第16話
緑色の溶液は潤滑油としての役割を二割ほど果たし、トルエは何とか動けるようになっていた。
入口に戻り積み重なっている資料を端末に取り込んでいく。目的の一般人二人のうち一人はジュリエナに撃ち殺され、もう一方は実験台となって部屋の奥でポッドの中に閉じ込められていた。すでにこと切れていたため、二人はポッドを破壊してそこにいる。
「社員には申し訳ないけど静かにしてもらわないとね」
トルエが振り返ると入口の脇にバイザーの変形した人間たちが紐で一緒に括りつけられている。
「脱出はできるようにしてます」
死にはしませんとサリーナは付け足した。
端末には続々と情報がインプットされていき、Aiで関連情報が自動で分類されていく。すでに膨大な情報となっていた。
「詳しいことはあとで分析しますが、人間を強化する部類の研究ですね。改良されたメージャーは人間の能力を一時的に底上げする副作用があるみたいです」
「麻薬はまぁ、覚醒するって」
「脳機能をインプラント以上に強化することが出来るため注目されたようです。ほとんど実証されて……ああ、地球の学者も同じ論文を提出しています」
脳細胞の急速発達を促すとトルエは解釈した。
「ブレンナット社、よりもチルターク社ですね。彼らはこのメージャーの脳機能強化を発展させて人工的に、そして簡単に天才を作ることを目的としているようです」
「ふぅん」
トルエが試験管の中を写す電子顕微鏡を覗き、丸いカエルの卵の様な物体が写っているのを眺める。メージャーは試験管に滴定されており、さらに横の箱には空の容器が詰まっていた。
何かを思いついたトルエは、端末で資料にあるかもしれないある言葉を検索した。
「……当たってほしくなかったなぁ。サリーナ、急いで大佐と合流しよう」
サリーナが訝しみながら端末を覗くと、そこには新人類計画の文字が載っていた。
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