18. 盗賊のアジトを見つけてしまった
移動5日目、1日ほど予定がずれているため、ワリブディス到着は明日になりそう。
そう考えながらなにもない道を進んでいると、丘の上に出た。
さすがに丘を迂回しなくちゃいけないかなと考えハンドルを切ったんだけど、その前にリコイルちゃんが変なものを見つけたと言う。
変なものってなんだろう?
『ミリア、丘の下にある森だが、内部にいくつか建物が建てられている』
「なるほど。それがリコイルちゃんの言っていた『変なもの』か」
コンロンに調べてもらうと、森の中に建物が建っているそうだ。
それだけなら、森で狩りをする人たちの休憩所とも考えられたが、どうも様子がおかしいらしい。
数人の女性が小屋の中に裸で閉じ込められているらしいのだ。
ん、これって?
「おそらく、盗賊団のアジト」
「だよね」
うーむ、ここに来て盗賊団のアジトと遭遇してしまったか。
コンロンの計算によると、ここから街道までは約半日、街道を通ってワリブディスまでは馬車で2日ほどだそうだ。
相当面倒だな。
「……盗賊を倒す?」
「倒せるの、リコイルちゃん?」
「あの程度の規模なら余裕。ただ、捕まっている人たちを連れ帰る方法がない」
そうなんだよね。
コンロンは4人乗りで、キッチンスペースやベッドスペースに詰めてもらっても、6人追加は厳しいのだ。
かといって見捨てるのも後味が悪いしなぁ。
「……待って、街道側から馬車が2台こちらに来てる」
「え? 本当だ。盗賊団の残りかな?」
「あの馬車を奪えば、捕まっている人たちを街まで連れ帰ることができるね」
「そうだね。お願いできる。リコイルちゃん?」
「任せて」
こういうときのリコイルちゃんは本当に頼もしいな。
あと、森の中にある盗賊のアジトの見張りとしてグリッド君が立候補してくれた。
グリッド君も戦闘力がかなり高いからね。
リコイルちゃんは心配していたけど、なんとかなると思うんだ。
ともかく、このメンバーで行動を開始してもらおう!
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□■□■リコイル
たまたま盗賊のアジトを見つけた結果、盗賊の退治まで引き受けることになってしまった。
私から言い出したことなので問題はないが、こんな近くに盗賊団が根城を作っているなんて危機感が足りないのかもしれない。
私が殲滅するから一緒だけど。
私は丘の上から森の中へと飛び降り、森を突っ切って馬車の行く手を遮る位置に出た。
どうにも不意打ちは得意じゃない。
「なんだ、お前は?」
盗賊の一味と思われる男が声をかけてきた。
森の中からいきなり武装した女が出てくればいぶかしむだろう。
「見つけたのはたまたまだけど、盗賊の退治をすることになった。大人しく死んで」
「な!? ガキが、調子づきやがって!」
まあ、私は確かにダークエルフ的にはまだまだ子供だ。
でも、60年以上生きているんだから、人間にガキ呼ばわりされる覚えはない。
……ミリアから子供だと思われていることは、得が多いから黙っておく。
「ふっ!」
私は腰に差してあった魔道銃を抜き、素早く馭者席に乗っていた男を始末する。
それと同時に、馬にも魔道銃の弾を当て気絶させた。
私の魔道銃はいろいろな弾を発射できるように切り替えができる優れものだ。
これを作ってもらうために、結構お金がかかった。
普段稼いでいる額を考えると、少し出費が多かったな、くらいだけど。
「なんだなんだ。いきなり止まって、なにをしてやがる」
いまいる馬車の後ろからも男が出てきた。
後ろの馬車の馭者だろうか?
「ん? 死んでる? お前がやったのか!?」
「そう。お前も死ね」
「お、おい、待ってくれ!」
「待たない。盗賊は皆殺し」
私は魔道銃の引き金を引き、男を始末した。
その騒ぎを聞きつけ、各馬車の荷台から武装した男女が降りてきてくれたけど、全員盗賊だと名乗ってくれたのでありがたい。
倒すのに盗賊かどうか考える必要がなかったからね。
それじゃあ、積み荷がなんなのか確認してグリッドと合流しよう。
ひとりじゃ危ないだろうし、私が守ってあげないと。
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□■□■グリッド
「どうやら、リコイル様は終わったようですね」
あちらの騒ぎは収まったようです。
そうなると、盗賊のアジト側をどう制圧するかですが、人質となっているであろう女性たちを先に助けないことには話が進みません。
リコイル様が動きやすいように、こちらも動いておきましょうか。
コンロン様からいただいた情報を元に、女性たちが捕まっている場所を確認すると、小さな小屋になっていました。
見張りに付いているのは男女3人、同時に倒すのも難しくはないでしょう。
問題は、あの場所に付いている鍵と、燃えやすそうな小屋から女性たちを安全に逃がす方法です。
仕方がない、全員を始末してから鍵を持っていないか調べますか。
「ふぁぁぁ。逃げ出せない女どもの見張りなんて退屈だね」
「そう言うなって。あれも大事な商品なんだからよ」
「商品ねぇ。だから味見をしないのかい」
「今回は上口の客だからな。味見をしちまうと値段がガクッと下がっちまう。お楽しみといきたいが、グッと堪えているんだよ」
「まったく、男どもは……」
ふむ、女性たちはまだきれいな体のままですか。
それはありがたいですね。
これ以上の情報も引き出せそうにないですし、一気に倒してしまいましょう。
「それにしても、追加の獲物を持ってくるはずの馬車が遅いな」
「どっかで道草でも食ってるんじゃないのかい? それとも、味見を……」
ふたりの注意が逸れている間に、僕の特製魔道銃でふたりの眉間を撃ち抜きました。
声を発さず倒れたのはいい感じですね。
倒れた物音に気がつき、もうひとりの見張りが寄ってきましたが、こいつも眉間をズドンです。
これで制圧完了ですね。
「なんだ、あの小娘!? ひとりのくせにめちゃくちゃ強いぞ!」
「クソが! どうしてこのアジトの場所が割れた!」
「そんなことより奴の動きを止めろ! そうだ、人質を使え!」
おや、こちらに向かってくる連中がいますか。
そちらは僕が始末しましょうかね。
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□■□■ミリア
なんて言うか、争いが終わったあとのアジトは死屍累々と死体が転がっていた。
結構大きな盗賊団だったみたいで、ひとりひとりの装備も質がよく、ひょっとするとほかの国の手が加わってる連中かもしれないらしい。
それをほとんどひとりで倒したリコイルちゃんもすごいし、サポートしたグリッド君もすごいなぁ。
捕まっていた女の人たちは、とりあえず毛布を与えて体を隠してもらい、盗賊団が持ってきた馬車に乗ってもらった。
この馬車の中にも女性が数名囚われており、助けるのが遅かったら同じ運命をたどっていたのだろう。
ちなみに、グリッド君の話では、この女性たちの売り先はもう決まっていたみたいで、『上口の客』だったらしい。
私たちにはもう関係がないけど、注意する方がいいとリコイルちゃんとグリッド君は言っていた。
さて、女性たちを連れ帰らなくちゃいけないんだけど、同時に盗賊のアジトにあるお宝も回収して持ち帰ることになった。
盗賊団を討伐した者がそのお宝を持ち帰って自分の物とするのは合法らしい。
臨時収入と思って持ち帰るつもりだったんだけど、金貨や銀貨などのほかにも、絵画や宝剣などかさばる物がたくさんあって困ってしまう。
そのため、女性たちを運ぶ馬車が1台、お宝を運ぶ馬車が1台という構成になった。
馭者はリコイルちゃんとグリッド君ができるそうなのでお任せする。
昼間は盗賊団のそばにいたくないだろうと判断し、移動してから食事にした。
暖かいスープと白パンを用意したけど、それだけで泣き出す人もいて困ってしまう。
本当に助け出せてよかった。
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