第四章 コンロン、ワリブディスで営業開始
19. ワリブディス到着初日は観光と食材探し
盗賊たちのアジトから捕まっていた女性と財宝を積んだ馬車を引き連れ、ワリブディスまでたどり着いた。
まずは衛兵たちに事情を話し、女性たちを引き取ってもらうことからスタートだ。
ちなみに、対応は申し訳ないけどリコイルちゃんに一任している。
やっぱり、1商人でしかない私と金の冒険者であるリコイルちゃんとでは発言力が違うからね。
「……話はわかった。最近、ワリブディス近郊で盗賊団が住み着いていて困っていたが、そんな場所にいたとはな」
「私も驚いた。だけど、いたのは事実」
「疑っちゃいないよ。女性たちの身柄も我々で保護する。しかし、そうなると、盗賊のアジトも調べてみなくちゃいけないな」
「……付いていかなくちゃだめ?」
「そうしてもらいたい。わかりやすい道じゃなかったんだろう? アジトが再利用されないよう、徹底的に破壊する必要もあるからな」
その言葉にリコイルちゃんはわかりやすく落ち込んでいる。
私たちの中で誰が適任かといわれれば、やっぱりリコイルちゃんになってしまうからね。
かわいそうだけど仕方がない。
「ミリア、話は聞いてた?」
「うん。悪いけど、リコイルちゃん、案内をお願いね」
「私が戻ってくるまで別の街に行かないよね?」
「あー、そこか」
私としては、また短期間の営業で別の街に移るつもりだったんだけど、リコイルちゃんが何日くらいで帰ってくるかわからないからなぁ。
仕方がない、営業可能日数の最大までこの街に留まるか。
それを聞いたリコイルちゃんは顔を明るくして、衛兵たちを急かし始めた。
ただ、衛兵側も準備が必要で明日の出発になるらしい。
私たちも今日は準備に充てるつもりだからちょうどいいだろう。
街に入ったらまずはリコイルちゃんの依頼の精算だ。
日数による依頼料支払いなので、早めに依頼を終わらせないとそれだけお金がかかってしまう。
あと、盗賊のアジトから持ち帰った財宝も冒険者ギルドで換金するそうだ。
商業ギルドでも換金できるみたいだけど、盗賊のアジトにあったということは基本的に盗品であり所有権が曖昧になる。
そこも加味して買い取ってくれる冒険者ギルドの方が安心というわけだね。
面倒なことにはなりたくないので、大人しく冒険者ギルドのお世話になろう。
冒険者ギルドでリコイルちゃんへの依頼を精算し終わったら財宝の換金なんだけど、ちょっと困ったことが出てきた。
財宝の量が多すぎてすぐには鑑定できないということと、明らかに冒険者ギルドに手配がかかっている品物があるということだ。
どうすればいいんだろう?
「基本的に冒険者ギルドへ捜索依頼が出ていても、盗賊退治の財宝として持ち帰った場合、所有権は持ち帰った方にあります」
冒険者ギルドの職員はこういうときにどうなるのかを説明してくれた。
前提としてこれらの財宝はすべて私の持ち物として扱われるらしい。
その上で冒険者ギルドは財宝の価値を鑑定して買い取り金額を決め、私にその額で買い取るかを尋ねてくる。
私がその額で納得したなら財宝は冒険者ギルドの所有物となり、探している元の所有者にも見つかったことの報告が入るみたい。
ただ、ここから冒険者ギルドは私に支払った額に手数料などを上乗せした金額を元の所有者に請求するようだ。
それで元の所有者が納得して買い取れば、盗まれていた財宝は元の所有者の手に戻り、納得しなければ冒険者ギルドの持ち物となり、やがてオークションなどで販売されるとのこと。
世知辛い世の中だ。
どちらにしても、私のことが冒険者ギルドからばれることはないし、私が手放してしまった場合、私が元の所有者に返却することもできないので一緒のことだって。
それなら冒険者ギルドに一任しよう。
先ほども述べたが鑑定に時間がかかるため番号札を預かり、数日後鑑定結果を聞きに来ることにした。
さて、ここからはワリブディス観光である!
リコイルちゃんも初めての街らしいからどんな物があるのか非常に楽しみだ。
冒険者ギルドでなにか面白い物がないか聞いたところ、港の方に展望台があるらしい。
展望台からは港の様子が一望できるので、外国から来ている船も見ることができるそうだ。
普通に港に入ろうとしても衛兵に止められるらしいから、そこから見るのが普通らしい。
早速行ってみよう!
「ここが展望台かぁ。本当にたくさんの船が見える!」
「マスター! あっちにもたくさんの船があるよ!」
「船の形状が違いますね。別の国の船でしょうか?」
「あちらの船はこの国の船。外国へ向かうための準備をしている」
4人でいろいろわいわい見物する。
ほかにもたくさんの人がいて本当に人気のある場所らしい。
衛兵も見張りに付いているから、スリなども活動しにくいみたいだしね。
船を見終わったら、今度は市場に行ってどんな物が売っているのか確認だ。
もう店じまいしているところは鮮魚店らしい。
この街でも魚が食べられているようだ。
ただ、私の店で魚を出すのはちょっとなぁ。
調理時間と仕込みの手間の問題でお預けである。
もっと簡単に調理できるようになればいいんだけど。
まあ、しばらくはオーク肉のさっぱり焼きと生姜焼き、カレーライスでやっていく予定だけど。
ほかのお店でも見慣れない食材がたくさん並んでいた。
別の国から輸入しているという野菜や果物などだ。
鮮度もなかなかよさそうだし、いくつか買って帰ることにする。
新しい料理の種になるかもしれないしね。
市場をぐるっと回ったら、本日最後の目的地、料理ギルドだ。
ここで最長何日間の営業許可をもらえるか聞いてみよう。
「最長の短期経営許可証ですか? それでしたら1カ月になります」
1カ月、つまり30日か。
それならリコイルちゃんも問題なく戻ってこれるね。
今日は送り出しも兼ねてちょっと豪華な晩ご飯にしようかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます