第16話
今回の仕事に関しては、兵士たちに依頼されたものだが……その話を聞きつけて俺も行きたいと話し、同行することになった。
普段から兵士と仲良くしておいて良かったぜ。
鍵を開け、扉の前に立つ。その扉には、番号式の鍵がつけられている。
「なんか、最近こういった地下倉庫があちこちで見つかってるらしいですよ。過去の人が作ったものみたいですけど、開け方が分からないんですよね」
そう語る兵士に、俺は軽く相槌を打っていた。
扉はファンタジーな作りではあるが、鍵の見た目は自転車の番号式の鍵に近い。
ここには八桁の番号を入力する必要があるのだが、まだ開けられている様子はない。
国が人海戦術を使えば開けられないことはないだろうけど、そこまでする価値を国は見出していないだろう。
このゲームには、こういった隠し宝物庫があちこちにあるのだが、この村の宝物庫以外はそこまで有用なアイテムはない。
というのも、この宝物庫で手に入るアイテムは、なぜか行ける段階から数段上の装備品が入っているからだ。
つまり、今の俺にも最高の武器となる。
RTAなどを行う人たちは、必ずここを利用するチャートを組んでいる人がほとんどだ。
とはいえ、行けるようになった段階でこの村にくる場合、周囲の魔物がまだ適正レベルではないため、セーブ&ロードを覚悟しないといけないのだが。
ゲーム知識と今の立場があるからこその裏技だな。
とりあえず、あとで何か言われても嫌なのでここの調査は俺一人で行いたい。
護衛兼見張りとしてついてきていた兵士二名に俺は声をかける。
「俺はしばらくここを調査してみるから、二人は誰も入ってこないよう入口についていてくれ」
「分かりました」
兵士たちは特に疑うことなく、俺の言葉に従ってくれる。
まあ、開かずの扉と言われているのだから何も起きるとは思っていないだろう。
俺は早速、番号を入力する。92103142……だったな。
開いてくれ……っ、と願っていると、カチャンという音が響いた。
よしっ。ゲームの知識通りだな。
扉を軽く押してみると、問題なく開いた。
中へと入ると、宝箱が五つ並んでいる。
もちろん、すべて回収だ。この宝箱のうち、今回用事があるのは二つなのだが、せっかくだから全部もらっていく。
最初に開けた三つは、魔力を回復するポーションなどだ。
残っていた最後の二つ。そこには装備品が入っている。
長い外套のような衣装だ。暗殺者装備と言われているもので、装備者が攻撃を受けにくくなるという効果がある……らしい。別にスキルとかがついているわけではなく、そういう装備説明があるだけだ。
全身黒のそのフード付きの装備を身につける。
……この世界の装備品は特殊な加工がされているそうで、装備者の体格にぴったりとフィットする。
これは便利だ。
そして、次は最後の宝箱を開ける。
中に入っていたのは短剣だ。
俺がこれまで短剣を使って戦闘をしていたのは、ゲーム知識で手に入る優秀な装備が短剣に多いからだ。
今回手に入れたこのグラディウスもそうだ。
外套と短剣。欲しい装備品はこれくらいだ。
すべて回収した俺は、アイテムを持ち出したことがバレないよう、空間魔法に収納してから扉の外に出た。
もちろん、扉はきちんとしめて番号は出鱈目なものに変えておく。
扉は閉まらない。これで、誰が盗んだかは分からないだろう。
まあ、別にゲームでも開けられた人のものだから、って感じだったが変ないちゃもんはつけられたくないからな。
外で待っていた兵士たちと合流した俺は、村長のもとに戻り、疲れたような演技をしておく。
「やっぱり開かないな。扉の番号を調べるしかないが……何か心当たりはないのか?」
「いえ……まったく。村の地下のことですが、かなり古いものでして……今村にいる人たちでは何も情報はありませんでした……」
「そうなると、過去の人たちのものだろう。とりあえず、ダンジョンや魔物といった嫌な気配は感じない。また何かわかったら報告してくれ。こちらも、屋敷で改めて調べて何かわかれば報告する」
「はい、ありがとうございます」
俺の言葉でどこまで安心してくれるかは分からないが、実際危険はないからな。
村の人たちには、これからも安心して暮らしてほしいものだ。
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