるなぁ。
そして相方が口を開く……。
「うちでどうにか出来ないかな?」
お金の事よりも、3人一緒に育てる事が出来るかどうかの方が心配だった。
でも何とかなるという、相方の根拠のない自信に押し切られて
この子を引き取る事にした。
もう最後だという事で、住んでいたケージごと、血統書付きしては
破格値で譲ってもらった。まぁ、もう大きいからなぁ。
とても可愛い顔をしていたのに、長い間売れなかったのは謎だったが。
この子の名前に関しては即決だった。真ん丸なお目目に真ん丸なお顔。
『まる』以外に思いつかなかった。
こうして3人と暮らす生活が始まった。もう寝室は、ケージ3つで
随分と狭くなってしまった。でもそんな事は気にならない。
苦労はもちろんあるだろうが、それ以上に貰える幸せが大きいのだから。
うん、何とかやっていけるんだろうなと。
このままの生活、ずっと続くといいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます