3. コンロンの料理の秘密

 昨日は満足するまで食べた。

 食材がたくさんあったので、バラエティに富んだ肉野菜炒めができたのだ。

 それに見たこともない調味料があってそれも最高だった。

 コンロンの料理最高!


 そして、私は起きてすぐコンロンから『不衛生なのでシャワーを浴びろ』と注意され、ベッドルームの奥にあったシャワールームで体を洗っている。

 サクラはこのシャワールームの使い方を知っていてハンドルをひねるだけでお湯が出ることや体を洗う液体石けんのことを教えてくれた。

 石けんが液体なんだよ!

 これだけでものすごく高そう!


 ともかく、これで体中を丁寧に洗いシャワールームを出るとふかふかのタオルと見慣れない服があった。

 で、私の服がない。

 これに着替えろ、ってことなんだろうか。


 とりあえず、体を拭き、服を着る……つもりだったんだけど、着方がわからない。

 この薄い三角状の物はなんだろう?

 それに、この服も結構複雑な作りになっている。

 どうすればいい?


「マスター、まだあがらないんですか?」


 あ、サクラちゃんがやってきた!

 ちょうどいいのでサクラちゃんにこの服の着方を教えてもらおう!


「まず、三角形のそれは下着です。広いところから足を通してはいてください」


 なるほど、ドロワーズの代わりか。

 はいてみたけど、体のラインがぴっちりと出てちょっと恥ずかしい。

 これを着るしかないみたいだから着るけど。


 それから胸につける下着もあった。

 発達している都会では上流階級の女性が胸にも下着を着けていると聞いたことがあるけどこれがそうなんだろうか。

 疑問は膨らむばかりだ。


 さらに、複雑になっている服についても教えてくれた。

 これは『コックコート』といい、料理人が着る服のようだ。

 袖が長く前の部分で布が二重になっているのが特徴である。

 ひとつひとつボタンを留めていくけど、いざというときは思いっきり服を引っ張ると全部外れる構造になっているみたい。

 料理をしているときに失敗して服が燃えたときの対策らしいね。


 服も着替え終わったのでベッドルームの方に出てみると、グリッド君も着替えが終わっていたようだ。

 グリッド君の服装は白いシャツに紺色のズボン、黒いベストに紺色のネクタイである。


 ちなみに、サクラちゃんの服装も変わっている。

 薄いピンク色のシャツにベージュのスカート、赤いベストに白いエプロン姿だ。

 どちらも可愛らしい。


「主様、着替えが終わりましたか」


「うん。待たせちゃってごめんね、グリッド君」


「いえ。コンロン様がお待ちです。早く行きましょう」


 私たちは階段を降り、外に出てコンロンと向き合う。

 まあ、向き合うといっても魔導車の正面に来るだけなんだけど。


『着替えが終わったか。なかなか似合っているぞ、ミリア』


「ありがとう、コンロン。それで、これからどうするの?」


『そうだな。このまま地下にいても仕方がない。とりあえず地上に出ることにしよう。地上に向かう道はあちらだ』


 コンロンが光で照らした先を見ると、壁がなくなっている。

 どうやらあそこから出られるらしい。

 コンロンは私の魔力で動くらしいし、少々不安だけど動力は問題ないだろう。


 それでは朝食を食べて出発、と考えていたらその前にコンロンから説明したいことがあるらしい。

 コンロンが生み出す食材を使った料理についてだ。


『我の中から生み出した食材を使って料理を作ると能力が上がる。使う食材の種類や価値にもよるがな』


「え? そうなの?」


『具体的に、肉や魚を使った料理では一時的に能力がかなり上がる。野菜だとわずかではあるが永続的に上がる。酒は肉や魚の効果を飛躍的に高める。調味料はすべての食材の効果をわずかに高める。デザートは特殊な能力を一時的に授けることができるというものだ』


 一気に説明されて混乱しそうだけど、ともかくコンロンから生み出された食材を使った料理はなんらかの能力が上がる。

 具体的にどれを食べたらなにが上がるかは今後検証しなくちゃいけないけれど、これは私が強くなるチャンスかもしれない。

 私、自分の能力も鑑定できるんだけど、魔力以外はほとんど低いからなぁ。


 ほかの人をこっそり鑑定した結果からすると、器用さは人並み以上、ほかは人並みかそれ以下。

 自分で言っていて悲しくなる。


 あと、デザートでもらえる特殊な能力というのも気になるところだ。

 ただ、私はデザートなんて作れない。

 どうしたらいいものか。


『料理の仕方か? それなら食材販売機の横にレシピ集が置いてある。使い方は双子にでも聞いてくれ。また、レシピの種類を増やしたければ食材販売機で買うことができるぞ』


 食材販売機とは一体。

 ともかく、料理の作り方は調べられるらしい。

 それならそこが問題になることはないかな。


 あとは先立つもの、つまりお金だ。

 私の手持ちじゃどこまで買えるか。


『ふむ、資金か。食材販売機の向かいにある金庫にいくらか初期資金が入っているだろう。とりあえずそれを使え』


 あ、初めの資金はあるんだ。

 助かる!


 それで金庫を開けてみると、そこには見知らぬ金貨と銀貨が並んでいた。

 鑑定結果も『ヴァラスダラス金貨』と『ヴァラスダラス大銀貨』になっているし、価値がわからない。

 うーん、どうしようかなぁ。


「……とりあえず、食材販売機に私の手持ち金と一緒に入れて比較するか」


 試しに私の巾着袋に入っていた銅貨を1枚食材販売機に入れると、食材販売機の投入口横に『100』と表示された。

 この数値で買えそうなものを探すと『鶏胸肉100g』というのがある。


 鶏肉ってニワトリの肉?

 そんな高価な物が銅貨1枚で買えるの!?


 早速それと交換してみると、本当に肉が出てきた。

 色艶もいいし結構高級そうな肉だ。

 これはあとで食べてみるとして、次に私の持っている銀貨を入れるとどうなるか調べてみよう。


 銀貨を入れたときに表示された数字は『1000』、銅貨の10倍だ。

 私の国では銅貨10枚で銀貨1枚なので等しい額ということだろう。


 そのほかにも大銀貨や金貨とかもあるんだけど、私は持っていないんだよね。

 手に入れたときに試してみよう。


「さて、今度はヴァラスダラス大銀貨を……うひゃ!?」


 ヴァラスダラス大銀貨で表示された数字は10万だった。

 すっごい価値のある銀貨だなぁ、これ。

 残り19枚しかないし大事にしまっておこう。


 ちなみに、ヴァラスダラス金貨を試す勇気はなかった。

 元から5枚しかないし、取り返しの付かないことになったら困る。

 うん、いまはおいておこう。


 とりあえず、朝食はこの鶏肉とあとなにか野菜を使って料理を作ってみようかな。

 どの食材でどの能力が上がるかも確認したいし、やることは意外とたくさんだ。

 でも、めげずにがんばろう!

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