第24話
ヘリオス救出作戦から一週間経った。
破壊活動の主犯として自首した鳶とそこから芋づる式に防衛大臣だった内蔵も逮捕されレッドウィングスは一時解散、解体となった。
翼を持つ者、それもレッドウィングスの大隊長の逮捕は話題の中心になりマスメディアによって大々的に取り上げられ翼を持つ者について世論が繰り広げられる事となり雅弓の母が代表として寄せられた声に対して返事を返すと共に改めて翼を持つ者について世間へ発信した。
また、翼を持つ者を危険視し煽りたてる評論家もいたが「人の噂も七十五日」という具合にいつの間にか世間の話題は内蔵の方に移っていった。
「それで小明ちゃんの方は?」
緊急の全校集会の前に立ち寄った保健室で空が忍谷に聞く。
「無事親御さんの元に帰ったわ。今は弁護士と相談中といったところ」
「そう、ですか」
「本当に捨て子で名無しなら全責任を内蔵に押し付けられたのだけどね。道具扱いされたとはいえ小明として放火したことには違いはないから。ま、あなたが落ち込むほどの結果にはならないわよ」
はい。と返事を返し空は保健室を出た。
「あれ、小夜ちゃん。『先に行って』て言ったのに」
「うん。でもやっぱり一緒に行きたいなって。あと小明ちゃんのことも気になって」
「悪いようにはならないって忍谷先生が言ってたから大丈夫だとは思う。もし私たちになにかできるならまたそのとき協力しよう」
うん。と言う小夜と共に体育館へと急ぐ。
体育館前にに腕を組み呆れた様子の雅弓がいた。
「まったく、やっぱり最後はあなた方なのね。ほら、急いで」
突然の普通科も加えた全校集会に体育館内はざわついていたが壇上に幻中先生が登壇すると一斉に静かになった。
「ここにいる全員はもうすでに知っていると思うがレッドウィングスから逮捕者が出たばかりでなく破壊活動にも加担していた。それによりカラザであったレッドウィングスは解体、ここ大空女子高含め他の翼を持つ者の学校にも調査が入ることになった。これら全ては私たちの世代が過去の人たちが築いてきた『今』を盤石だと過信し甘え縋っていたからだ。私たちのせいで『翼を持つ者』の『過去』と『今』そして『未来』に疵瑕を付けたことを深く詫びる」
幻中先生が深々と頭を一分以上さげた。
『頭を上げて下さい』そう誰かが言い『抑うつだった私に青空をみせてくれたのは先生です』と続き『私も』『私も』と雛鳥が親鳥に声を上げるように沸き立った。
青嵐のような力強い声を浴びていた幻中先生はゆっくりと瞳を開ける。
「――ありがとう」
憑き物が落ちたような表情で幻中先生はそう言った。
「私たちの『世代』、ね」
「実際そうだからしゃあねえだろ」
「別に不満入ってないわ。ただそうね、て」
忍谷はそう言うと一歩前にでて墓に花を添える。
全校集会が終わった後幻中先生たちは学校から離れたところにある初代学園長の墓参りに訪れていた。
忍谷の後に続き幻中先生と烏丸先生も花を添え手を合わせる。
「――この学校に雛鳥など一羽もいなかったのだな。私はこの学校を巣立ちの準備をするところだと思い込んでいた。だがここに来た時点でとっくに巣立ちは終わっていた。私なりに考えなおしてみたんだがこの場所は長い未来を渡る鳥たちの休息地なんじゃないか、て」
幻中先生は墓石に問うように言った。
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