5. 商業都市マインドキナ
それから数日間かけてコンロンが作製してくれた地図は山や川、道、林や森まで網羅した素晴らしい物だった。
これがあれば迷わずに済むかも!
とりあえずの目的地は……ここかな。
いまいる場所から一番近い街!
ここに決めた!
「コンロン、この街の情報とかはさすがにないよね?」
『街の名前程度でよければわかるぞ。街の名前は『マインドキナ』だった』
はぇー、コンロンってばそんなことまで調べられるんだ。
もうちょっと詳しく話を聞くと、街には活気があり露店なんかも盛んに出ているそうだ。
ただ、その一方で路地裏に住み着いているような人も少なくなく、明らかにヤバそうなお店もたくさんあるとか。
コンロンいわく、表と裏のはっきりした街、だそうだ。
あんまり長居はしたくないなぁ。
到着時間を朝一番として開門の列に並び開門と同時に入場、当初の目的であるこの国のお金を入手したらさっさとこの街からおさらばする、でいいだろう。
街でのんびりする意味があまりないんだよね。
きれいな服は毎日着れるし、体だって毎日洗えるし、お金さえあれば毎日美味しいご飯も作れるし。
お金稼ぎは重要だけど、もっと安全そうな場所でやろう。
方針を決め、コンロンを走らせること2日、マインドキナにたどり着いた。
想定通り、朝から門に並んだのだが、陽が昇ってもまだ入場できないでいる。
わかりやすく言うと、私がシラカバ連邦の冒険者で、国境も越えずいきなりこの街に現れたためである。
うん、当然だった。
「はあ、それで、お嬢ちゃんはテレポータートラップに引っかかってどこかのダンジョンに飛ばされたと」
「はい。潜った場所はシラカバ連邦北部の岩場にある古代遺跡なんですけど、転送された先がどこにあるのかはちょっと……」
「ずいぶんと遠くに飛ばされたなぁ。誰の手も入っていないような遺跡だったのか?」
「私が調べた限りだと先客はいないようでしたね。最初に入った屋敷でテレポータートラップを踏んだので、入り口付近しかわかりませんが」
「なるほど。それで、その奥にあった魔道車を拾い脱出してきたと」
「そんな感じです」
コンロンが普通の『魔道車』であること以外、嘘は言っていない。
これでどうだ!
「わかった。嬢ちゃんの入街を許す」
「本当ですか!」
「シラカバ連邦がこんな街まで間者を送り込むなんて思えないし、間者を送り込むにしてももっとましな嘘を考えるだろうからな。入街料を払ったら通ってもいいぞ」
結局、話は信じてもらえなかったらしい。
ともかく、街に入る許可は出たんだし入ることにしよう。
ただ、入街料が高かった。
コンロンがシラカバ連邦銀貨3枚、私がシラカバ連邦銀貨1枚、グリッド君とサクラちゃんがふたりでシラカバ連邦銅貨8枚だ。
シラカバ連邦の通貨の価値が低いって言われたけど、ぼったくりすぎじゃないかな!
まあ、この国のどこかのギルドに所属すれば安くなると聞いたし、どこかに所属してから移動すればいいんだけど。
でも、どこのギルドに所属しよう?
冒険者ギルドは見習い期間があるから移動の妨げになるし。
商業ギルドかな?
「よし、とりあえず商業ギルドに行ってみよう」
『なにが『よし』なのか、具体的に説明しろ』
「ああ、うん。私たちの手持ちにヴァラスダラス大銀貨があるじゃない? あれを商業ギルドで何枚か売るの。それを元手に商業ギルドでギルド員登録をしようと思って」
『そうか。では、売るヴァラスダラス大銀貨は1枚だけにしろ』
「1枚だけ? 3枚くらい売ってもいいんじゃない?」
『この街の雰囲気があまりよくない。下手に目立つのは避けるべきだろう』
コンロンがそう言うなら従おう。
私もさっきから視線を感じているしね。
コンロンが珍しい魔導車だからというのもあるのかな、と考えていたけどそれだけではないらしい。
案内所で商業ギルドまでの道を聞き、丁度お昼頃になってようやく商業ギルドにたどり着いた。
商業ギルドもお昼休みに入る時間だし、これは先になにか食べないとなぁ。
今日のお昼は朝から煮込んでおいたロールキャベツである。
食材販売機から購入した合い挽き肉などをこねて種を作り、キャベツの葉でまいて煮込む料理だ。
わりと手軽に作れて美味しいので、昨日に引き続き今日もこれを作ってみた。
今日はケチャップ味である。
さて、どんな味がするか?
「んー! 甘酸っぱいソースの中から肉汁があふれ出してきてたまんない!」
今日の料理も大成功だった。
レシピ通りに作っているのだから失敗することはまれなんだろうけど、それでも成功を積み重ねることは実績となる。
実績が積み重なれば自信となるのだ!
さて、食事も済んだし商業ギルドで順番待ちをすることにしよう。
いくらでこの銀貨は売れるかな?
高いといいんだけどなぁ。
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