第20話 ちょっと休憩2
二十六、ファンタジー系の話を面白くできる超簡単な起承転結!?
本書の読者のうち、異世界/現代ファンタジー作家の方が結構多くいらっしゃる事に気がつきました。大変遅ればせながら、そういったファンタジー系あるいは文芸系統以外の作家の方々にも、身近にお役に立てるようなものを今回は書いてみようと思います。本来は「ちょっと厳つい創作論」ではありますが、休憩ということでお楽しみいただければと思います。
さて、小説だけではなく文章を書くにあたり、ほぼすべての人が「起承転結」という言葉を耳にしていると思います。批評などでも起承転結について、なっていないとか転がどうのこうのなど、作品に対する評価基準としても使われますよね。
で、わたしたちアマチュア小説家は、この「起承転結」にどう向き合っているのかを少し考えてみましょう。
そもそも「小説における起承転結」って何? ってことなのですが、
起 物語の始まり
承 物語の行動の開始、発展
転 物語の転換
結 物語の結末、まとめ
ということになるのですが、どうも実際に当てはめて使ってみると、なんだかピンと来ないのです。特に「転」ですが、どういう転が良いのか、そもそも自分自身に答えがあるようでないとは思いませんか?
よく、昔話で起承転結を解説していますが、たとえば「桃太郎」であれば、
起 (川に流れていた)大きな桃から桃太郎が生まれる
承 猿と犬と雉を仲間にして鬼退治に行く
転 鬼が島で鬼と戦う
結 鬼に勝利し、宝物を持って帰る
になると思いますが、これ、「確かにそうなんだけど……」ってなりますよね?(笑)
「話の筋」としては理解できるのですが、これが起承転結と言われても、ぶっちゃけ、自分の小説に反映できそうな気がしませんよね。
そもそも承がおかしいと思いませんか。起→承につながっていないではないですか。「なんて鬼退治に行くの?」ってわけです。原作では「強くなった桃太郎の腕試しに、悪い奴らしかいない鬼ヶ島に行ってみよう」というのが目的(読み直してびっくりしました笑)なのですが、承というは起を受け継ぐ必要はないのか、とわたしは疑問に感じるのです。
結論から言うと、この桃太郎の起承転結の例は厳密にいえば妥当ではないのではないかと考えます。これは桃太郎の「場面場面」を四分割しただけで、全体から見た起承転結とは違うのではないかと思うのです。
さて、ここからが本題なのですが、では、小説における起承転結はどうあれば良いか、というよりも、どうあると使いやすくなるか、読みやすくなるかの一例を紹介したく思います。この「テンプレ」を上手く当てはめれば、一話完結の短編から長編までちゃんとストーリー立てて書けますので、読者が「頭から最後まで読める小説」に仕上げることができます。便利なテンプレートですよ!(恩義せがましい)
今の言葉で恰好良く言うと、ノベライズ、コミカライズできる作品には、内容ではなく骨子(構成)に対して、あるお決まりのテンプレートがいくつかありまして、そのうちの簡単なひとつが「読者も一緒に参加している気になれる進行型」があります。ネーミングはわたしが勝手にしました。
というのは、
起 目的を打ち出す
承 目的に対して行動をする
転 行動して大きな壁(問題)に直面する
結 知恵や更なる行動によって問題を解決する
という「起承転結」で考えれば、読者は自然と最初から最後まで「物語」に参加しながら読んでいけるのです。
ファンタジーは素人でうまくはないですが、連載ファンタジーものの最初の部分(二、三話分)を考えてみましょう。
起 村で平和に暮らしていた主人公とその幼馴染(ヒロイン)は、ある日森の中で魔物に遭遇してしまい、幼馴染は魔物に連れ去られてしまう。悲しみ怒る主人公は幼馴染を取り返すために魔物退治を決意する。
承 一人では無謀だと両親や村の人々に諭され、主人公は仲間を集める旅に出る。ある街にて同年代の魔法使いと出会い仲間になってもらう。(余談であるが、後にヒロインと恋敵になるまでがお約束)
転 魔法使いから「魔物退治には王様の許可が必要であり、さらに謁見するには官位がある者か魔物退治に実績のある者が必要」と言われる。しばしどうすることもできずに時間が流れるが、主人公はある場所でその資格を持つ同年代ながら魔物退治の経験が豊富な女性騎士の存在を知る。
結 苦労の末なんとか女性騎士に対面した主人公は彼女を仲間にすべく腹を割って話をすると、彼女にも救いたい者がいることが判明する。その者を救うには主人公のある才能や能力が必要であり、主人公は彼女にその者を救う代わりに仲間になってほしいと頼む。彼女は利害が一致したので主人公の仲間となり、謁見の件を承諾する。
ということで、(話の面白さは置いておいて)なにやら話がするっとすすみましたよね。つまりこの「読者も一緒に参加している気になれる進行型」の起承転結を繰り返すことで、読者は飽きることなく「冒険」ができるわけです。このテンプレートがないと、ダラダラと旅をしていくうちに読者が離散してしまいかねません。
起承転結を繰り返すとともに、大きな起承転結の中に小さな起承転結を作る事で更なる冒険の深みがでます。
第一章(大きな「起」)
第1話(中くらいの「起」)
§1(小さな「起」)
§2(小さな「承」)
§3(小さな「転」)
§4(小さな「結」)
第2話(中くらいの「承」)
:
第3話(中くらいの「転」)
:
第4話(中くらいの「結」)
:
第二章(大きな「承」)
第5話(中くらいの「起」)
:
第三章(大きな「転」)
:
第四章(大きな「結」)
起 目的を打ち出す
承 目的に対して行動をする
転 行動して大きな壁(問題)に直面する
結 知恵や更なる行動によって問題を解決する
このテンプレ、商業誌であれば必ずと言ってもいいほどこうなっている作品に出会えます。作家は作品を通して読者を冒険の世界へと連れ歩かなければなりません。それには「いかに読者を飽きさせずに最後まで楽しませるか」に腐心しなければならないのです。
あるパーティーを主催することになったら、料理やお酒などの「内容の吟味」も大事ですが、まずは「パーティーそのものを盛り上げるストーリー」が必要なはずです。お察しのとおり、内容とは「作品の中身」であり、ストーリーとは「起承転結のテンプレ」のことです。この両輪があってこそ、書籍化できるクオリティーになることを知って頂ければと思います。
特に「転という大きな壁(問題)の設定」と「結に導くための知恵やアイデア」に魅力のある作品は、面白いですし何よりも売れます。例であげた話に戻れば、転の「王様への謁見問題」と結の「ある才能や能力」をどう設定するかで、売りが決まるといっても過言ではありません。
テンプレといえば、勇者や魔王、転生や悪役令嬢などがイメージされると思いますが、それは「シチュエーションのテンプレ」です。大事なのは、それらを「構成のテンプレ」に当てはめて話を進めることです。
よく「テンプレなんてw」と馬鹿にしがちですが、テンプレにきっちりハメることで(特にファンタジー系は)製品化できるのだと知っていただければ幸いです。
最後に長編ファンタジーのプロットを書く時には、「内容のプロット」「構成のプロット」「シチュエーションのプロット」「人物のプロット」の4つを書いてみることをお勧めいたします。これらについてはまた機会があれば述べたいと思います。
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