第4話・バトル(一方的な惨殺)

「はぁーーっ、はぁーーっ」

ジェットコースターでも体感したことのないスピードと、風圧に耐えながら必死にサンカの手を握っていた。

恐怖と風圧で大きく体力を削られた。

「このくらいでへこたれちゃぁ、この先大変だよ?」

サンカは隣でニヤニヤしながらそう言った。

少しの休憩をとって、俺たちは周りの探索を始めた。

森の中は場所によっては薄暗く、木々が密集していて視界も悪かった。

そう、のである。

「ほいっと」

そんな掛け声と一緒に背中のロケットが消え、そこから大きめなブレードを握ったアームが出てきたと思ったら。

「えい」

目にもとまらぬスピードでブレードが薙ぎ払われた。

轟音と共に舞い上がる砂嵐。

音と砂煙が晴れる頃には、さっきまであった森は平野になっていた。

「………」

そのあと、おそらく巻き込まれたであろうモンスターの経験値が大量に入り、レベルが上がった。

そのあともサンカは地形と共にモンスターたちを一掃し、俺はただ隣で経験値をもらい見守っていた。見守るしかなかった。

途中サンカの薙ぎ払いをギリギリで避け切ったモンスターがいたが、サンカの空中浮遊してレーザーを出す機械にハチの巣にされていた。

圧倒的な虐殺が何十分と続くと、サンカの装備から白い煙が上がり、動きを止めた。

「よし、いったん休憩。ジンどれほどレベル上がった?」

「……」

「おーい」

サンカが目の前で手を振る。

「………ん?あ、ごめんぼうっとしてた」

「もしかして、私の活躍に見惚れてたのかな?」

「一方的な惨殺を見てて呆気に取られてた」

「うん、いつになったら止めてくれるかと思ったけど、まさか機械がオーバーヒートする最後まで見届けられるとは思わなかったけど……」

アハハとサンカは乾いた笑い声をあげた。

そのあと、レベルを確認すると二五レベルまで上がっていた。

「あのさ、サンカ今更だけど、このゲームの戦闘ってあんなふうな地形ごと抉り取るようなことをするのか?」

「いや、ジンを驚かせようとして少し張り切っただけで、いつもならこんなことはしないよ……たぶん」

「たぶんて、お前みたいなやつがゴロゴロいるのかよ……」

「そりゃぁ、数年以上続いてるゲームなんだし。私みたいに最強モンスターを倒しているプレイヤーなんてごまんといるでしょ」

サンカみたいなのが大量にいるとなるとこの先のレベル上げがとても楽、もとい役目がない経験値を吸う置物と化す。

けれども、一人で戦いができる自信がない。

「なぁ、サンカ。俺のジョブだど、どんな戦い方すればいいんだ?」

「え、普通に敵に向かって魔法攻撃をぶっ放したり、味方に補助魔法かけたりするだけだけど……?」

「え、それだけ?」

「それだけ」

とんでもないジョブを選んでしまったかもしれない。

「……まぁ、一度そこら辺に持ってる魔法撃ってみるか」

じゃあ、まずは炎系魔法。

杖から放たれた小さな炎の球は木に当たって弾けた。

「うん、私より弱めだね」

「いや、俺は始めたばっかだからな」

魔法を試しに撃っただけなのに……。

ん?

「え、もう魔力少ししかないんだが!?」

「そこは普通以下だね」

「うれしくないんだが!」

やばい、俺のステータスのことになると、サンカのニヤニヤが加速していく。

「ねえねえ……」

いつもサンカが俺より立場が上になった時に言うあの言葉が来る!

「レベル上げとか色々手伝ってあげるからさ、店の手伝いの時間増やしてもいい?」

「い・や・だ」

サンカは背中から武器を出しこちらに向けた。

「やってくれる?」

「脅迫はダメだろ、な……」

ビームが顔の横を通り過ぎた。

経験値が少し入った。

「ま、当てるつもりはないよ」

「ゲームだと思っても怖いものだな」

今でも冷や汗が止まらない。

「実戦だと当たったりするから慣れておかないとやってけないわよ」

このゲームやめよっかな。

「大丈夫、私がしっかり鍛えてあげるから!まだ始めたばかりでしょ!」

「当たり前に心読まないで」

「ジンの心なんて四年前から読めるようになってるんだからいまさらでしょ」

「初めて知ったんだが……」

別の恐怖を味わって、ゲームを終えた。

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