第6話・サイコパス少女
「私死ねないの」
ログインした瞬間に、目の前の少女にそんなことを言われた。
身長は俺と同じで低く、黒髪を肩まで伸ばしていて、目にかかるまで伸びた前髪の間から栗色の目がこちらを見ていた。
そんな彼女は、あたかも現実の世界にもいるような見た目をしていた。
頭上のプレイヤーネームを見ると何もない。
いや、しっかりと目を凝らして見ると、『_』があった。
あれ、なんて読むんだっけ?
「ねぇ」
「ん?」
彼女がもう一回話しかけてきた。
しっかりと至近距離で目と目を合わしているので他人事ではないのは確信なんだが……。
「私死ねないの」
「うん、それは聞いたけど……人違いじゃないかな?」
「違う、おばちゃんが言ってた、ケットシーが私を救ってくれるって。あなた、ケットシーでしょ?」
「まあ、種族的にはケットシーだけど、他のケットシーかもしれないだろ」
そういえば他のケットシー見たことないな……。
このゲーム、色々な種族のキャラは多く見かけるが、選べる種族の量が多すぎてか、同じ種族同士というのをあまり見かけない。
大体元の身体に近く、動きやすい人間などが多く見かける。
てかサンカと億万が人間だしな。
「それでも関係ない、一緒に来てほしいところがあるの。いい?」
「ええっと……」
今日は暇だし、話だけなら行ってもいいかな……。
「ジィィン?、かわいい子と何話してるのかなー?」
後ろから聞いたことのある声を聞き振り向くと、案の定、サンカが少しイライラした顔で立っていた。
「それが、いきなり話しかけてきて……」
「あんた、またナンパじみた事されてるの?」
サンカは呆れたようにため息をついた。
「あなたは、前にケットシーを連れてった機械の男?、女?どっち?」
「サンカよ、サ・ン・カ。頭上のプレイヤーネーム見ればわかるでしょ?」
サンカは頭上を指さしてそう言ったが、少女は首をかしげただけだった。
「見えないよ?」
その表情には、噓をついているようには見えなかった。
「は?あなたプレーヤーでしょ?」
「ぷれいやー?違うよ、私は、
すると、サンカが急に何かに気づき、俺の手を引き一目散に、かなから離れていった。
「ちょっと!どうしたんだよ、いきなり走り出して!」
「あいつとは関わっちゃだめ、あれは一般プレイヤーじゃない。なりきりよ」
「なりきりって?」
かなが見えなくなった所で、サンカは走るのをやめた。
「大体は、他ゲームや、アニメなんかのキャラとかの性格を真似てるんだけど、最近じゃ、実際にいる人物の見た目なんかを真似てるだけなんだけど、まさかあそこまで完成度が高いなんて……。あの『
あれって、そんな名前だったんだ……。
「まあ、そんな奴だからかかわると大変なことになるから関わっちゃだめよ」
「え?なんで?」
「少しでも受け答えをミスったらブチギレられるのよ」
なんか前に一回あったような言い方だな。
そんな風には見えなかったが、ゲーム経験者のことは信じておこう。
「さて、変なのに絡まれたけど、レベ上げ行きますかー!」
あ、まずい……。サンカを傷つけずに回避するには……これしかないか。
「あ!今日は、装備とか作ろうと思うんだ!前はサンカにしか戦闘任せきりだったし、今回は俺も戦えるようにしないとね」
「そう、じゃあ私いい店知ってるから行きましょ」
よし、あの蹂躙を見なくて済んだ。
俺とサンカは町の中心から少し離れた小さな建物に来た。
つくりは周りの建物と一緒で、外の看板には武器屋と書かれていた。
この世界の文字は日本語でできていて、洋風な世界で日本語という少し不思議な感じになっている。
「おばちゃんいるー?」
サンカはそういいながら店に入っていった。
中を見ると色々な形の武器や盾などが飾られており、奥には装飾品などが飾られていた。
「おや、サンカちゃんじゃない。久しぶりだね」
すると、奥から丸眼鏡をかけ、優しそうなおばちゃんが出てきた。
「うん、ちょっと遠出して戦ってきたから。あとこれ、お土産ね」
サンカはインベントリから梱包されたお菓子を渡した。
「あら、ありがとね。で、今回はその隣の子の装備を買いに来たのかい?」
「うん、いい感じの装備ってある?」
サンカがそういうとおばちゃんがこっちをまじまじ見た後、紙に何か書いた。
「フムフム、見た感じ魔法使いって感じか、しかも魔力が平均以下か、しかも一番いいのが俊敏性ときたものかい。うーん、ケットシーだからそうじゃないかとは思ったけど、どうしたものかね」
「えっ?」
え、なんかきめ細かくステータス見られた気がするんだけど……。
このゲームでは、ステータス確認は画面から確認することができる。
けれども相手のを見ることは普通はできない。とチュートリアルの時に言ってたような。
「あぁ、すまないね、これはサンカちゃんから貰ったものでね、一瞬でしてのステータスがわかるからとても便利でね、大切に使わせてもらってるよ」
そう言って、丸眼鏡を指さした。
「だとすると、杖とかは小さく他のも動きやすい恰好にして……。よし!大体の形ができたよ。適当な使える素材とか、あったら渡してくれれば割引するけど、どうだい?」
「はい、魔法洞窟から採ってきた魔鉱石とサテライトスコーピオンのドロップアイテム」
どっさりとアイテムが入った袋をサンカがカウンターの上に置く。
「ま、大体の素材はもってると思ってたわ」
おばちゃんはそう言うと、袋をいつの間にか隣にいた、ポニーテールのかなに手渡した。
……ん?
初めて会った時は髪を下ろしていたが、あれは確かにかなだ。
「なあ、サンカさっきの人って……」
「ん?さっきのは店員よ、おばちゃんはカウンターの対応してるだけで、武器とかを作っているのは、奥にいるおじさんと、その親戚で、おじさんの弟子がいるのよ」
「それは分かったが、その弟子の子って、さっき会ったかなじゃないか?」
「あ、だからどこかで見たことあると思ったんだ~。……えぇっ!!」
サンカもやっと気づき、驚きの声を上げる。
その声と視線で、奥でもらったアイテムを整理しているかなが振り向く。
「さっきぶりですね」
「さっきぶりって、どうしてここにいるのよ⁉」
「それは、私がここの弟子としているからです」
そういい、少し誇らしげな顔をした。
「「えぇぇぇぇ!」」
それって………
「それってどういうこと!親戚って、こいつはプレイヤーよ!どういうことか説明してよ!」
唐突なことが起こりすぎて頭が回っていないサンカは、おばさんに言い寄っていた。
「まあまあ、サンカの友達がケットシーだから、もしかしてとは思ったけど、まさかもう会っていたとはねぇ。こっちに来な、装備ができるまでこっちで話でもしようじゃないか」
そう言って、かなにカウンターを任せたおばさんは俺とサンカを連れて奥の部屋へと入っていった。
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