17. 移動中の限定メニュー
4日目もなんとか移動できたけど、移動距離はあまり稼げなかった。
やっぱり、整備されている街道を走っているわけじゃないから、雨が降ると移動に時間がかかるようになってしまうんだよね。
こればかりは仕方がないか。
そんな4日目の昼メニューはロールキャベツである。
これは私の魔力上昇を兼ねたメニューなんだけど、リコイルちゃんにも好評なんだよね。
ただ、リコイルちゃんからは「これもコンロンのメニューに加えないの?」と散々聞かれているんだけど。
ちょっといまは無理があるかな。
「ロールキャベツってあまり数が仕込めないの。1鍋あたり20個から30個が限界で、1皿2個とすると10皿から15皿しか出せないのよ。それだけのために、あまり多くないコンロを占有するのもね」
コンロンの火口、つまりコンロは現在のところ3つだけだ。
機能強化で増やせるかもしれないし、鉄板の上に置いておけば、少しは容量を増やせるだろうけど、今度は私の手が足りなくなる。
メニューは増やせばいいというわけではないのだ。
実際、ワリブディスでのクレープ販売は、昼メニューの前と昼メニューが終わったあと、夕食の仕込み時間の間に少しだけ販売するということに決めているし。
カレー2種類とオーク肉のさっぱり焼きと生姜焼きで、わりとオペレーションは限界である。
カレーの盛り付けやさっぱり焼きと生姜焼きの付け合わせのキャベツの用意はサクラちゃんも手伝ってくれているんだけどね。
どうがんばっても料理人の数が足りないのがコンロンの状況である。
まあ、旅の間だけのメニューという物があってもいいと思うのよね。
それだけ、特別感も出るし。
そう話したら、リコイルちゃんも黙り込んだ。
そして、顔を赤くしながら、むしゃむしゃとロールキャベツを食べている。
旅の間だけの特別メニューっていうのが効いたのかな?
「ロールキャベツとライス、おかわり」
「うん。ちょっと待っててね」
リコイルちゃんはここ数日で完全にライス派になってしまった。
口に入れたときの甘みと腹持ちの良さが気に入ったらしい。
いろいろなメニューに意外とあうというのも気に入っている一因かもしれない。
「ロールキャベツ、旅の間しか食べられないのか。残念」
「うーん、お店のメニューにはどうしても出せないんだよね。ごめんね?」
「ううん。私がわがままを言っているだけ。ほかには旅の間だけの料理ってない?」
「旅の間だけの料理か……ちょっと調べて晩ご飯に出すね」
「待ってる!」
リコイルちゃんってば目をキラキラさせてかわいい。
……そういえば、リコイルちゃんって実年齢は何歳なんだろう?
ダークエルフということは人間と年齢が異なるはずなんだけど。
とりあえず、それは横に置いておいてレシピ集を見てみる。
先日、ライス料理を追加したから内容はさらに充実したが、まだまだ増やせる項目はあるのだ。
でも、項目を増やしちゃうと目移りして作れる自信がない。
だから、いまある範囲で作れそうなものをピックアップして作ろう。
いま作れる範囲で面白そうな物は……あ、これなんていいかも!
作るのにそれなりに時間がかかるけど、手間暇自体は少なくてすむ料理!
肉料理だからライスも進みそう!
ええと、まずは合い挽き肉を……食材販売機で買うか。
オーク肉しかないから、合い挽き肉を作ると書いてあるけど一種類じゃだめだし。
というわけで、合い挽き肉を手に入れたら……あ、最初から使うんじゃないのか。
タマネギ……これも食材販売機から買おう、これをみじん切りにしてフライパンで炒めて茶色くなるまでがんばる。
タマネギを冷めるのを待つ間に、挽肉に塩胡椒を適量振りかけてこねる。
胡椒まで使うなんて贅沢な料理だね。
挽肉に粘り気が出るまでこねたら、冷めたタマネギと牛乳、卵、パン粉を加えてさらにこねる。
こね終わったら手のひらの上で楕円形に成形し、両手の間でパンパン行き来させてから真ん中をへこませてタネがひとつ完成。
このときパンパンうまくできないと空気が中に入っていて形が崩れるとか。
タネを作り終わったら、鍋に油を流し込み、強火で表面をこんがりと焼き上げる。
表面が焼けたらワインと水を投入して蓋を閉め、蒸し焼きにする。
そのまま水分を飛ばしていき、水分がなくなったらタネに串を刺してみて透明の汁が出てきたら完成!
あとは、フライパンに残った汁にいろいろと調味料を混ぜ合わせてソースも作れば、ハンバーグのできあがり!
あ、リコイルちゃんがこちらを覗き込んでる。
いい匂いが充満しているもんね。
晩ご飯までもう少しだからちょっと待っててね。
付け合わせはこのトマトという赤い野菜にしよう。
これで彩りも出てきたね。
茶色と赤しかないけど。
ついでだからキャベツと似た小さな葉物野菜でも添えてみようかな。
よし、これで本当に完成だ。
あとはライスと一緒に配膳だね。
「ミリア、できた?」
リコイルちゃんは食べたくてうずうずしている。
待ちきれないといった表情とも相まって、まるで見た目同様の少女のようだ。
そんなリコイルちゃんの前にハンバーグとライスを配膳する。
「これが、新しい料理……!」
「『ハンバーグ』っていう料理だよ。作ってみたけど、タネを事前に作っておかないと大量注文には対応できないかな。あと、貴重な調味料もたくさん使うから、その分の値段も考慮しないといけない」
「おお。では早速……」
「グリッド君とサクラちゃんが揃うまで待ってね」
「うん……」
お預けを食らってちょっとかわいそうかな。
リコイルちゃんっていままでひとりで生きてきたわけだし、こういうところが鈍いのかも。
そこのマナーも覚えてもらわなくちゃね。
なお、ハンバーグを食べ始めたリコイルちゃんはものすごい勢いで食べ始め、すぐにお皿を空にしてしまった。
結局、4皿も食べて満足そうにしてたから、かなり気に入ってくれたかな?
料理人冥利に尽きるね。
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