講義③ アート

 本日は3回目の講義。そろそろ皆さんも、この講義スタイルに慣れてきたのではないでしょうか。今回の講義は、アートに関する装飾美学論になります。


 ですが、アートって言われてもピンと来ませんよね。それも無理はありません。アートという言葉自体、抽象的な概念だからです。では、アートの中には何が含まれているのか。皆さんは考えた事がありますか?絵画や彫刻という回答。もちろん正解ですが、何もアートというのは形として存在し続けるものに限定されません。映画や演劇といったその場限りの作品もまたアートと言えるのです。


 では、また質問をします。多様なアートに共通する装飾は何でしょうか?考え込んでいる方が何人もいますね。ですが、どのアートも目を通して楽しむことが出来ると思います。つまり、各アートの共通点は視覚的要素に当たる、色や光なんです。


 意外な答えだったでしょうか。もちろん、この中の一部の方々は意外だと感じているかもしれません。しかし、皆さんの知っているアートを例に思い出してみてください。どんなアートも、光や色が視覚的な装飾として、作品の世界観を演出し、価値を高めるのに役立っているのではないでしょうか。


 なら光や色は、どんな装飾的効果を具体的に果たしているの?そんな疑問が、どこかから聞こえてきそうです。そこで、幾つか例を挙げて説明しますね。


 まずアートの代表、絵画。これはどうでしょう。多くの場合、光が暗めの視覚的装飾を保つことで、作品全体を際立たせ、上品さを醸し出すのに成功しています。また色という側面に関しても、ほんの一部にアクセントカラーを加えることで、見せたい箇所に視線を誘導するといった芸術的工夫が、少なからず見受けられます。


 次に演劇ですが、演劇は光や色が特殊な役割を担っていますよ。それを一言でまとめるなら感情表現となります。事実、演劇では光の当て方で、出てくる登場キャラの感情の浮き沈みを表現するケースも存在しますね。さらに演劇においては、クライマックスを迎える際、多様な色が使われたり、色の変化が激しくなったりします。その意図は様々ありますが、見ている側を飽きさせずに楽しませる目的も、当然ながら狙いとしてあると言っても、言い過ぎではありません。


 これらの例から、光や色はアートの芸術性に大きく貢献していることが分かります。ですが、アートにおける装飾はそれ以外にも挙げられますね。絵画でいえば額縁、映画や演劇でいえば観客席、彫刻でいえば土台と言ったところでしょうか。これらはもちろん、絶対に必要かと言われれば、答えはノーです。しかし、視覚的な装飾でブランド化した作品を味わった。そんな満足感を得てもらいたいとするなら、やはり結果的には取り入れた方が賢明なのではないかと私は思います。


 長くなりましたが、装飾美学論におけるアートの講義はこれで終わりです。次回は、また別のテーマから装飾の美学を論じるので、楽しみにしててください。ありがとうございました。

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