第76話

 いきなりギルドリーダーに会いに行ったのだが、向こうは面会をしてくれた。


「いきなりきて悪かったな」

「いえ……もしかしてダンジョンのことでしょうか? それでしたら現在冒険者たちが調査を進めていますがまだ報告できるほどではないですね……」


 申し訳なさそうに頭を下げてくる。

 今はギルド長に調査の依頼をだしていたし、その方面で気にかけてしまったか。


「いや、それは別に大丈夫だ。急ぎの用事でもないしな」

「ではなんでしょうか?」

「この前きた時に話してくれただろう? フェアリー族の魔道具を屋敷にもいくつか導入したいと思っている。だから、フェアリー族との仲を持ってくれる人がいないかと思ってな」

「そういうこと、でしたか」

「ああ、いきなりこんなお願いをしにきてしまったが、どうだ? 心当たりはいないか?」


 ギルドリーダーはしばらく考えるように顎に手をやる。


「少し待ってもらってもいいでしょうか?」

「ああ、大丈夫だ」


 ギルドリーダーはそう言ってから頭を下げ、魔道具の方へと向かう。

 俺もこそこそとその後をついていき、魔道具について見せてもらう。

 ……やはりパソコンと似たような造りだよな。

 マウスのようなものを操作し、今は過去に受けた依頼などの情報を確認しているところだった。

 パソコンといっても、結構スペックも高そうに見える。

 ぬるぬると過去の情報一覧が出てくるあたり、俺の前世の会社で使っていたポンコツパソコンよりはずっといいだろうなぁ。


 フェアリー族とうまく連携できれば、今後色々とできそうだなと思っていると、ギルドリーダーがこちらをみてきた。


「やはり、そうでした。以前、ギルドで対応できない依頼について、相談したと思いますが覚えていますか?」

「ここ最近のものか?」

「はい、そうです。南のフェアリー族の森近くの依頼です」

「……そういえば、あったな……ザンゲルに任せて、ザンゲルから誰かに依頼をお願いした案件、だったな?」

「その依頼を受けたのが、イナーシアさんたちの部隊で、報告書にはイナーシアさんたちがフェアリーたちと交流をとったらしいのです。詳細までは分かりませんが、イナーシアさんが適任かもしれません」

「イナーシア、か」


 以外な名前が出てきたな。

 そういえば、原作でもイナーシアってわりとフェアリー族によくからかわれていたようなシーンがあったよな。

 拠点に配置すると、フェアリー族とイナーシアはなぜか相性が良かったような。

 生まれながらに好かれる何かを持っているのかもしれない。


「はい。我々もたまにメンテナンスなどはしてもらっていますが、そこまで大きく交流があるわけではありません。もちろん、紹介をすることはできると思いますが、ここ最近でフェアリー族を助けているイナーシアさんの方がいいかもしれませんよ」

「確かにそうだな。一度イナーシアに聞いてみるとしようか。いきなり来たのに対応してくれてありがとな」

「いえ、お気になさらず」


 笑顔とともにすっと頭を下げてくる。

 俺も感謝を伝えつつ、空間魔法で屋敷へと戻る。

 それから、使用人を探し、イナーシアの居場所について訊ねる。


 どうやら今は魔物部隊のところにいるとのこと。

 アリアナとミーシーの様子を見に行っているのかもしれない。

 アリアナ、ミーシーたちは魔物部隊のお世話を任せているからな。

 牧場をイメージして作られたそこには、木材の柵があり、その中にはハイウルフたちが自由に走り回っていた。


 ハイウルフたちの訓練をつけるため、ルーフとゲーリングがいる。

 まあ、結構しっかりやっているな。そんな柵の中では、アリアナ、ミーシーがハイウルフたちを撫でている。

 ハイウルフたちはとてもアリアナたちに懐いているようだ。……今、この屋敷内でもっとも戦力を有しているのは彼女たちかもしれないな。

 アリアナたちが屋敷襲撃の指示を出したらと思うと恐ろしいことになりそうだ。


 そんなことを考えていると、アリアナとミーシーがこちらに気づいてぱっと花を咲かせるように笑った。


「あっ! レイス様!」

「遊びに来てくれたの!?」


 二人はまだまだ幼いこともあって、口調などは矯正していない。イナーシアがたびたび注意しているが、俺は別にそこまで徹底させてはいなかった。

 二人が笑顔とともに駆け寄ってきて、それに合わせてハイウルフたちもゾロゾロとやってくる。




―――――――――――

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