第75話
そのまま、ヴァリドー領内にあるダンジョン五つすべての攻略を終えてきた。
あとは、新しいダンジョンが見つかってから調査を行って、当たりかハズレかを判断するだけだ。
調査に関しては、冒険者ギルドに依頼を出し、冒険者たちに行ってもらう予定だ。
内部で発見できる魔物、ドロップアイテム、最下層が調べられるなら調べてもらう予定だ。
あとはこれで当たりを引くまでダンジョン攻略をしていくだけになる。
……少なくとも、ボスモンスターを攻略した時に獲得できる魔石がかなりの燃料になるため、赤字になるということはないだろうがゲームのようにセーブ&ロードによる厳選はできないのがネックだ。
目的のスキルや装備ドロップが狙えるまで、どれだけ時間がかかるか分からない。
まあ、さすがにゲームのときのように最適のダンジョンを引くつもりはなく、妥協ラインはいくつか設定してあるのでそこまで時間もかからないとは思うが。
ひとまず、ダンジョンに関してはこの調子でやっていけばいいだろう。
……ただ、ギルドリーダーから聞いた話を思い出す。
フェアリー族が制作した魔道具だ。
あれがあれば、毎回ギルドリーダーが出てこなくてもよくなるだろう。
それこそ、他の街のギルドとやっているようにデータだけのやり取りも可能なはずだ。
ギルドで管理しているデータは他にも色々とあるだろうし、時間短縮になるはずだ。
……問題は、それらを管理官たちが受け入れてくれるかどうかだな。
ギルドが利用していることから、平民の人たちは別に気にしないのかもしれないが、どうだろうな。
彼らが働いている部屋へと向かい、早速問いかけてみた。
「少し確認したいんだが、ギルドにあるデータを管理している魔道具は知っているか?」
「ええ、知っていますが……どうしたんですか?」
少し警戒した様子で問いかけてくる。周りの管理官たちもなんだか緊張した様子でこちらを見てきている。
フェアリー族が関係していると、神経質になるのだろうか?
「あれは、かなり便利だと思ってな」
俺の言葉に、皆が意外そうに目を丸くしていた。
……緊張していたのは、そういう理由か。俺がどのような反応を示すか分からなかったからだろう。
とりあえず、全員の様子を見てみても嫌がっている風には見えないな。
「もしも、それを導入して、領地運営のために使えるとしたら……皆はどうだ?」
俺としても、この質問にどのように返してくれるかは心配だった。
フェアリー族の魔道具を嫌がる可能性もあるわけなのだが、管理官たちは顔を見合わせる。
「私は……賛成です。私、昔はギルドなどでも働いていたことがあって……使い方は分かりますし」
「便利、とは聞いたことあります。使ったことはないのですが……」
皆、嫌がっている様子はないな。
使ったことがない人もいるが、それでも便利なことは知っているようだ。
もしかしたら、陰でそういった話をしていたのかもしれない。
これがもしも導入できるとなれば、皆の仕事時間も減るかもしれない。
今でもわりと皆帰りが遅いからな。これが定時帰りになれば、彼らの家族たちも喜ぶ……か?
亭主元気で留守がいい、とはいうが……まあ大丈夫だろう。
家族仲までは分からないが、彼らの自由時間が増えることはいいことだろう。
別に、彼らの仕事に残業代という概念もない。働きまくれば働いただけ稼げるわけではないので、時間の短縮になればいいだろう。
「それなら、フェアリー族と話をしてみるとするか」
「フェアリー族……ですか」
「何かあるのか?」
「……彼女らは、昔貴族に営業をかけたことがありまして……その際に断られたので嫌がるかもしれません。特に……フェアリー族は昔ヴァリドールで暮らしていたのですが、ルーブル様……ルーブルが街から追い出してしまったので」
……うわー、まじか。
親父たちは何をしているのやら。
「なるほど、な。そうなると俺一人でいくよりは間を取り持つ人間が必要か」
「できれば、そうですね」
俺が直接交渉しに行ってもいいが、可能性をあげるためにも誰か親しい人に相談するべきかもしれない。
「ギルドリーダーに話してみるとするか」
そう思った俺は、早速空間魔法を展開し、ギルドへと向かった。
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