22. ワリブディス営業2日目

 ワリブディスでの営業2日目、今日から下級冒険者が応援で入ってくれることになっている。

 条件として『19歳までの男女』を指定しておいたけど、どんな人たち来るんだろう。

 とりあえず、お昼の仕込みをしながら待ちますか。


「主様、お店の手伝いだという下級冒険者の皆さんがおいでになりました」


「あ、うん。わかった、いま外に行くね」


 グリッド君に呼ばれ、外に出てみると、男3人、女ひとり、計4人の冒険者が待っていた。

 ただ、髪はボサボサで清潔感がなく、服もところどころ汚れていて清潔感がない。

 これじゃあ接客業は任せられないね。


「グリッド君、この人たちで間違いないの?」


「はい、間違いありません。冒険者ギルドの依頼票も持ってきています」


「じゃあ、仕方がないか。全員にシャワーを浴びてもらって。あと、服も洗濯して」


「かしこまりました」


 グリッド君はさもとうぜんとばかりに4人に指示を出し、4人をひとりずつ車内に入れてシャワールームへと案内する。

 シャワールームのそばには洗濯乾燥機も付いているため、それで服も洗ってもらうのだ。


 1時間ほどで見違えるほどきれいになった4人がいた。

 特に男性陣はちょびちょび生えていた無精ひげもきれいに剃ってもらったので清潔感が増している。

 飲食店で働くにはこうでないと。


 4人の準備が終わる頃にはクレープ販売の時間が差し迫っていたため、4人への指導はグリッド君に任せる。

 特に難しい注文を付けるわけでもないのでグリッド君任せでも大丈夫だろう。

 というか、列の整理とかはいままでもグリッド君任せだったから私は知らないんだよね。

 頼りになるよね、グリッド君は。


 クレープの販売が始まると、早速行列ができはじめていた。

 私がクレープ生地の焼き、サクラちゃんが生クリームと果物の盛り付けを分担しても列が途切れない。

 結構つらい。

 それでも、いまのところ問題が起きたという話を聞いていないから、列の整理はうまくいっているのかな?


 クレープ販売の時間が終われば、いよいよ昼食販売の時間帯だ。

 窓からチラッと覗いたところ、昨日よりもお客様が多いんだよね。

 ライスも2倍炊いているし、それにあわせてカレーも作り足す予定だけど、それでもこの列をさばききれるかどうか。

 ともかくやってみよう。


 結果、なんとか列の最後までカレーライスを販売できた。

 初日のようにお代わりをできるお客様はいなかったけど、全員に1皿ずつは提供できた。

 それでもライスはかなりきわどい量になってしまったし、夜はさらにもう一回分炊いていた方がいいかもしれない。

 それよりもまずは私たちの昼食と手伝ってくれた冒険者たちへのまかないだね。


 まかない料理は簡単に作れる物が主流なんだろうけど、ライスが半端にしか残っていないため、ライス料理はできない。

 代わりに作ったのはオーク肉の生姜焼きだ。

 これにパンも付けてまかないとして提供する。


 私とグリッド君、サクラちゃんは残っていたライスをオーク肉の細切れや野菜の細切れ、ミックスベジタブルなどで彩った具だくさんチャーハンにした。

 ライスは少なめだけど、その他の食材が豊富でなかなかボリュームがある。

 ライスが多めに残っているときのまかないはこれにしよう。


 あとは冒険者たちの持ってきた依頼票にサインをして依頼完了とするだけだ。

 こちらの依頼は依頼者の私がしなくちゃいけないけど、特記事項などがある場合は私じゃなくグリッド君に任せることにした。

 もっともグリッド君はなにも言わなかったが。


「特別問題があるわけではありませんでしたからね。特筆して優れていたわけでもありませんが」


 とは、グリッド君の弁である。

 結構辛口な評価だなぁ。


 さて、ここから夕食の仕込みを始め、午後のクレープ販売へと移っていく。

 午後のクレープ販売も忙しかった。

 これはひとりだけで列をさばいているグリッド君が大変かもしれない。

 午後の冒険者は夕食前に来てもらうようにしていたけど間違いだったかな。

 明日からはお昼と夜に分けるんじゃなくて一日の依頼にしておこう。


 午後のクレープ販売が終わった頃に夜の営業を手伝ってくれる冒険者たちがやってきた。

 でも、全員、昼間に来た冒険者たちと一緒だ。


 詳しく話を聞くと、依頼が掲示板に出されるタイミングの関係上、朝は争奪戦になっても昼間は余裕を持って受けられたのだという。

 ふむ、やっぱり一日依頼にした方が良さそうだ。


 夜の営業は昼の営業でコツをつかんでいたのか、スムーズに列を作ってくれていたらしい。

 私はコンロンの中でカレーライスを提供するだけで精一杯だったけど、グリッド君が言うのだからそうなんだろう。

 夜のまかないは具だくさんチャーハンを用意できたのでそれを食べさせてあげた。

 私たちも具だくさんチャーハンである。


 今回の報酬にはグリッド君の提案で少しだけおまけを付けることにした。

 おまけと言っても元が銅貨5枚なので銅貨1枚増えるだけなのだが。

 でも、彼らは鉄の冒険者だというし、銅貨1枚の増額でもかなり嬉しいだろう。

 私だったらすごく喜んだ。


 これで今日の営業はおしまい。

 明日からも人気だと……いや、ほどほどに人気だといいなぁ。

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