第24話 発想論2

三十、発想するための準備


 前回「理解するとは分解することである」と説明した。いわゆる頭のいい人の理解というのは(おそらく)普通の人がやっている「拾っていく、積み上げていく」という考え方をしない。それはとても非効率的だし完璧におさえることができないからだ。なにより膨大な時間がかかり完遂することができないことの方が多いという現実が待っている。

 勉強のできるできないで例えてみると、できない人ほど真正面から覚えようとして取り組むが、結局最後までどころか最初のあたりで挫折してしまう。それは何故か。拾う=頑張るというやりかたには無理があるからだ。一方勉強ができる人間は「無駄を捨てていく」ことができるので、真正面から取り組んでいる人間の何倍ものスピードで無理なく勉強をしていける。勉強をしているという意識すらなく結果を出せる。

 捨てるというのは分解ができるとほぼ同義である。物事は積み上げていく方には正解がなく、分解していくあるいは余計なものを捨てていく方にしかないのだという理解ができれば、普通の十分の一以下の労力で十倍以上の成果が出すことができる。そういう方法を知らない大半の人は「とにかく努力する」という非効率的かつ無意味な時間を費やして挫折してしまって結果が出せないという失敗しか積み重ねることができない。

 

 わたしがカクヨムや公募をしている人の行動を見る限り、小説においても発想がスタート地点であると考えている人はかなり少ない。いきなり書く(考えもせず行動する)ことを繰り返していればいずれ結果が出せるという感覚で取り組んでいる人があまりにも多く、どうやったらそれで結果が出せるのだろうと不思議でならないのだ。

 繰り返しになるが、物事に対して大抵の人は「作っていく、組み立てていく」ことが大事だと思っている。小説で言えば書いていくことが大事であるという価値観だ。しかしながら頭の良い人間はまず「分解する、捨てていく」ことを考える。余計なゴミを減らして、本当に必要なものをあぶりだしてしまえば、本当にやるべきことはそんなに多くはないことを知っているからだ。

 少し例を出してみよう。あなた方の部屋がとんでもなく、それこそ「ゴミ屋敷」になっているくらいの状態だとする。その時、あなた方はどうやって片付けをしようと考えるだろうか。おそらく、ゴミ袋を手にして、目の前の物から始めようとするだろう。しかし、そんなやり方をしていると、結局のところ膨大なゴミの量と「これでは時間ばっかりがかかる」という現実に直面して精神的に負け、片付けるのを断念してしまうだろう。最後までどころか最初の二時間くらいでハアハア言って終わってしまうのが関の山ということだ。ある意味当然の結果である。

 しかしながら「分解する、捨てる」やり方を知っている人間であれば、まずは大きなゴミ、例えば段ボールだけを捨てていく、服だけをゴミ袋に入れていくことができるだろう。そうやって「障害になっているもの」を排除するところから始めることで、最終的に残った小物を処理すればいい状況を作り出せる。これは効率もさることながら、「最後までやり遂げられる道筋を作っている」という点において、手当たり次第にやっていく考え方とは天と地ほどの差がある。

 つまり、物事にはやり方・考え方があるということ。そして、それを知っているか価値観を持っているかで、「頭の良し悪し」の評価が決まっているということだ。

 とはいえ、今のあなた方が頭が良かろうが悪かろうが大した問題ではない。公募で二次選考を通過する程度のことに知性やIQなど必要はないからだ。頭のいい価値観と実践できればいい方法を習得さえしていれば、少なくとも八割以上の人間よりはまともな道を歩けるからだ。二次選考通過率が一割くらいだとすれば、かなりの合格率の上昇ができるわけだ。

 

 おそらくあなた方の大半には、わたしの言っていることが「反対」に聞こえると思う。努力に美徳を感じるのではなく、考え方によって結果を出そうという価値観などないと思われるからだ。もちろん、ただ頑張るで結果が出れば良いのであるが、結果が出る以前に疲れきって辞めてしまうのがせいぜいではないかという、深刻な結果が待っていることをわたしは知っているから放ってはおけないのである。

 人のやっていることの見通しの甘さや考えのなさを指摘したり批判することはとても簡単であるが、自分が同じ立場になったとき、あなた方は自分はそうでないと言えるだけの考え方や理論を持っているだろうか。また持っていたとして、それを実践して公募やデビュー活動に活かしているだろうか。おそらくは……であろう。その根本的な意識や考えの甘さを変えない限り、結果というものはついては来ないことを今回の話でしっかりと理解をしていただきたい。そして、これから話をしていく中で、どう発想すればよいかをしっかりと納得していただければと思う次第である。


 今回はこれくらいにしましょう。皆さんにはわたしが「太陽が東から昇る」という常識を「実は西から昇る」と言っているように聞こえると思います。実際そういう話だと思います。ですが今までのやり方で成功しないのであれば、今のやり方は間違っているのだという事については、目を覚まして認めてほしいと思うのです。



☆お知らせ☆


自主企画「第一回 さいかわ葉月賞 テーマは「夏」」を開催いたしております。

今回はわたしと専任の選者四名が選考をいたします。


https://kakuyomu.jp/user_events/16818093082082662779


夏休みにもうひと伸びしたい方のご参加をお待ちしております。ただ公募に出しているだけですと、自分の何が悪いのか、他の人が何故良いのかを理解できません。わたしの自主企画でなくとも全然構いませんので、他の自主企画に参加して勉強してみることをお勧めしたく思います。

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