第12話
今日も朝からゲーリングとともに訓練なので、屋敷内を歩いていると向かいから使用人がやってきた。
目が合うと、にこりという微笑とともに頭を下げられる。
「あっ、レイス様おはようございます」
「ああ、おはよう。今日は冷えるから体に気をつけてな」
「はい! レイス様、お気をつけて」
そんなやりとりをしながら庭に出た俺は、ゲーリングと合流する。
そのまま、空間魔法を発動し、俺たちは悪逆の森へと移動する。
最近は俺の魔力に余裕も出てきたので、こうして空間魔法で移動するようにしている。
森まで馬で移動していると、かなりの時間がかかるからな……。
「相変わらず、便利な魔法ですね」
「燃費は良くないけどな」
今は当たり前のように使えるようになったが、ゲーム知識なしで鍛えていたら今の魔力の半分以下だろう。
それだと、往復で空間魔法を使えるかどうかだろうし、そうなると使えない魔法だとバカにされる理由もよくわかる。
いつものようにゴブリンと戦闘を行なっていく。
最近は空間魔法を一切使わず、複数のゴブリンを相手にできるようになっていた。
ゴブリンたちを葬り去っていくと、ゲーリングがにこりと微笑んだ。
「見事です、レイス様。もう、ゴブリン相手なら問題ありませんね」
「……そうだな」
この肉体にレベル、という概念があるのかは分からないが、相当上がったんだろうな。
次は魔法の訓練だ。
ひとまず、ゴブリンがいる方角へと向かう。
二体が仲良さそうに獲物を探して歩いていたので、空間魔法を準備する。
最近は慣れたこともあり、多少距離があっても当てられるようになっていた。
だから、俺は隙だらけのゴブリンへ空間魔法を発動する。
俺の魔法が発動すると、空間が裂ける。それがゴブリンを飲み込む。
「ギャッ!?」
「ギィ!?」
驚いたような声が二体から聞こえる。俺は木の陰からその様子を眺め、そのゴブリンの腕を異空間へと収納する。
「ギャアア!?」
腕を引き裂かれたゴブリンは悲鳴を上げ、傷口を押さえるようにして蹲る。
無事なもう一体はこちらに気づき、飛びかかってくる。
「ギッ!」
「……」
まっすぐこちらへ飛びかかってきたゴブリンと俺との間に、空間魔法を発動させる。
突っ込んできたゴブリンの居場所を、腕を割いて動けないゴブリンの方へと転移させる。
「アガッ!?」
「ギィ……」
ゴブリンの攻撃は、見事にゴブリンに命中。
それで、一体を仕留めた。
完全に困惑している様子のゴブリンだったが、すぐに激昂してこちらに襲いかかってくる。
だが、もう手遅れである。
俺に迫ってくるゴブリンを空間魔法で飲み込み、上半身と下半身を分けるように切断した。
「グェ!」
苦しそうな声をあげたゴブリンは、そのまま倒れて、動かなくなる。
これで、二体の撃破を完了したわけだが……俺の魔力はまだまだ大丈夫だ。
「……さすがですねレイス様」
「いや、ゲーリングの指導のおかげもある。ありがとな」
俺に短剣と魔力の使い方の基本を教えてくれたのは彼だ。
とはいえ、まだまだ魔力の無駄遣いをしてしまっている部分はある。
空間魔法。こいつは問答無用で敵を切り裂くことのできる強力な魔法だが、魔力消費もえぐい。
……さっきのようにゴブリン相手に乱発していては、すぐに魔力切れを起こしてしまうのも事実だ。
より消費量を抑えるために、敵の急所を狙って攻撃できるようにしないとな。
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