おまけの後日談7 わんわん!

「ぱぁぱ! わんわん!」


「ワンワンだねー、可愛いねー?」


「わんわん! わんわん!」


「あははっ、大海はワンワンが好きなの?」


「わんわん、すき!」


 ああ、俺の息子…… 可愛いー!



 …………



「わんわん!」


 …………


「わんわんわおーん!」


 …………あの、晴海…… さん?


「うふふっ、くぅーん……」


 ……尻尾をフリフリしないで下さいよ。




 今の状況を説明しよう!


 先日、晴海さんと大海と一緒に買い物に行った帰り、散歩中の犬を見かけた大海が興味を持ったのか、一人でトタトタと犬に近付いていったんだ。


 大型犬だったので少し心配だったが、大海に触られても、吠えたりせず黙って触らせてくれる大人しい犬だったので安心した。


 そして初めて触った大きな犬に大喜びした大海は、よほど犬が気に入ったのか家に帰ってからも『わんわん、わんわん』と大騒ぎ、それから毎日のように『わんわんにあいたい』と言うようになってしまった。


 あまりにも騒ぐもんだから、次の日は仕方なく公園に連れていったのだが、さすがに俺も毎日は連れて行けないし、もし犬を見かけたとしても、この間の大人しい犬みたいに触らせてくれるかどうか分からないから、どうしようかと悩んでいたんだ。


 まだ小さい凪海もいるし、育児で大変だから犬を飼う余裕もない、だからといって大海が毎日騒ぐたびに公園に行くわけにもいかない。 


 どうしようかと悩んでいた、そんな時、晴海さんが突然……


『うふふっ、じゃあママがわんわんになろうかしら?』


 と、これまたおかしな事を言い出した。


 いや、わんわんってどういう事だよ……




 そう思っていたら…… これだよ。


 犬耳のカチューシャ、マイクロな装備に犬のシッポを生やした…… 晴海さんが戦闘用寝室で待ち構えていて、この状況だ。


「そーくん、わんわーん、うふふっ!」


 おすわりをした晴海さんが目の前にいる…… いや、おすわりというか…… M字開きゃ…… ゲフンゲフン! 


 うん…… マイクロだからハミ…… いや、海草が水面からこんにちわしている。


 こんにちわどころじゃない、マ◯ノリさんレベルのこんにちわだよ、これ。


 マサ◯リさんでもこんなに元気にこんにちわしないよなぁ…… なんて、現実逃避をしていると……


「そーくぅん、くぅーん……」


 悲しそうで、切なそうな声を出している晴海ワンちゃん…… 


「……お手」


「わん! うふふっ……」


「……おかわり」


「わんわん! うふふっ」


 おぉ…… 俺が命令するたびに、晴海ワンちゃんは素早く反応する…… 反応するたびにどこがとは言わないがブルンブルンしているのがまた良い…… よしよし、良い子だ、ちょっと面白くなってきたぞ!


「お手!」


「わん!」


「おかわり!」


「わん!」


「ちん◯ん!」


「わん! わんわん! わおーーん!!」


 …………ギャアァァァー!


 ……お、おのれ! はかったな、晴海さん!! 


 それ、ダメ! ほね○こじゃないですから! 骨ないよ! わ、わおーん……



 ◇



「まったく…… 油断も隙もないわね!」


「くぅぅん……」


「『くぅぅん』じゃない! ママ? ちょっと歳を考えてよ! そんな格好して……」


「と、歳は関係ないじゃない!」


 そうだそうだ!  晴海さんがそういう格好するのが良いんじゃないか!


「……総一?」


 くぅぅん……


「はぁ…… 大海に見られなかったのが唯一の救いだわ…… 自分のママがわんわん言いながら戦闘してたらトラウマものよ?」


「そ、そんな事ないもん!  ちゃんとわんわん言ってたから大丈夫だもん!」


「大丈夫じゃない! とにかく! 昼間からわんわんごっこは止めてよね!  私が気付かなかったら大海が昼寝から起きて二人を探し回ってたわよ? ……ほら、満足したなら着替えて! 総一も後始末しなさいよ!」


「「はぁーい……」」


 美海に怒られちゃったよ…… 

 晴海さんのせいだぞ! しつけの出来た忠犬を装って、実は狂犬だったという…… しかも発情中の。


「そーくん、怒られちゃったね、うふふっ」


 晴海さんは満足してご機嫌だからあまり気にしてないみたいだけど……


 うん…… まあ、晴海さんは可愛いし? ちょっぴり積極的だから、ついつい流されちゃうのは仕方ないよね?


「わぁ…… そーくん、見て見て! すっごーい!」


 コラッ! 安全装置をぷらぷらしないの!



 ◇



「にゃんにゃん!」


 な、何だ!?


「ふふっ、にゃーん!」


 み、美海か?

 子供達と寝てたんじゃ……

 なぜ猫耳カチューシャに、マイクロな装備に細長い尻尾を生やして…… デジャヴか?


「しー! ……ママ達、ぐっすり寝てるから…… ねっ? 私…… 犬より猫派なのよね…… にゃん!」


 コ、コラッ! それは猫じゃらしじゃないぞ!?


「にゃん、にゃーん…… ふふっ」


 あぁっ! ちゅ、ちゅーる、でもないから! まっしぐらだよ、もう!


「にゃにゃっ、にゃぁぁん! にゃん、にゃぁぁっ、んっ!」


 ちぴちぴちゃぱちゃぱの、ぶんぶーんを止めなさい!


「ふふっ…… 逃がさないわよ、総一」


 ひぃっ! た、食べられるー!!


 猫かと思っていたら…… メスライオンでした。

 いや、女豹か? ……何でもいいか、食べられちゃったし。



 ◇



「わんわん!」


「にゃーん!」


 あのぉ…… 


「ママ、マイクロ過ぎない? 色々ハミ出てるわよ?」


「美海だって人のこと言えないわよ?」


「ふふふっ」


「うふふっ」


「「総一(そーくん)は、どっちが好き?」」


 ……はい、どっちも好きです!!


 今日も我が家は平和です。


「うふふっ」


「戦闘開始よ」


 ……いや、今日も我が家は危険が危ないかもしれません。

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