第26話

「お疲れ様」と博美がペットボトルのお茶をテーブルに置く。

「いやあ、まさか買ってきたシュークリームやお菓子がなくなるなんて思わなかったよ」

それらは本来二日にわけて販売するものであった。

「申し訳ないことをしましたわ。後ほど同じものが届くはずですので」

「え?いやそこまでしなくていいよ」

「もうこうなると雅弓ちゃんは止まらないから素直に受け取ってあげて」

空がそういうと困惑した表情で博美がうなずいた。

「にしても三人の連携、ていうの?かっこよかったよ。空から聞いてるけど三人はチームなんだよね?」

「うん、チームアエロ―ていうんだよ」

そっか。と博美がどこか上の空になったかと思うとブレザーのポケットからメモ帳とボールペンを取り出した。

「ねえ、そこら辺の話聞かせてもらっていい?あ、機密事項なら諦めるけど」

「博美もしかして小説のネタにしようと思ってるでしょ」

「あら、博美さんは執筆なされてるんですの?」

「そんな大層なモノじゃ」と博美が照れながら言ってるときに校内放送が流れだした。

予定にはなかったらしくざわつきながらも生徒たちが放送に耳を傾ける。

『緊急放送。山火事が発生しました。生徒及びお客様は先生の指示に従い落ち着いて行動をお願いいたします。繰り返します――』

「え?マジ?」

教室内のざわつきが大きくなる。

「みなさん大丈夫ですから、落ち着いて」

小夜が立ち上がり声を上げる。

「私たち大空女子高の生徒です。お客様は私の、生徒の方はこちらの姫川さんの指示に従って移動してください」

それぞれを避難誘導に当たっている先生の元へ移動させると空は端末から忍谷へと連絡を入れる。

「なにかしら?て、あなたたちのことだからなんとなく予想はつくけど」

「山火事が発生しました。雅弓ちゃんが調べた情報によると不十分な後始末によるもののようです」

「断っておくけど今の私や幻中に出動を許可するほどの力はないわ。それはわかってる?」

「はい――」と空は声を落とす。

「ふふ、また始末書が増えるわね。早くいきなさい」

ありがとうございます。と空が端末を切り雅弓と小夜を見た。

「博美ちゃんの教室使ってもいい?」

「あ、うん」

空は小夜が持ってきた大空女子高のアタッシュケースを受け取り教室へと急ぐ。

「空!」と博美が呼び止める。

「気を付けて。平和をよろしく!」

うん。と空は博美にサムズアップを返すと雅弓と小夜を追った。

「まだ燃えはじめてすぐのようなので初期消火が間に合えば広がりを食い止められるはず」

「うん、急ごう」

着装!と空の号令と共に素早く制服に着替える。

「やっぱりコレって感じだね」

「そうですわね。さ、行きますわよ」

「チームアエロ―出場!」

空たちが窓を開け飛び立つ。

ふと振り返ると手を振ってる博美がみえた。いや博美だけではなくクラスメイト全員が手を振っていた。

山火事の発生場所がみえてきたところで空が手振りで雅弓と小夜に合図を送り急降下する。

急降下した先。そこには登山を楽しんでいた老夫婦がいて夫人の方が避難中に足を挫いたらしく夫の肩を借りて擦るように歩いている。

空は老婦人の前に降り立ちこう言った。

「大空女子高生徒、海埜空です。救助に来ました!」

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ベイビィバード 万年一次落ち太郎 @7543

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