16. コンロンのロゴマーク

 3日目も移動は順調だったが午後から小雨がぱらつきだし、夜には本降りを向かえた。

 明日は道がぬかるんで走りにくいかもしれないね。

 そうなると、一日お休みということも考えられるけど、どうしようか?


「ミリア、コンロンって看板ないの?」


「看板?」


「お店のロゴマーク、みたいな物」


 リコイルちゃんからいきなり話しかけられたと思ったら、お店のロゴマークの話だった。

 でも、確かにお店のロゴマークというのも、いままではなかったな。

 この先のことを考えると、コンロンの存在を印象づけるためにロゴマークを付けるのもありか。


 でも、ロゴマークってどういうのがいいんだろう?

 その不安を払拭するように、リコイルちゃんが力強く宣言した。


「みんなで考えれば、きっといい案が思いつく。それがいい」


 結局、グリッド君とサクラちゃんも巻き込んでのロゴマーク検討会になるわけだ。

 それはそれでいいかもしれないね。


 ロゴマーク検討会ということで、ふたりを呼んできてすぐさまどんな物がいいか話し合いを始める。

 コンロンの初期装備だった『ホワイトボード』という板が大活躍である。

 ペンで書いてもすぐに消せるのは強い。


 ただし、案は全然まとまらない。


 リコイルちゃんやグリッド君はすぐに剣や斧を書き足したがるし、サクラちゃんはお花を追加しようとする。

 これではまとまるものもまとまらない。

 さて、どうするべきか。


『困っているようだな、ミリア』


「困ってるね、コンロン。なにかいい手はない?」


『いい手、というか、ベースとなるイメージを与えることならできる』


「うそっ!?」


 それ、いま一番ほしかったやつ!

 コンロンにお願いして描いてもらうと、蛇みたいなものに足が生えて頭に角が生えた生物を書いてくれた。

 これって一体?


『それが私のイメージである『コンロン』だ。龍と呼ばれる細長い胴を持つドラゴンだな』


「これがドラゴン……」


 説明されるまでわからないかな。

 でも、これは見たことがないから、これをベースに考えていけば話は早いかも。


 私は早速、このドラゴンにコック服を着せ、スプーンとフォークを握らせた。

 かっこよさがどこかに行ってしまったな。

 でも、料理店っぽさは出た。


『ふむ、悪くない』


「でしょ! コンロンもそう思うよね!」


『だが、これだけでは寂しいな。なにか描き足さねば』


 描き足す……なにを描き足そう。

 悩んでいるとサクラちゃんが早速動いた。

 周囲に花の絵を散りばめたのだ。

 なるほど、これはこれで。


 サクラちゃんが描き終わると、グリッド君も描き始める。

 グリッド君は鍋やフライパンを描き足してくれた。


 これくらいでいいんじゃないかな!

 コンロンに確認しても『いい出来だ』と褒めてくれたし、これでいこう!


 あとはこれをベースにコンロンへと絵を描くだけだったんだけど、それはすべてコンロンがやってくれるらしい。

 ついでにお皿とかにもこのロゴマークを描いてくれるそうだ。

 コンロンってば優秀!


 翌日、雨が上がっていたのでコンロンの様子を見に出てみると、車体の側面にでかでかとロゴマークが描かれていた。

 それも色つきだ。

 色はコンロンが考えてくれたらしい。


 背面や前面にも描いてあり宣伝効果は抜群だろう。

 これで、集客アップが見込めるかな?


 ちなみに、ロゴマークの提案を出しながらなにもできなかったリコイルちゃんはいじけていた。

 クレープをいくつか渡すと機嫌が直ったようだけど、うん、まあ、仕方がないかな?

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