講義① フードメニュー

 それでは、まず最初となる講義内容を発表します。それはフードメニュー。皆さんもご存じの通り、フードメニューは屋台や、飲食店、あるいはスーパーなど、様々な場所で提供されています。もちろん、家で食べる料理もフードメニューですよ。ですが、ここでひとつ考えてみてください。私たちはなぜ、フードメニューに装飾を加えるのでしょう。ただ食べるだけのフードメニューであるなら、装飾なんてせずに、すぐにでも口にした方が、時間的には効率が良いですよね。


 彩りのためでしょうか。もしそうなら、調理する段階で入れる食材を工夫すれば、彩りのための装飾は必要ありません。では、味に変化を加えるためでしょうか。少し違います。味に変化を加えたいのなら、装飾として飾るより、調理の過程で隠し味的なものを混ぜれば、充分に味の変化を演出させられます。じゃあ正解は?そう思いますよね。


 正解は、食事に特別感を与えるためです。納得できましたか?頷いている方も、そうでない方も見受けられますね。それじゃ、ちょっと思い出してください。皆さんの想像するバースデーケーキには、何が立てられていますか?ロウソクですね。お子様ランチは?そうです!旗です。旗が立っています。このように、食事を単なる消費と考えない場合、フードメニューには必ず、装飾が使われます。


 しかし皆さん、こんな疑問も湧いてきませんか。胃に入れば同じなのに、フードメニューに特別感なんているの?確かに、どんなフードメニューも口にすれば、消化されて終わりです。ですが、だからこそ、装飾のあるフードメニューに価値が生まれます。その価値とは一体、何でしょう。


 はい、非日常的な体験です。そうですね。分かりやすいように、バースデーケーキを例にしましょう。皆さんの誕生日は、年に1回。そしてその日が来た時、親しい人や家族から、誕生日ケーキを貰ったらどう思いますか?嬉しいですよね。アレルギーがあったり、甘いものが嫌いであったりしない限り、多くの方が喜びを感じると思います。逆に、毎日同じようなケーキを貰う日々を想像してください。嫌ですよね。おそらく半分以上の方が、拒否反応を示すはずです。そしてそれが、特別感の正体なんです。


 つまり、食べる以外の目的があること。その目的が、普段の食事では表現できないものであること。この2つ。この2つが重要なんです!誕生日会、結婚式、記念祝い……。どれも毎日、毎週のように訪れるものではありませんね。従って多くの方は、大事な日を思い出として記憶に残そうとします。そのための工夫。そのひとつが装飾。皆さん、理解できましたでしょうか。


 出来た方から、退出していただいて結構です。何か質問がある方は、この後、私のところまで遠慮なく来てください。本日は、ご清聴ありがとうございました。

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