第2話

 あらすじ!

 すごい実績ばっか持つ事務所に勧誘されし僕の彼女・柚木葵。代表取締役責任者・強豪こうごうたけしさんのお誘いを断る。結果、空気が絶対零度みたく冷ややかに。これから一体、どうなっちゃうんだ~?

――いや、ほんとにどうなるんだろう。社会的に抹殺されそうで怖い。





「聞こえませんでした? お断りさせていただきますと言ったんです」

「貴女はこの契約書の内容に目を通しましたか?」


 そう言って、強豪さんは机の上に置かれた一枚の契約書を片手に持ち、一部分を指さしている。

 俗に言う報酬――金銭関係のものだ。そこにはこう書かれている。


『月額報酬340万円、推定年俸4080万円~+出来高払いあり』


 確約された年収は4080万円。僕の生涯年収の三分の一を一年で稼げる金額だ。

 僕なら即契約してしまいそうだ。


「しかし、そこには小さくこう書いてあります。『5年契約、SNS更新は事務所のマネージャーが更新するものとし、活動内容は事務所で決めさせていただきます』と」


 これは好条件なんだろうか。僕はいまいちこういうものはわからないが、活動内容を事務所が決めるというのはいささかよろしくないものではと思う。

 どうやら気に入らないのは活動内容を縛られることらしく、先ほどよりも一段と強豪さんに対する葵の言葉の覇気のようななにかが強くなった気がする。


「私の活動理念は『趣味の範疇で』が第一事項です。好きなことを好きなように、面白くやる。芸能活動は二の次です。活動理念をまげて続けるくらいなら歌手辞めます」

「クッ……」


 少しばかり強豪さんの顔が歪み、眉あたりに青筋が浮かんでいるのが少しだけ確認できる。

 潮時なのかどうか僕にはわからないが、おそらく僕が何を言っているのかさっぱり理解していない間にも葵と強豪さんの心理戦が繰り広げていたのだろう。


「……今回は参りました。しかし、次こそは契約させて見せます。そこの幼馴染君を使ってでも、ね」


 今度は僕に標的が向いた。強豪さんの後ろにライオンが見える。

 しかし、肩にやわらかい感覚がしたかと思えば、僕の頭の上から葵の声がした。


「私の幼馴染を誘拐でもしようものなら容赦しませんよ」

「はは、そう怒らずに。ほんの冗談ですから」


 冗談にしては僕を見る目が笑っていなかった。これが蛇ににらまれたカエル状態のことをいうのか。そう一人で現実逃避のために考え事をしていると、葵に声をかけられる。

 

「じゃ、行こうか。失礼しました」

「それでは僕も、失礼しましたー」


 最後、強豪さんが僕に何た言いたげだったけど、それは申し訳ないと思いつつ無視することにした。





 都内某区、ファミレス店にて。

 僕と葵はそこの窓際席で食事をとっていた。


「なんなのあの強豪ってやつ。ほんと意味わかんない!」

「落ち着け葵。ここは公共の場だぞ」


 葵がぶどうジュースの入っていたガラスのコップをダン!という擬音が聞こえてくる勢い叩きつけた。音が大きかったため、周りの目線も集めてしまっている。


「あちゃー……すいません」


 葵が頭を軽く下げた。周りのお客さんもそれを見るやすぐに同席の人と話し始めた。


「ま、早く帰ろう。朝10時に話し合いを始めてからもう15時だけど」

「そうだな。早めに食べ終えて家に帰ってスラブラやるか」


 そう言い、お互い目の前にある料理を平らげていった。

 





 お疲れ様です。しらたきこんにゃくです。

 次は日常回です。きっと(まだ0文字)。

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