第12話 初めて抱く感情② 最終話

俺が少しずつ詩菜に関わるようになると、詩菜は少しずつ成長し始めた。


言葉もちらほら出るようになる。


俺達の世界では、言葉なんて本当は、必要ない。

だが、地球に関わる以上は、わざわざ

言語を使うのだ。


勿論、面倒な時は、相手の感覚へと送り伝える。


言語は、主に日本語だと決められてもいる。


詩菜は『シリウス』とは、言い難いらしく、シリウスが

『シヴァ』と教えた事から、

「チバちゃま!」

と言えるようになった。


だが・・・

(『シリウス』が言えないんだぞ、、

『ウェルヴィン』なんて、、絶対に無理だろ?)


俺は、どう考えても無理な気がしていた。


だが、シリウスは、俺の名を言わせようとするわけで。。。


「ウェ・・・ん?、、?、、?」


とまぁ、こんな有り様だ・・・


詩菜は俺の元へとやって来ては

「ウェッ!、、」

と言っていた。


それが、なんだかちょっと、悔しい気持ちになる俺。



詩菜を抱っこし、

ちょっとずつ教える事に。

「ウェル、、言ってみろ。

ウェルだ!」


詩菜「ウェッ!、、ル?」


「ウェル!」


詩菜「ウェ・・ル?」


「そう!、、」

ちょっと、言えただけでも嬉しさがこみ上げる俺。


「ウェル!」

まずは、半分教える事に。


詩菜は中々言えないものの、少しずつ

発音は、、ややおかしいが、

言えるようになってきた。


そして、もう半分を教える

「ウェルヴィン!」


詩菜「ウェル!、、ウ、、?ン?」


何度も何度も・・・

繰り返し教えた。


詩菜「ウェル!、、、ウィーン!!」


まぁ、、いっか、、こんなのでも。。


俺が笑えば詩菜もニコニコだった。



そして、何度目かの挑戦!

「ウェル、ヴィン!」


詩菜「ウェル!、、ウィン!」


「ハハハ!、、、言えた!

言えた!、、言えた!」


詩菜「ウェル、ウィン!!」


俺は嬉しくて、嬉しくて、、

この子が、愛おしくてしかたなかった。


そして、思わず抱きしめては、、

詩菜に笑いかけた・・・・・



きっと、人々の父親ってもんは、

初めての我が子に「パパ!」

なんて言われるとこんな気持ちになるのかもしれない。


そう考える俺だった・・・・


これから、どんな時も一緒だ!

守ってやるからな!


詩菜・・・・



この時の俺は本当に未熟で、

自分の無力さに何度も苦しんだ。


自分の想いを成就できるまでには、

かなりの時間と多く試練が待ち構えていたのだ。


しかも、、その試練をややこしくも、

意地悪く作りあげたのが・・・・


他の誰でもない、

あのお父上様なのである・・・・




        おわり・・・・




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