第26話


 悪逆の森へと移動した俺は、早速第三層へと移動する。

 ここからは、魔物の種類が変わってくる。この第三層に出現するのはウルフ系の魔物だ。

 ハイウルフ、ウルフビースト、ヘルバウンド。

 この三種類が出現する。ハイウルフとは、以前対面したことがあるな。

 あの時と違って、今度はイカサマしなくても戦えるようにはなっているはずだ。


 まずは一番弱いハイウルフを探して森を移動する。

 ……いたいた。

 ハイウルフを発見した俺は、早速短剣を握る。


 今日から使うのはグラディウスとミスリルナイフの二本だ。

 ミスリルナイフを握りしめると、体が軽くなるような感覚が生まれる。

 何かしらのスキルがついているんだろうな。調べる手段はないが。

 ……さて、やるとするか。


 俺は早速、ハイウルフへと先制攻撃を仕掛ける。

 空間魔法を使用した一撃だ。

 俺の手元とハイウルフの近くに空間魔法を展開し、短剣を振り抜く。


 遠距離近接攻撃という矛盾した一撃。短剣を移動させる程度なら、魔力もそう消費しないので先制攻撃としてこれは便利なのだが、俺の魔力に反応してハイウルフは飛び退いてかわした。

 ……完全に不意打ちだったのだが、まさかこんなあっさりかわされるなんて。

 まだ木の陰に隠れていたにも関わらず、ハイウルフは俺にもう気づいていて、突っ込んできている。


 仕方ない。正面からやり合おうか。

 俺は両手に短剣を構え、迎え撃つ準備を整える。


「ガアアアア!」


 ハイウルフの威嚇するような咆哮が響き渡り、周囲の木々が揺れる。

 巨大な体躯が迫ってくる。俺は冷静に、集中力を高めながらハイウルフの動きを見切る。


 ハイウルフが飛びかかってきた。ギリギリまで引きつけてから、俺は攻撃をかわす。

 同時に短剣を振り抜く。

 ハイウルフは俊敏に身をかわし、俺の攻撃を避けるが、俺はさらに加速し攻撃を叩き込む。


 すっと、ハイウルフの横腹を俺の短剣が切り裂く。

 ……ミスリルナイフ。やはり、かなりのモンだな。


 武器に満足してばかりもいられない。ハイウルフはすぐ鋭い爪や牙で攻撃してくる。

 回避し、反撃を行う。集中力さえ切らさなければ、俺のほうがすべての能力が上回っている。

 確実にハイウルフの傷を増やしていき、その動きが鈍ったところで俺は空間魔法と短剣を合わせた一撃を放った。

 反応してかわそうとしたハイウルフだったが、踏ん張った足に力が入らなかったようで今度はかわしきれなかった。


 その首を切り落とすと、霧のように死体は消えていった。

 後に残った素材を回収した俺は、一息をついた。


 ……武器のおかげもあって、第三層もなんとかなりそうだな。

 ひとまず、しばらく第三層で鍛えていって……それから第五層に向かおうか。


 セーブ&ロードができないため、かなり安全牌を踏んできたが……もう大丈夫だろう。

 第五層には恐らく手付かずの宝箱がいくつかあるだろうからな。

 そこから、装備品を漁れば……今の俺が用意できる装備もかなり整うはずだ。

 そのためにも、さっさと第三層で鍛えないとな。




 第三層で鍛えるのと、特殊モンスター狩りを並行して、装備品を集め、武器庫にしまっていく。

 もちろん、息抜きの日もある。

 体を鍛える上では、休養も大切だからな。

 何もしない時間も大切なのだが、それはいつもリームの相手をする時に決めている。


「お久しぶりです、レイス様」

「ああ、久しぶりだ」


 にこりと微笑むリームは、初めの頃とは比較にならないほど笑顔が自然だ。

 彼女も大人に近付いているわけで、それだけ営業スマイルが上手になっているのかもしれない。

 成長しているのは何も俺だけじゃないってことだ。


 大人になるって嫌だねぇ。

 そんなことを考えながら、俺はリームを出迎える。





―――――――――――

宣伝

別作品「妹の迷宮配信を手伝っていた俺が、うっかりSランクモンスター相手に無双した結果がこちらです」が書籍化します!

https://kakuyomu.jp/works/16817330658744103065

こちらの作品です!もしも読んでみて気になったという方は予約、購入していただけると嬉しいです!


ここまで読んでくださり、ありがとうございます!


楽しかった! 続きが気になる! という方は☆☆☆やブクマをしていただけると嬉しいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る