第4話
翌日、登山リュックに重りを入れてのジョギング及び階段走りを終え空が朝食を受け取っていたときのこと食堂に備え付けてあったテレビからあるニュースが流れてきた。
『爆破予告があり現場は一時騒然になりました』
アナウンサーがそう読み上げて映像が流れる。その映像の片隅に一瞬翼を持つ者たちが写り込んだ。
「どうかしましたの?」
「あ、うん。今私たちの先輩が写ってて。この高校の生徒かわからないんだけどね」
「今じゃいろんなところでみかけるからね。ただ、芸人さんとかそっち方面は意外といないんだよね」
小夜がトレイ二枚をテーブルにでん、と置いた。
「羽でこう『なんでやねん』て突っ込んだら面白いと思うのに」
「誰かがやって面白くなかったからやらないんじゃないかな?」
「そうかなぁ。ねえ雅弓ちゃん後でやってみてよ」
やりませんわよ。と雅弓がしらすとキャベツのサラダにドレッシングをかける。
「それでどんなニュースでしたの?」
「爆破予告だって。爆破物らしきものはみつからず何事もなかったなかったようだけど」
「ほんといい迷惑だよね」
「――昔はそういった嘘か真かわからないことに翼を持つ者が駆り出されていたんですのよ。いなくなった猫を探して欲しいだとか高層ビルの窓ふきとか。幼い私でもいいように使われていることは感じてましたわ、それでもお母様は『いつか大きなことへの貯金』そうわたくしに言っていつも青い空へと飛んで行くんですの」
そこまで言い切ってハッとした表情をみせたかと思うとわざとらしく雅弓が咳をして場を持たせようとする。
「わたくしとしたことが食事中に。申し訳ないですわ」
「そんなことないよ。むしろそういった話をもっと聞きたい。私のお母さんもお父さんも翼を持つ者じゃないから」
「私も。えっと母親が翼を持つ者だからと言って翼を持つ者が必ず生まれてくるわけじゃないんだっけ?」
そうそう。と空がうなずき返す。
「はい、はい。わたくしが悪かったですからこの話はお終い。ほら朝食の時間終わってしまいますわよ?」
「え?あ、まだ私お代わりしてない」
まだ食べるんだ。思わずそう空がこぼした。
『バードコール!』
今日の午後の日課は飛行訓練及び先生相手の組手。
翼を生やし羽根から獲物を生成した空たちが幻中先生に見得を切る。
「救助活動の妨げになる行為に対して我々は武力行為を許可されている。直ちにこの場から撤収せよ」
ごく普通の金属バットを持った幻中先生は眉一つ動かさずその場から動かない。
「――雅弓ちゃん」
空がぼそりと呟き横目で合図する。
ほぼ同時に空と雅弓が飛び出す。
雅弓の槍術も空の我流の太刀も幻中先生は風を纏わせた金属バットで捌いて受け流した。
「そこですわ!」
ともすれば身を切る雅弓の一撃を躱した幻中先生へと空が急降下の一撃をくらわせる。
「小夜ちゃん!」
空と幻中先生が組み合っている横を小夜が慌て駆け抜ける。
「爆破物かく――ほぉ!」
バクダンと書かれたティッシュ箱は小夜の手から飛び出して災害科特注の処理ケースではなく地面へと落ちた。
「――途中までは良かったんだがな」
幻中先生が金属バットによりかかり言った。
「もうなんで、こう、わたくしたちは締まらないんですの!」
雅弓がため息を漏らす。
「結果としては最悪だが二人で注意を引きもう一人が危険物を確保する。おまえたちの行動は正解だ。私たちの目的は闘うことじゃない人命救助だ」
最後の言葉は空たちだけではなく生徒全員に聞こえるよう強く言った。
「全員整列。よし、休め。明日から夏休暇に入る、課題もでるがあくまでも心身ともに体を休める時間だ。怪我や病気のないよう、気持ち新たにしたおまえたちに会えるのを待っている、以上だ」
生徒全員が姿勢を正し挙手注目の敬礼をした。
「しばらくお別れだね」
荷造りをしながら小夜がそう言う。
「そうだね。でもきっとあっという間だよ」
「うーん、私としてはそこそこの早さで進んで欲しいな」
どうして?とまとめたゴミを塵取りに集めながら空が聞いた。
「だって課題が。あー中学の嫌な記憶がー」
「あはは。忘れたら幻中先生怒るだろうな」
二人して身震いした。
一週間以内で課題を終わらせると意気込んだ小夜と寮の玄関で別れ空は端末を取り出し親に連絡を入れた。
よし。とバードコールに触れ飛び立った瞬間雅弓に声を掛けられ空は旋回し降り立つ。
「どうしたの雅弓ちゃん」
「あ、いえ大した用事ではないんですの。ただ半年のお礼を言いたくて」
「お礼だなんて。どちらかと言うと私の方が助けられぱなしで」
「空さんの落ち込みやすくも前へと足を止めない姿勢。わたくしはそういったところに助けれていましたの」
そこまで言って雅弓がわざとらしく咳き込む。
「今のは聞かなかったことに。ともかくお元気で」
では。と雅弓は無理やり話を纏めるといかにもな高級車に乗って学園を出ていった。
他の寮生の喧騒しながら空は夏の空気を一杯に吸い込んだ。
「よし、行こう」
耳当て代わりのヘッドホンをつけ黒い翼をはためかせ空は青空へと飛び立つ。
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