第15話


 俺としては、隠し事をされるよりも話してもらったほうが助かるからな。

 ゲーリングは少し息を吐いてから、空を見上げるようにして語り出す。


「私の家は、代々ヴァリドー家に仕えてきました」

「そうなのか?」


 ゲームでそのようなキャラクターはいただろうか?

 ……あー、でもモブからそんな会話が聞けたかもしれない。


「はい。いつも、父からは言われていました。……かつてのヴァリドー家は、武の家として有名でした。国内でも屈指の実力をもち、この国を悪逆の森の侵略から防いできた、と。私たちは、そんな将来国を守るための子を育てる光栄な仕事をしている、と」


 ……かつての、ね。

 ヴァリドー家は確かに優秀な一族だったらしい。

 だが、今の俺の両親の代から一気に廃れ、そしてその腐敗っぷりは受け継がれようとしている。


 まだ長男のライフに継がれてはいないが、引き継がれたあとで栄光のヴァリドー家に戻ることは期待できないだろう。

 ていうか、原作的にみて絶対無理。

 一代でここまでダメになったのは、ある意味才能に溢れているよな。


「ですが……その。……だから……あなたがもしも家を継いでくれれば、どれほど良かった……かと」


 ゲーリングのすがるような表情に、俺は苦笑するしかない。

 俺が家を継ぐ、というのは家族の誰にも利点がないのだからまずありえない話だ。

 あの家族が、俺に継がせるわけなんてないだろう。


「今の言葉は、聞かなかったことにしておこう」

「……そうですね……申し訳ございません」

「ああ、そうだな」


 ゲーリングが申し訳なさそうに頭を下げる。

 俺も頷き、それ以上の話はせずに屋敷へ向かう。

 ……ほんと、うちの家族たちは嫌われ者だな。

 ちょっとでもまともに行動している俺がすぐに期待されてしまうとは思ってもいなかった。


 ……ただ、少し思うことはある。

 家庭教師や兵士長、使用人や街の人たち。

 ヴァリドー家がここを去ることになったとしても、多くの人たちがこの街には残ることになる。


 ……その時のことを考えて、少し戦力を補強しておいてあげるというのもありかもしれない。

 ゲームでは、さまざまなキャラクターたちを自由にスカウトして、自分のお気に入りのパーティーを作ることができた。

 

 その中から、今すぐに仲間にできる人たちを調べて、集めていけば……恐らく、この街で暮らす人たちは安全に暮らせるだろう。


 とりあえず、色々と調べつつ、ここからは俺の強化含め、本格的にゲーム知識を活用していくとしようか。




 さまざまな街について調べていったところ、ゲーム知識で今すぐ、お手軽に装備を整える方法が見つかったので、早速やっていくつもりだ。


 今回使うゲーム知識は、パスワードについてだ。

 ゲームを進めていくと手に入るパスワードを、俺が記憶しているものを入力して突破して、中にある宝箱を入手しようという作戦だ。


 元はゲーム世界。仮に現実になったとしても、利用できる部分はあるはずだ。

 そして今の俺はレイスくんだ。その立場を利用すればゲームよりも自由に、色々な場所へいくことができる。


 俺が訪れたのは、とある村。

 ヴァリドー領内にある村だが、ヴァリドールからは遠い。

 とはいえ、俺も一度訪れたことがあるため、転移石を利用すればすぐだ。


 自分が訪れたことのある転移石の場所に、魔力を消費すれば移動できるという優れものだ。

 これがあるからこそ、俺の空間魔法が微妙な扱いをされているんだよな。

 あくまで一度訪れた場所であり、転移魔石がある場所にしか移動できないが、主要な村や都市にはだいたい存在するので、非常に便利だ。


 さて、ここからだ。

 俺は護衛の兵士とともに、村長の家へと向かう。


「レイス様……わざわざこんな村に来ていただいてありがとうございます」

「父の仕事の依頼でな……この村の地下倉庫に開かずの扉があると聞いているが」

「……ええ。ここ最近発見されたのですが、何やら怪しい場所があるのです」

「そこの調査をするように言われてな。様子を見てきてもいいか?」

「はい。どうぞ、こちらが地下倉庫に繋がる鍵になります」


 俺は村長から地下倉庫の鍵を受け取った!

 とまあ、ゲームならそんなテロップが出ているだろう。

 俺は兵士を連れ、村の地下へと向かう。




―――――――――――

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