4. 地上へ

 朝食を食べてわかったこと、鶏肉は素早さが上がる。

 野菜の方はいくつか混ぜて使ってしまったのでよくわからないけど、魔力と器用さが上がった。


 私が調べられる能力の種類は全部で5種類だ。

『筋力』、『魔力』、『器用さ』、『素早さ』、『運』である。

 運以外は大体その名前の通りなんだけど、運だけはよくわからない。

 私は平均的なところなんだけど、なにが起こるのかわからないのだ。

 高くて困ることはないだろうけどなんなのかわからない、そんな能力なんだよね。


 とりあえず、鶏肉で素早さが上がることをメモしておき、後片付けをしたら朝食は終了。

 次はこの地下からの脱出を目指す番だ。


 地下から出るにはコンロンに乗って行けばいいらしい。

 コンロンも魔導車なので人や物を乗せて動くことができる。

 運転方法も教えてもらい、しっかり練習もした。

 まあ、なんとかなるだろう。


「ねえ、コンロン。この地下を抜けるとどこに出るの?」


『いまの地名はわからない。かつてはポーラストという街があった場所に出る』


 ポーラストか。

 ……あれ、ポーラストって『ポーラスト平原』?

 ここのところをコンロンに聞いてもわからないと言うし、一度外に出て確かめるしかなさそうだ。

 よし、気合いも入ったし、いよいよ地上に向けて出発!


 地上に向けての道は緩やかな上り坂をまっすぐに進んでいく道だった。

 なるほど、国を超えてポーラスト平原に出るわけだ。


 私がコンロンを見つけた遺跡はシラカバ連邦という国だ。

 私の出身国でもあるんだけど、のんびりとした国風である反面、少々財政的に不安定だったりする。

 麦が栽培できる地方が少ないせいだと言われているが、何十年も続いているのだし、もう少し国が豊かになるようなことをしてくれてもいいんじゃないかなと思わなくもない。


 コンロンが言っていた『ポーラスト』という街があった場所が『ポーラスト平原』なら、私たちが出る国はレヴォルド王国になる。

 こちらの国はわりと豊かで暮らしやすいと聞いている。

 内情まではわからないけれど、まあ、新しい旅路を始めるならば悪くはないだろう。


 上り坂は本当に長い間続き、お腹が減ってきた頃、ようやく終点だろう扉の前にたどり着いた。

 コンロンが余裕で通れるような大きさのある両開きの扉だ。

 ここから外に出られるのだろう。


『さて、準備はいいな?』


「もちろん。早く地上に出よう!」


『わかった。扉よ、開け!』


 コンロンの声で扉が開き始める。

 開いていく扉の向こうから、陽の光が差し込んできてちょっとまぶしい。

 扉が開ききったあと、扉の向こう側を見るとやっぱり草地が広がっていた。

 やっぱり、『ポーラスト平原』なのだろうか?


 私がコンロンを運転して地上に出ると、扉が閉まり地下への道がわからなくなった。

 一方通行なのかはわからないけど、あの地下に戻ってもどうにもならないからよしとしよう。

 それよりもご飯だ。


「今度はなにを食べてみようかな。……豚肉? 豚肉もあるんだ!」


 私の暮らしていた街じゃ豚肉なんて高級品だったんだけどな。

 豚肉もいろいろな名前に分かれて売られているけど、どれにしよう?


「悩んだときは料理レシピを見てと。……ふむ、『豚肉の生姜焼き』か。面白そうだし作ってみよう!」


 生姜焼きに適した豚肉は『ロース肉』だね。

 あと、付け合わせの『キャベツ』って野菜と『生姜焼きのタレ』というのも買ってっと。


 料理するのは簡単だった。

 そんなに難しい工程じゃなかったし、『生姜焼きのタレ』が肉に絡めて焼くだけなので本当に楽だったのだ。

 味もすごく美味しいし、シャキシャキしたキャベツもたまらない。

 これは癖になりそう!


 ちなみに豚ロースで上がった能力は筋力、キャベツで上がった能力は魔力だ。

 コンロンを動かすためにも魔力は増やさなくちゃいけないし、キャベツは毎日でも食べなくちゃいけないかもしれない。

 でも、ほかの野菜で上がる能力も確認しないといけないし、やることが多そう!


『食事は終わったか、ミリア』


「うん。コンロン、どっちに行く?」


『それなのだが、数日ここで待機してもらっても構わないか?』


「え、なんで?」


『周囲を調べるために観測ドローンを飛ばしたい。3日もあれば我の移動速度で数日分のデータがたまる。近くの道路や街なども調べることができて便利だぞ?』


 おお、なにその便利機能!

 それなら数日ここで過ごすのも悪くないかも。

 幸い、食糧に困ることはないからね。

 じゃあ、調べてもらいましょう!

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