第21話



 依頼の場所は、ガルナ廃坑と呼ばれている。

 悪逆の森第二層を攻略できる今の俺なら、恐れるような魔物はいない。


 早速、ダンジョン内部を調査していく。

 廃坑内はいくつかの道があるのだが、俺の脳内には完璧な地図がある。

 宝箱はまだ残っているのだろうか……? 興味本位で見てみると、すべて残っているな。


 とりあえず、適当に回収しつつ先に進む。……といっても、特別いいアイテムはないんだけど。

 この世界の宝箱は魔物のように自然に発生することがあるらしい。入手するとしばらくは消滅して、またいずれ再出現するのだとか。


 これを、神様の恵み、と呼んでいるらしい。


 宝箱を回収しながらボス部屋へと繋がる最後の道を抜けると、そこは円形の広場だった。

 まるでボス戦がここでありますよ、とばかりの造りだ。

 実際、ここにボスモンスターが出現するわけで、嫌な気配に顔を向けると、天井から一体の魔物がふってきた。

 不意打ちの先制攻撃をかわすと、そいつは苛立ったように声を荒らげる。


「キシャアアア!」


 落ちてきたのは巨大なクモのようなボスモンスター、スパイダーソードだ。


 そのモンスターは、細長い脚が不気味に広がり、その先は鋭利に尖っている。

 見た目はクモのような魔物だが、こいつの武器は系よりもその足だ。


 その鋭い足先をナイフのように扱って攻撃してくる。

 スパイダーソードは跳躍すると、重力とともに鋭い足先を突き出してきた。


 こいつ自体は、他の魔物よりも強い。

 とはいえ、俺にとっては格下だ。

 連続で襲いかかる攻撃をすべてかわし、俺は持っていた両手の短剣を振るう。

 スパイダーソードの足元、関節部分を切り付けると僅かに体が沈む。


 バランスを崩したスパイダーソードは態勢を戻そうとするが、追撃でナイフを振り抜く。

 スパイダーソードの顔面へと振り抜くと、痛みから逃れるように、大きくのけぞった。


 俺がさらに斬りつけようとすると、スパイダーソードは逃げるように跳躍する。

 天井付近にまで移動したスパイダーソードは、その口元をもごもごと動かす。

 糸を吐いてくるつもりだ。


 もちろん俺としては正面から受けるつもりはない。

 空間魔法を俺の体全面に展開すると、スパイダーソードが口から糸を吐いてくる。

 真っ直ぐに襲いかかってきた糸は凄まじい速度だ。

 あれは地面に穴を開けるくらいには威力も頑丈さがある。


 そんなスパイダーソードの一撃に空間魔法をあてる。

 真っ直ぐに伸びてきた系は、俺の空間魔法を貫き、そして――スパイダーソードの体を貫いた。


「ギィ!?」


 この魔法の使い方は便利だな。

 生物を転移させると魔力を多く消費するが、魔法などの遠距離攻撃を転移させるぶんには大して消費もない。


 だから、先ほどのように敵の攻撃を利用するときはめちゃくちゃ便利だ。

 スパイダーソードは天井に張り付く力を維持できず、落下してくる。

 衝撃が地面を揺らしたが、俺は即座に地面を蹴って短剣を構える。


 かなり弱ったスパイダーソードが体を起こそうとするが、それより先に俺は短剣を振り抜いた。


「ぎ、ィ……」


 スパイダーソードの首を切り落とすと、その体が霧のように消滅し、あとには素材だけが残った。

 空間魔法でドロップアイテムを回収する。

 スパイダーソードの素材とともに入手したのは、一つの鉱石。


 このクエストで手に入るミスリル鉱石だ。これを探し求めている鍛冶師がいるため、この依頼を達成したことが知れ渡ればいずれ向こうから接触してくるだろう。

 ミスリル鉱石自体は終盤に入ればいくらでも手に入るのだが、現段階ではまだ入手不可能だ。

 第一、ミスリル鉱石を採掘するにはそれ専用の魔法を持っている人間を用意する必要があり、その魔法の練度も高くなければいけないからな。


「そんじゃま、戻るとするか」


 空間魔法を発動し、俺は街の転移石まで移動した。


 あまり人前で転移魔法を使いたくはないが、転移石の移動したときと俺の空間魔法による移動は見た目が同じなので、場所を選べば問題ない。

 

 ギルドに直接行きたいところだが、それはさすがに目立ってしまうからな。

 俺は依頼達成の報告をするため、スパイダーソードの素材を持ってギルドへ向かった。




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