第17話




 転移石で戻ってきた俺は屋敷で、開かずの扉についての報告書を作成し、家族に提出しておいた。


「……ふん、何も分からないとは相変わらずおまえは能無しだな」


 父からのムカつく言葉に苛立ちつつも、今回手に入れたアイテムに関しては俺のものにしたいため、適当に頭を下げつつ部屋へと戻った。


 さて――やるとするか。

 部屋に戻った俺は、鍵をかけてから空間魔法を発動する。

 そして、俺の部屋と、悪逆の森とを接続した穴を潜った。

 ……よし、無事移動完了。


 俺はすぐに先ほど獲得した装備を空間魔法を使って即座に身につける。

 今身につけている服の上からすっと重ねるように装備を完了する。

 これは便利だな。ゲームなどの着せ替えのように簡単にできる。


 装備品の効果がしっかりと反映されているかは……たぶん大丈夫かな?

 いつもよりも体も動きやすく感じる。指輪とかだって、身につけていれば効果は出ているしな。


 より姿を隠すため、フードをかぶってから目指すは第二層だ。


 悪逆の森は初めて訪れた時に、第五層まで行けてしまい、運がいいと魔物と遭遇することなく奥の層にまで行けてしまい、そこで初めて戦闘を行ってあっさり全滅……なんてこともよくあるダンジョンだ。


 俺も、初めてプレイした時は新しいマップにワクワクしていたが魔物と遭遇することなく第三層くらいまでいってしまい、そこで強い魔物に襲われて全滅したが……今は特に恐れることはない。


 第二層に到着した俺は早速魔物を探していく。

 魔力を周囲に使用しての索敵を行い、一体で行動している魔物を探す。

 まずはハイオークからだな。

 第二層にも、三種類の魔物が出現するが、その中でもハイオークがもっとも弱い。


 ……三体で行動している奴がいるな。

 こいつは恐らくウルトラゴブリンだ。集団で行動していることが多いため、今の俺はまだ戦いたくない相手だ。

 そうして、しばらくあちこち移動していくと……ハイオークを見つけた。


 見た目は、大きくがっしりとした体躯で、肌も鱗のように頑丈そうだ。

 尖った耳と豚のような鼻をひくひくと動かし、周囲の警戒を行っている。

 動物の皮を剥いで作ったような腰巻きのみを身につけた大胆な格好のハイオークを見ながら、俺は呼吸を整える。


 ……さて、どこまで通用するか。

 装備品も整えたし、大丈夫だとは思うが……緊張するな。


 空間魔法は、この戦闘では使う予定はない。

 逃走用のためになるべく残しておきたいからな。

 魔力自体は時間が経てば自然に回復するし、先ほどの宝物庫で入手した魔力回復用ポーションもあるのでいざとなれば何とかなるが、こんな通常の戦闘で使う予定はない。


 俺はこれまでに使用していた短剣と、先ほど入手したグラディウスの両方を握りしめ、一気にハイオークへと迫る。


「ガッ!?」


 俺の攻撃が届くほどの距離まで接近したところで、ハイオークが気づいた。

 ……ここまで気づかれなかったのは、先ほど入手した装備品のおかげだろう。

 まずは、俺の先制攻撃だ。


 ハイオークは驚きの表情を浮かべながらも、持っていた棍棒を振り抜いてきた。

 正面からやり合うつもりはない。ハイオークの攻撃をかわしながら、その脇腹を切り裂く。

 ……やっぱ、グラディウスの切れ味は凄まじいな。


 中盤から終盤はじめくらいまではこの武器でいける、というほどの性能だからな。

 俺は速度を生かした身のこなしでハイオークの攻撃をかわしつつ、連続の斬撃を仕掛ける。


「ぐ……オォォォっ!」


 ハイオークは雄叫びをあげ、怒りに任せて棍棒を振り回してくる。

 あまりにも適当に振り回してくるものだから、近づくと巻き込まれそうだ。

 接近する素振りを見せながら、ハイオークの呼吸が乱れるのをまつ。

 そして、その瞬間がきたところで一気に飛び込む。



―――――――――――

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