第10話 ちょっと休憩

十五、今、何をしているのでしょうか?


 本書は「朝起きたら顔を洗いなさい」というような、一見当たり前なことをくどくどと言っています。こんな創作論は他にはないのではないでしょうか。


 そもそも、わたしはあなた方に何を伝えようとしているのでしょうか。もちろん、どんな小説を書けばよいのか、どういう風に書けばよいのかなどという浅い話ではありません。わたしはあなた方に「才能の磨き方」を伝えているつもりなのです。


 プロになるには、上手な小説でも面白い小説でもその両方でもダメなのです。まして賞レースに出るのであれば、そこに「才能」が伴っていないと受け入れられないのです。選評者がプロの場合、見ているのは「作家としての才能」です。上手いとか面白いとか、そんなものがあって当たり前であって、その作家にどんな才能があるのか、その一点を見極めようとしているのです。芥川賞や直木賞などプロがプロを見る時には「才能」に対して賞を贈っているといっても過言ではありません。われわれ素人からすれば、「上手な小説」や「面白い小説」が一番になれると思いがちですが、極まった上に立てるのは、「何を見てきて生きてきたかの」の経験を書ける能力――わたしはこれを「才能」と呼んでいる――なのです。

 であれば、あなた方は一から這い上がるには「才能」を磨かなけれなりません。どんな上手で模範的な小説を書いても、「先達」には評価されません。そこに滲み出す才能に対してのみ、評価されるからです。


 わたしの細かい話に反発心を覚えるのも自由ですし、わたしの持論こそ絶対であるとは言いません。ただ、あなた方がよりよい結果を得たいのであれば、大事なのは小説を書く技術ではなく、自分の中の才能を磨き上げることです。これは努力でできることです。幸いなことに、先天的要素の少ない努力という訓練でなんとでもなる世界です。「考える」「感じる」「経験する」という能力を磨けば、のし上がれる業界ともいえるわけで、ということは、幸せなことではありませんか。

 道を切り開くということは、前には障害物しかありません。あなた方はそんな障害物に負けない考え方や気概を持たなければなりません。わたしは「才能」という基礎力を上げることによって、頑張って上手くて面白い小説をいくら書いても選ばれない現状を打破し、デビュー後も活躍・成長できるだけの思考の土台と体力を今のうちに養ってほしいと思っているのです。


 ぶっちゃけてしまえば、わたしの「方法論」など、どうでもいいのです。大事なのは、「プロとして生き続けていく」には「才能」が必要だということです。その「才能」を磨くには、どこまで戻って何をしなければいけないのか。それを探し実践することが、あなた方の商業デビューかつその後の活動のために一番大事なのですよ、と申し上げたいわけです。


 ここまで読んで、この話に納得ができるようになってから、次回以降も読んでほしいと思います。わからなければ、(やる気あるのなら)一から読み直してくれても良いですし、(面倒なら)読むのをやめてしまって結構です。ここに疑問がある限り、あなた方は同じように努力をして同じように失敗するだけです。それだけは間違いないと思ってくれることを願っております。



 今回はここまでにしましょう。休憩といいながら、あなた方がするべきものは何なのか、もう一度自分自身に問いかけてみてほしいと思い書いてみました。

 わたしはあなた方の作品が「その他大勢の作家」として括られた「消費物」として扱われないことを願っています。どうせなら、一生書ける作家を目指して頑張ってほしいのです。



☆お知らせ☆


自主企画「第一回 さいかわ卯月賞 テーマは「春」」を開催しております。わたしが選者をいたします。(参考作品としてわたしも出しています。)

https://kakuyomu.jp/user_events/16818093074716315948


「ある程度作品も出てきたし、そろそろ自分が出してやる番だな!」とお考えになっている、腕に覚えのある方はいかがでしょうか。皆さまのご参加をお待ちしております。(くれぐれもルールをキチンとお読みの上、ご参加くださいね)。

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