第9話 アイテム売買
「……お?」
キングヒュドラが光の粒子へと置換された後、1つの宝箱が出現した。赤を基調としており、金色の装飾がなされた綺麗な宝箱だ。ボス魔物を討伐すると、稀にアイテムがドロップするという話は聞いたことがあるが、何気にドロップしたのは今回が初めてだな。
(お!! 宝箱だ!!)
(あんなに華麗に討伐したんだ。宝箱の1つや2つ、出なきゃ失礼だよ)
(↑いや、誰目線だよwwwwwwwwwwww)
(宝箱!! 興奮してきたな!!)
(宝箱もいいけど……キングヒュドラ爆散したよな?)
(俺も見たわ。マジで……トンデモない強さなんだな)
(俺、SO吉の古参だけど……今回は驚いたわ)
(なんだよ、あの闘気!! あんなの規格外だろ!!)
コメント欄が賑わっている。
いやぁ、配信者冥利に尽きるな。
この調子で、これからも配信を頑張っていこう。
《極闘気》に関する質問も比較的多いが、あれは説明が難しいからな。めちゃくちゃ鍛えたら、たまたま《闘気》が覚醒した……みたいな感じだからな。詳しく説明してくれと言われても、再現性がないので説明は難しい。
「よし、宝箱を開こうか!!」
(よっしゃ!! 気になるぜ!!)
(宝箱の中身!! なんなんだろうな!!)
(めっちゃ強い武器かな!! それとも防具かな!!)
(何はともあれ、キングヒュドラのドロップアイテムだ!! カス武器なんかは入ってないだろうな!!)
そして俺は、宝箱を開いた。
そこにあったのは──黄金の腕輪だった。
「……何これ?」
黄金で出来た、綺麗な腕輪だ。
紅の宝玉が埋め込まれており、装飾が美しい。
だが不思議なことに、美しさに見惚れることはない。
どこか危ない雰囲気が、醸し出されているから。
これはいったい、なんなのだろうか。
ボスドロップには稀に、呪われたアイテムが出土することがあるらしい。これほどまでに妖しい雰囲気があるのだから、この腕輪も呪われたアイテムなのだろうか。
(へぇ、『王者の腕輪』じゃん)
(↑え、何それ?)
(素人質問で恐縮なのですが、それはなんですか?)
(↑本当に素人で草wwwwwwwww)
(↑草に草生やすな)
(『王者の腕輪』は、強者にはさらなる力を与え、弱者には致命的な影響を及ぼす呪われたアイテムであるんやで。歴史上、歴史上の多くの人物がこのアイテムを用いて世界を支配したとされる[1]。んやで)
(↑コピペニキサンガツ)
(つまりSO吉が着用すれば、さらに強くなれるってコト!?)
(これ以上強くなるなんて、どうなっちまうんだよ……)
コピペニキのおかげで詳細が判明して、とにかく呪いのアイテムだってことが理解できた。強者はさらに強くなり、弱者は致命的な影響……か。確かに俺は人並み以上には強いけれど、単純な戦闘力だけで強弱を測るのだろうか。
歴史上の多くの人物に力を与えたという説明だが、はたして俺に力を授けてくれるのだろうか。単純な戦闘力だけなら自身はあるが、精神力なども含まれるとなると……ちょっと危ういかもしれない。そこら辺は人並み程度と自覚しているからな。
(着用したらスパチャ飛ばすわ)
(俺も。期待しているぜ)
(親のクレカから払います!!)
(↑それはマジでやめろ)
カネに目が眩んだワケではないが、ここは配信者として度胸を見せるべきなのではないだろうか。やはり視聴者はドキドキするような体験を求めているだろうから、根性を見せて着用すれば皆喜んでくれるだろう。
考える、考える、考える、考える、考える。
勇気を振り絞る、勇気を振り絞る、勇気を振り絞る。
度胸が試される、度胸が試される、度胸が試される。
そして、一息吐き──
「よし!! 着けます!!」
ええいままよと、右腕に腕輪を装着する。
瞬間──とてつもないパワーが漲ってきた。
これまで味わったことのないほど、凄まじいパワーが。
「お、おぉおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」
(ど、どうしたんだよ!! SO吉!!)
(す、スゲェ!! SO吉の魔力が上昇している!!)
(ど、どうなっちまうんだよ!?!?)
(こ、これ以上強くなるのかよ!?!!?)
凄まじいパワーだ。凄まじい全能感だ。
今だったら、どんな敵でも倒せそうだ。
《極闘気》はおろか、《闘気》さえも使わずに。
「凄まじいですね、この腕輪。俺……もっと強くなった気がしますよ」
(ま、マジかよ……これ以上強くなるのかよ……)
(と、とんでもないことになったんじゃないか……?)
(ただでさえ、最強のSO吉が……さらに強くなったのかよ……)
(もう……チートじゃん……)
(さらに強いSO吉が見れる、っコト!?)
(これ以上面白くなる、ってコト!?)
(↑二連続でちいさくてかわいくなるな)
(でも、マジで……最強になる、ってコト!?)
視聴者たちは俺に期待してくれている。
これからの俺の活躍を、期待してくれている。
そのことがとても嬉しい。
これからも、配信を頑張ろう。
こんなにもみんな、期待してくれているのだから。
もっと派手に暴れて、視聴者たちを沸かせよう。
「これからも頑張りますよ!!」
そう叫んで、俺は旗艦用ゲートで帰還した。
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