第3話







 装備品を手に入れてからの一日のルーティンは簡単だ。

 まずは、魔法の訓練。

 これに関してはヴァリドー家が雇っている家庭教師がいるので、その人に毎日指導をしてもらい、技術の向上を図っていく。


 魔法。こいつは使用するまでに手こずるかと思ったが、そんなことなかった。転生したときに、この体で得た経験もすべて俺に引き継がれているようで難なく使用できた。

 ゲームのレイスくんが使っていた空間魔法は、剣先だけを空間魔法に入れて使うとかだった。

 なぜ瞬間移動とかしないのだろう? と思っていたが、恐らく燃費が悪くて使えなかったんだろうな。

 ただ、その燃費に関しては毎日の訓練を続けていけばいくらでも補強できそうだ。


 主人公のハイスペックさには劣るが、この空間魔法一本でも、ステータスが整えば問題なく戦えるだろう。

 

 次に行ったのは短剣の訓練だ。

 もともとレイスくんは剣を使っていたが、俺は短剣を使うことにした。ゲームでは、特に装備品などの縛りはなかったので、問題はないだろう。


 短剣を選んだ理由は、ゲームで性能的にずば抜けているものが多かったからだ。

 家庭教師の指導が終われば、その後は自主トレだ。やりすぎは禁物ではあるが、余裕があるわけでもないからな。


 ゲームと違ってステータスが見えないので断定はできないが、この世界はあくまで現実世界。

 こういったトレーニングで体を鍛えていくことも大事だろう。

 ゲームのように、装備した瞬間に剣が使えるようにならなかったし、経験というのは自分で身につけていくしかないんだと思う。


「レイス様。間食に焼いた鶏肉を持ってきましたが……」

「ああ、そこに置いておいてくれ」


 訓練の合間合間に、鶏肉を食べてしっかりタンパク質を補給。

 このタンパク質が俺の筋肉を鍛えてくれる……っ!


 ……まあ、鶏の魔物の肉なので、俺の知っている鶏肉とは少し違うのかもしれないが。

 食事もしっかりと摂って、一日のおおよそのタンパク質などを脳内で計算しながら、俺は日々を過ごしていった。




 今日もいつも通り、朝から訓練をしようと思っていた俺だったが部屋にやってきた使用人にあることを言われる。


「れ、レイス様……っ。本日は、リーム様が来られますので、その外には出ない方がいいかと……」

「何?」

「ひぃ!? も、申し訳ありません! 勝手なことを言ってしまって……っ!」


 ……やばい。前世のクソ上司の相手をしていた新卒の子を思い出してしまう。

 こんな感じで怯えきっていて、俺が後で声をかけるなんてのは日常茶飯事だった。


「いや、そう……怯えないでくれ。今日はリームが来るんだったか……。教えてくれてありがとう」

「え? ……あっ、は、はい」


 ……リーム、かぁ。

 リームは……俺の許嫁だ。

 といっても、原作スタートしたときにはすでにその関係はなくなっている相手なんだが。


 使用人が部屋から去っていったのを見届けたあと、俺は部屋の椅子に腰掛けた。

 ……俺の部屋は兄たちに比べて狭いのだが、最近は筋トレグッズも置いているのでさらに狭い。

 まあここにあるのはサイズの違う石で作ってもらったダンベルがいくつかあるだけだが。


「リーム、かぁ……あんまり会いたくねぇなぁ」


 リームから俺に対しての好感度は、恐らくマイナスだ。

 というのも、会うたびレイスくんは横柄な態度とともにセクハラをしていたからだ。


 一応、結婚するまでは事に及ばないという決まりがこの国にはあるようなのでそういったことはしていなかったらしいが、それでもレイスくんは胸を触ったり、尻を触ったりとセクハラ行為を散々に行っていた。


 そのため、俺は大変嫌われていることだろう。


 レイスくんがそこまでリームに強気だったのは、うちが公爵家で、リームは子爵家だからだ。

 レイスくんが立場の低い相手が許嫁になったのは、家族からの嫌がらせなのだが……それでもリームは立場が弱く、それを利用してレイスくんはストレス発散がわりに好き勝手やっていたというわけだ。


 このゲームが男性向けに作られていることもあり、美少女が多く、リームもそれはもうめちゃくちゃ可愛い子なのだが、レイスくんは見た目ではなくてもっと権力の強い相手と結婚したかったらしいからな。


 リームとは月に一度程度会う予定なんだよな。

 せめてこれ以上嫌われないように振る舞うしかないだろう。


 ……あんまり嫌われすぎると、今後に影響出るかもしれないからな。

 リームは、主人公側のヒロインの一人でもある。将来的なことはどうなるかわからないが、主人公に嫌われて標的にされても困るからな。


 嫌われないよう、仲良くしないとな。

 しばらくすると、リームが到着したと報告があり、俺は玄関へと向かった。



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