第14話
そういえば、ゲームでもあったな。
ゲームをある程度進めると、全国の依頼を受けられるようになる。
その際に、だいたいいつも悪逆の森で緊急依頼が発生していたものだ。
ゲームのときはそういうイベント、程度にしか意識していなかったが、ヴァリドー家の能力の低さを考えればギルドに依頼が投げられる理由もよく分かるな。
悪逆の森が、基本的には安心なことも理解したことで俺は第一層の魔物たちと戦っていく。
ゴブリン、ハイゴブリン、オーク。
これが第一層で出現する主な魔物だ。一番強いのはオークだが、これもすでに俺は仕留められるようになっていた。
「……レイス様。まさか一人でオークを仕留めてしまうなんて」
「珍しいことなのか?」
「当然ですよ! もうそこらの冒険者なんて目じゃないほどの強さですよ!」
そうなんだな。
家庭教師だし、多少のお世辞はあるかもしれないが順調に成長できているのは確かだな。
この指輪たちもちゃんと効果を発揮してくれているんだろう。
その日もオークを数体仕留めて、俺たちは屋敷へと戻っていく。
帰り道。家庭教師がぽつりと言葉を漏らした。
「……これなら、そろそろ第二層に挑んでもいいかもしれません」
「そうか……?」
確か、第二層に出現する魔物はハイオーク、ウルトラゴブリン、ウルトラオーク、だったか。
装備品によるボーナスもあり、多少ステータスは盛られているだろうから、第二層でも通用する可能性はあるが……もう少し育ってからの方が安全ではある。
ただ、あまり時間の余裕があるわけでもない。第二層の魔物の方がゲーム的に言えば経験値効率はいいんだし、勝てるなら早めに挑戦した方がいいかもしれない。
「それじゃあ、試しに第二層にいってみるか」
そんな計画を立てていると、ゲーリングが慌てたような声をあげる。
「ま、待ってください! 申し訳ないのですが、私は第一層までの魔物を退ける程度の力しかありません。もしも、それより先にいく必要があれば、別の方を雇用したほうがいいかと思います……」
「……そうだったな」
兵士に護衛をお願いしてもいいが……兵士長くらいだよな。
その兵士長を俺の護衛に当ててしまうと、兵士たちの管理を別の人にお願いする必要が出てくる。
今、そちらの人材については兵士長に育成してもらっているが、まだまだ任せきりにするのは難しい。
全体的に、底上げはできているんだけどな。いかんせん、俺よりも熱心に訓練してくれている兵士は少ない。……まあ、給料も少ないんだから仕方ないっちゃ仕方ない。
せめて、努力に応じて変動するような給料体制ならいいが、今の状況なら努力しても無駄だしな……。
となると、護衛を個別に雇う必要があるわけだが……俺が自由に使えるお金も別にない。
あの家族が俺に金を使ってくれるわけもないしな。
第一層で集めた素材の魔石を売れば、一応お金にはなるが、大金とまではいかないだろう。
となると、ここからは安全圏での狩りはできないか。
ゲームなら、セーブ&ロードできるからお試しもしやすいんだけどなぁ。
「分かった。ここまで色々と教えてくれてありがとう」
俺がそういうと、ゲーリングは嬉しそうに微笑んだ。
「いえ、それが私の仕事ですから……」
「それでもだ。色々と教えてくれてありがとう」
「……いえ」
そこで言葉を区切ったゲーリングは、それから少し決心した様子でこちらを見てきた。
「一つだけ、無礼を承知で聞いてもよろしいでしょうか?」
緊張した様子で、彼が問いかけてきた。
「ん? なんだ?」
「……レイス様は最近変わられましたね。もちろん、いい意味でですよ」
「……そうだな」
それでも、無礼を承知なのは元のレイスくんの性格を知っているからだろう。
今のセリフは以前のレイスくんを否定するものなのだから、この問いを投げるのもかなりの勇気がいることだろう。
でもまあ、その問いかけをしてもらえる程度には変わったんだろうな。
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