第15話 ダンジョン配信 2/3【成美視点】

【成美視点】


 実際に助けてもらったし、彼の活躍は液晶越しでも生でも見てきた。だからこそ、今回のコラボでは驚くことは少ないだろう……と考えていたのに──


「え、どうしたんですかナルミさん?」


 キョトンとした表情で、純粋な質問を投げてくる宗吉さん。そこには嫌味も嘲笑もなく、ただただ純粋な疑問だけがあった。こちらの気も知らずに、よくそんな表情ができるなと意地悪ながら思ってしまう。


 ふっっっと、重いため息で答える。

 もちろん、配信には乗らないように小さく漏らす。

 そうだ、この程度ではもう驚かない。


(ブラックドラゴンとタイガードラゴンを……一撃で倒したぞ……!?!?!?!?!?!?!?!?!?)

(ま、マジかよ……。こ、こんなこと、どの国の魔法師でも不可能だろ!?!?!?!?!?!?!?!?0

(日本最強……いや、世界最強だろ!?!?!?!?)

(成美の手助けが多少あったといっても、ほとんどソロで倒したぞ!?!?!?!? 規格外にも程があるだろ!?!?!?!?!?!?)


(ナルミのやつ……おはや呆れてるな)

(まぁ、仕方ねぇよな。こんな規格外なやつ、驚きすぎてそりゃ疲れるよ)

(なんか……御愁傷様だな。頑張れよ、ナルミ)

(そうだ、応援してるぜ!!)


 コメント欄で慰められる。

 うん、わかってくれる人が多くてよかった。

 こんな規格外な出来事、疲れちゃうからね。


 ブラックドラゴンとタイガードラゴン、そのどちらもがSS級に相当する強敵だ。そんな強敵が第1層に出現したことも驚きだけど、その2匹のドラゴンをほぼソロで倒した宗吉さんの強さにも驚きだ。コメント欄でも指摘されているけれど、そんな芸当はどの国の魔法師でも不可能だろう。


 だからこそ、私は深いため息を吐いた。

 命の恩人と一緒にダンジョン攻略できることは嬉しいけれど、行動や戦闘力が規格外すぎて疲れてしまう。嬉しいことは嬉しいけれど、やっぱり驚きすぎて疲労は抑えられないな。


「いやぁ、楽しいですね!! ダンジョン攻略!!」

「そう……ですか……?」

「はい!! コラボってことで敵も空気を読んでくれているのか、いつもいじょうに手応えのある敵が多くて楽しいです!!」

「それは……何よりです」


(いやいや、SS級の魔物を2匹も相手にして……手応えあるから楽しいって……規格外すぎるだろ!?!?!?)

(他の魔法師だったらイキっているって思うけれど、実際に無双しているSO吉が言っているんだから……何も言えないよな……)

(やっぱりSO吉ってスゴいよな。普通の魔法師の配信だったら、こんな絶対的な無双なんて見れないもんな)

(SO吉最強!! SO吉最強!! SO吉最強!!)


(ナルミ……頑張れよ!!)

(そうそう、俺ったいはそれくらいしか言えないぜ)

(これからもっと驚きの連続が待ち受けているだろうし、なんというか……御愁傷様だな)

(↑それ、前も同じこと言っていたぞ)


 何はともあれ、彼が喜んでくれて何よりだ。

 彼のためにコラボを提案したのだから、彼が喜んでくれることが一番重要だ。彼の笑顔を見れて、私は満足だ。


 ただ……1つワガママを言っていいなら、もう少しだけ常識的な行動を見せてほしい。手のひらで空気を圧縮しプラズマ砲を放ったり、光以上の速さで動くなんて……さすがに驚きすぎて顎が外れそうになったから。このままおどろくことがつづけば、身体が持たないだろうから。


「……ねぇ、宗吉さん」

「ん、どうしましたか?」

「1つ、提案があるんですが、いいですか?」

「え、えぇ」


 そして、私は告げた。


「第1層のボス、一緒に倒しませんか?」



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 ダンジョンには各層に『ボス』と呼ばれる、強力な魔物が存在する。そのボスを討伐することによって、下の階層に挑むことができるのだ。


 そして私たちはボスのいる部屋、いわゆる『ボス部屋』の前へとやってきた。重厚な鉄扉が、私たちの前に悠然と佇んでいる。


「ここがボス部屋ですね……初めてなんで、 緊張しますね」

「安心してください、きっと楽勝ですから」


(色んなドラゴンやフェンリルを倒してきたんだから、第1層のボスなんて楽勝だぜ!! 心配するな!!)

(そうそう、お前は規格外の最強なんだから!!)

(期待しているぜ、SO吉!!)

(SO吉最強!! SO吉最強!! SO吉最強!!)


(それにしても……やっぱり、ボス配信は人気だな)

(↑同接が50万人を突破してるもんな。スゲエよ)

(普通の配信者でもボス配信だと同接1万人を突破する、なんて話はよく聞くけど……50万人突破は初めてだな)

(さすがは最強コンビ!! スゲェぜ!!)


 視聴者の期待が、私の胸を打つ。

 きっと楽勝だけど、気合を入れないと。


「さぁ、挑みましょう!!」

「は、はい!!」


 扉を開けると、そこには──


「ギジャァ……」


 下品なほどにギラギラと輝く、黄金の鱗。

 口元から見えるは、エメラルドのような翠の牙。

 目には冷たい知性が宿っており、まるで私たちの心を見透かすかのよう。


「どうして……ゴールデンサーペントがいるの!?」


 ドラゴンよりも凶悪なSSS級の魔物。

 ゴールデンサーペントが、鎮座していた。

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