第23話 ダンジョン配信 1/3

「みなさん、こんにちは」


(お、ゲリラ配信だ!!)

(1週間ぶりの配信だな!!)

(今まで何をしてたんだよ、大将!!)

(嬉しいぜ!! お前のダンジョン配信!!)


(っていうか、またコラボじゃね?)

(↑マジじゃん!! ナルミいるじゃん!!)

(ゲリラ配信、ゲリラコラボ!! これでこそ配信者だよな!!)

(うぉおおおおおおお!! アガッてきた!!)


 この1週間色々と忙しかったので、配信ができなかった。それもあってか、視聴者たちのテンションがぶち上がってる。求められているようで、なんだかとても嬉しく思う。


 ……って、そうじゃない。

 今回のダンジョン配信は自己顕示欲を満たすためや、カネを稼ぐなんて目的で行なっているのではない。第3層の黒いフェンリルを討伐することで、この配信を見ている魔法師たちにダンジョンに挑めるということをいち早く知らせるために行なっているのだ。


 ……いや、まぁ、お金は欲しいが。

 賞賛だって、あればあるだけ嬉しいが。

 何はともあれ、いつものように副業がメインというわけではない。


「今日はSO吉さんと一緒に、第3層まで挑みますよ!!」


(え、SO吉F級を脱したのか?)

(F級は第2層までしか、挑めないハズだろ?)

(まぁ、どうみたってF級の器じゃなかったもんな)

(そうそう。SSS級に匹敵したもんな)


 そうだ、まだ公表していないんだった。

 俺はスーツの内ポケットにある、魔法師証を見せた。

 もちろん、名前や住所の部分は指で隠して。


「ほら、ここにSSS級って書いてるでしょ?」


(す、すげェエエエエエエエ!?!?!?)

(ま、マジでSSS級じゃん!??!?!?)

(やっぱり、SO吉は最強だったんだ!!)

(SO吉最強!! SO吉最強!!)


(フェンリルを倒したのも、マグレじゃなかったんだな)

(いまのSSS級にソロでそんなことできるやつ、いないだろ)

(じゃあもしかして、SO吉がSSS級最強なのか……?)

(↑いや、もしかすると……魔法師最強かもな)


 俺の魔法師証を見て、興奮する視聴者たち。

 様々な考察も飛び交い、コメント欄が滝のように流れる。真っ赤なスーパーチャットだって、大量に送られる。おぉ、現時点で100万円を突破だ。


 黒いフェンリルとやらがどれだけ強いか、全然想像はつかない。だがこれだけ期待されているのだから、敗北だけは絶対に許されないだろう。頬を叩き、気合を入れる。


「じゃあみんな、応援してくれよ!!」


 そして俺たちは、ダンジョンを歩んだ。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



【第1層】


 ダンジョン内はいつもと何ら変わらない。

 岩肌の洞窟然とした、いかにもな内装のダンジョン。

 壁につけられた燭台の灯りは、ダンジョン内を薄暗く照らす。夜目の効く俺にとっては、十分な明るさだが。


 そして出現する魔物だって、いつもと変わらない。

 ゴブリンやコボルト、ブラッディオーガにドラゴン。

 そんな異常な面々が、いつものように出現する。


「デカゴブリンやデカトカゲ……じゃなくてブラッディーガやドラゴンたちって、本来はこんな上層には出現しない魔物なんですよね?」

「はい、そうです。普通だったら、50層とかのもっと上層に出現しますよ。」 


(SO吉の野郎、ついに認めたのか!?!?!?!?)

(い、いま……訂正したよな!?!?!?!?!?)

(大ニュースだ!! SO吉が強さを認めたぞ!!!!)

(スゲェエエエエエ!! 歴史的瞬間だ!!!!!!)


 いやいや、大袈裟すぎるだろ。

 

「いったい、どうして上層に出現するんでしょうね」

「そうですね。……それを解明しないことには、今後も続くでしょうね」

「うーん……考えても、よくわかりませんね」

「巷では、悪い魔法師がゲートを操作している噂があるらしいですよ」

「へぇ、ゲートの操作ですか……」


(でも、そんな魔法師の話、聞いたことないよな)

(ゲートを操作できるなんて、それだけでSSS級だろ)

(所詮、噂は噂。信憑性がないよな)

(でも……となると、いったい何が原因なんだろうな)


 視聴者たちと考えても、答えは出ない。

 小作さんも協会が鋭意原因を捜索中、と言っていたが……はたして解明されることはあるのだろうか。いや、必ず原因を解明してもらわないと困るのだが。


 何はともあれ、そんな原因不明の事態が起きている。

 これまでは俺が知らず知らずのまま、色々と討伐をしていたみたいだが……ずっとソレが続くハズもない。俺だって疲労が溜まれば、ダンジョンに行かずに休養する時もあるからな。そんな時にランクの高い魔物が上層に出現し、大暴れしたら……大惨事になることは目に見えている。


 できれば今回の黒いフェンリル討伐で、その原因の一端でも解明できたらいいと思う。この緊急事態は、早急に解決しないといけないのだから。


「何はともあれ、やることは単純ですね」

「そうですね。フェンリルを倒すだけです!!」


(おぉおおおお!! 心強いぜ!!)

(頼もしいぜ!! 2人とも!!)

(頑張ってくれ!! 勝ってくれよ!!)

(期待しているぜ!! 2人とも!!)


 視聴者の応援を受け、俺たちはさらに階層を降りた。


 

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