第18話 ショッピング【成美視点】
【成美視点】
「えへへ、今日という日が楽しみでした!!」
「そっか、それは何よりです」
日曜日、私は宗吉さんとデパートに来ていました。
そうです、買い物デートです!!
今日という日を、どれだけ楽しみにしていたか……。
ルンルン気分の私と、いつもと変わらない宗吉さん。
……もっと喜んでほしいんですけれどね。
まぁ……宗吉さんらしいといえば、そうなんですが。
「そういえば、今日は何を買うの?」
「宗吉さんの服です!!」
「え、俺の服?」
「はい!!」
宗吉さんは確かにカッコいいですけれど、1つだけ欠点があります。
それが……服のダサさです。ダメージジーンズにキャラ柄のTシャツが許されるのは、小学生までです。いえ……最近の小学生はオシャレなので、小学生でも許されざる服装ですね。
何はともあれ、そんな宗吉さんの服を変えるべく、私はこうしてショッピングにやってきたのです。直接ダサいと伝えると宗吉さんが傷つくと思うので、深くは言及しませんが。深く言及することなく、宗吉さんのファッションセンスを向上させること。それこそが私に与えられたミッションです!!
「でも……俺みたいなおっさんの服なんて、誰も興味ないと思いますよ? それよりもナルミさんの服に注力した方が、ずっと建設的だと思いますよ?」
「そんなことありませんよ!!」
宗吉さんは随分と自分を卑下して、過小評価しているみたいですけれど……それは違います。確かに私は宗吉さんのことが好きですし、恋は盲目というように色眼鏡で見てしまっているところがあります。ですけれど、それを抜きにしても……宗吉さんはモテるのです!!
「ねぇ、あの男の人……カッコよくない?」
「あら、本当ね。背もほどほどに高いし、筋肉もあるわね」
「それに顔付きだって、結構カッコいいわ」
「アタシ……ナンパしようかしら?」
「ウホッ、いい男」
「おい、古いぞ」
「でもよォ……マジでイケメンじゃね?」
「確かに……お近づきになりてェな……」
周りの人たちが、宗吉さんに注目している。
男女問わず、彼はモテるのだ。
だからこそ……私が頑張らないと。
服をカッコよくしてしまえば、彼は今以上にモテてしまうかもしれない。だけど……それでも、私は彼にもっとカッコよくなってほしいと願っている。宗吉さんがもっとモテたとしても、私が隣で頑張ればいいだけだから。
「それにしても……誰も気付かないんですね」
「PBTuberなんて、そんなもんですよ」
「そう……なんですか?」
「テレビに出ているタレントですら、こういった場所にいると案外気付かれないものです。だったら私達みたいなPBTuberが気付かれるなんて、ずっと可能性が低いと思いませんか?」
「まぁ……それは確かに」
宗吉さんは落ち込んでいるけれど、そういうものだ。
私達はいくら有名になっても、街中では気付かれないから。
「それじゃあ、買い物をしましょう!!」
「あ、はい」
若干落ち込んだ宗吉さんと、私は買い物を始めた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「今日は楽しかったですね!!」
「え、えぇ。そうですね……」
18時。私たちはデパートの屋上にいた。
夕焼けが街を照らし、綺麗に彩っている。
この世界で最も綺麗なモノの1つは、この夕景だろう。
そんな夕景を、好きな人と見ることが出来る。
これ以上の幸福は、他には無いだろう。
何故だか……宗吉さんはドッと疲れているけれど。
「宗吉さん、どうでした? 楽しかったですか?」
「そうですね。女性と買い物なんて初めてですから、初めての経験が多くて楽しかったですよ」
「それは何よりです」
「服をこんなに買うのも、初めてでした」
そう言って、宗吉さんは手に持った大量の紙袋を見せてきた。
宗吉さんが本日購入した服は、合計10着。
どれも私が選んだ、宗吉さんに合いそうな服だ。
「これからは、これらの服を着て配信にも出演しようと思います。ナルミさんのおかげで、自分に合う服がわかってきた気がします」
その言葉に、私は心からの喜びを感じた。
宗吉さんが新しい服を気に入ってくれて、それを自分の新たなスタイルとして取り入れようとしている。それだけで、今日一日の疲れが吹き飛んだ気がする。
「それにしても、ナルミさんはセンスがいいですね。僕に似合う服をこんなにたくさん選んでくれて……」
「えへへ、そんなことないですよ。ただ、宗吉さんがカッコいいから、何を着ても似合うんです」
私たちは互いに笑顔を交わし、夕焼けに染まる街を一緒に歩いた。
この瞬間が永遠に続けばいいのにと願いながら。
家に帰る道すがら、私はずっと宗吉さんのことを考えていた。
彼と過ごした時間、彼の笑顔、彼の優しさ。それらすべてが、私の心を満たしてくれる。宗吉さんとの買い物デートは、ただの買い物以上のものだった。私たちの関係が少しでも深まったような気がして、帰り道もずっと幸せな気持ちでいっぱいだった。
「また一緒に買い物に行きたいな……」
そんなことを考えながら、私は家へと帰っていった。
今日一日のことを大切な思い出として、心に刻み込むのだった。
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