【父上様が選んだ二人】 1話
「ウェル、ウィン!」
まだ、幼い娘、詩菜はあれからやはり成長が停滞していた。
人で言えば、只今3歳、又は4歳ってところか。
それも、姿で言うところだ。
中身、精神は、全く成長できず、姿で見るより更に幼いままだった。
彼女は、俺の衣装を掴み引っ張る。
どこかに連れて行きたいようだ。
「どうしたんだ? 何かあるのか?」
俺、ウェルヴィンは、詩菜を抱き上げると彼女が指を指す方へと行ってみる。
庭には、綺麗な花が咲いたり、木々が風に揺れている。
そんな庭の片隅に行けば・・・
「なんだ、虫か?」
詩菜は小さな虫を見つけたらしい。
興味があるものの、動く小さな虫が恐いのだ。
地球で言えば、蟻なような生き物。
俺と詩菜の住むこの世界は、父上様が創造神様に、創ってもらい用意されたものだった。
父上様も俺とシリウスも地球に関わり、何らかの仕事をしている。
地球に似たような世界と言うわけだ。
この庭にある植物でさえ、地球ではお馴染みなようなものばかりだった。
そして生き物でさえも・・・
詩菜は虫嫌いなようだ。
ただ、てんとう虫のような小さく、色の綺麗なものには、触れていた。
まぁ、可愛く見えるのかもしれない。
俺は手に蟻に似た虫を乗せて、詩菜に見せる。
すると、恐いのか抱っこされている俺の首に、しがみつき目を伏せてしまう。
そして、恐る恐る、見るのだ。
「どうした? 何もしない。
恐くないぞ。」
俺が虫をやや近づけるもやっぱり、恐いらしい。
「なら、戻してやろうな。」
そう言い、土の上に置いてやると何事もなかったかのように、虫は、動き回っている。
詩菜は興味深く見ているのだ。
俺は、この世界で父上様と詩菜と暮らしている。
時折、シリウスがやって来ては詩菜と関わり遊んでやるのだ。
詩菜はシリウスが来るのをずっと待っているようだった。
「チバちゃま?」
頻繁に詩菜は父上様や、俺にシリウスが来るかと尋ねてくるのだ。
その度に父上様は、
「来てくれといいな。
いつ、帰ってくるのか尋ねてみよう。」
そう言い、お釈迦様にシリウスの帰りがいつになるのかを尋ねていた。
待ち遠しい詩菜。
縁側に出ては座り地面に着かない両足を、プランプランと揺らし空を見ていた。
寂しさを抱える幼い詩菜の後ろ姿を見ながら、俺は父上様と部屋でいろいろと話すのだ。
この日は、詩菜の成長が停滞していることについてだった。。。
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