第27話


「ついこの前もきたけど、そんなに頻繁に来て大丈夫なのか?」


 今までは月に一度程度だったが、最近のリームは週に一度程度はくるようになっていた。

 まあ、転移石もあるので移動自体はかなり楽なんだろうけど、それでもそこまで多くきてもいいのだろうか?

 俺がそう問いかけると、リームは少し頬を膨らませる。


「会いに来ては行けませんか?」

「いや、別にそういうわけじゃないがな」


 ただ、どうしてそれほど会いにくるのかは疑問だった。


「レイス様は社交場には行けないでしょう? 私はいつもそういった場で誰ともいられず寂しいのですから」


 すでに世の多くの貴族には俺とリームの婚約関係は知れ渡っている。

 そういう女性は、社交場にて他の貴族と交流をすることはあっても、異性とともに動くことはない。

 そもそも、基本的にパートナーや婚約者などと一緒に行動するそうだ。


 ちなみに、社交会、晩餐会、舞踏会……名前を変えながら似たような会が毎週のように行われている。

 これも転移石のおかげで、だいたい王都にある大きな建物が会場になっているらしい。

 先ほどリームが話したように俺が参加することはほぼない。


 理由はシンデレラみたいなもん。家族が後で俺に自慢話をするための意地悪だ。

 家族がここまでレイスくんを虐めるのは、不遇な空間魔法持ちだと発覚したときに散々に周りの貴族たちから馬鹿にされたかららしいので、その腹いせのつもりのようだ。

 まったくもってそういったものに興味ないので、俺としてはまったく意地悪になっていないし、参加できないおかげで訓練する時間が取れていていいことづくめなんだけど、リームは少し寂しい思いをしてくれているらしい。


 初めて会った時ならそんな意見絶対出なかっただろう。

 評価が多少は上がってくれたようで、嬉しい限りだ。


「寂しい思いをさせているのは……悪いな。でも、どっちにしろそういった場は苦手だし、楽しませられるとも思えないが」

「……一緒に、いるだけで楽しいものなのです。それに一緒にダンスとかも踊りたいですし」


 別にここで一緒にいるんだからいいのでは? と思ってしまうのだが、その言葉をそのままリームに伝えればまた頬を膨らませるだろう。

 それにしても、随分とお世辞を楽しく話せるようになったものだ。


 今のリームなら、どこに営業を出しても大丈夫そうだな。

 前世の社畜だったことを僅かに思い出しつつ、俺はリームに笑顔を向ける。


「まあ、俺もリームと一緒に参加したい気持ちはあるけど、家族が厳しいからな」

「……そうですよね」


 しゅん、としてしまったリームに俺は苦笑とともに立ち上がる。


「それでも、いつかは参加するときもくるかもしれないからな。その時に恥ずかしくないように、ダンスを教えてくれないか?」

「今ここでですか?」

「ああ」

「任せてください」


 俺がそういうと、リームは嬉しそうに席を立った。

 さっきも踊りたい、と言っていたしここでくらいは一緒にやってあげたほうがいいだろう。



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