おまけの後日談6 おう、一杯やっていかないか?

 晴海さんがソファーに座り、胸部装甲をパージして大海に補給をしている……


 美海も隣で胸部装甲をパージして凪海に補給をしている……


 チラリと横目で見ると晴海さんと目が合い、空いている補給口を指差した後、笑顔で手招きをした。


 いやいや、大海が隣にいますから……


 すると、大海も補給しながらこっちを向き、手をパタパタと動かした。


 その目は『おう、一杯やっていかないか?』と言っているようで、それなら一杯だけ…… と思い、相席をすることにした。


『ここの店の燃料が美味いんだよ、兄ちゃん』という目で見つめられているので、味見をするために……


「総一、さっきから何ブツブツ言ってるのよ! 大海がそんな事言う訳ないでしょ? 総一じゃあるまいし」


 い、いや…… それは…… 心で通じ合うことがあるんだよ、男同士なら。


「エスパーみたいなこと言って! ただ補給したいだけのくせに」


 エスパーというか、そうだな…… ニュータイプ…… 乳だけに。


「うふふっ、そーくんは物知りねぇ、はーい、どうぞ?」


「ママ、総一は物知りじゃなくてただのスケベだから」


 補給なんだからスケベではないよな? 大海。


『ああ、補給は大切だ、この一杯のために一日頑張ってるんだ』と、大海の目がおっしゃってる…… さすが我が息子。


「いっつもいっつも、そんな下らないことばっかり思い付いて…… 補給させて欲しいならはっきり言えばいいのに」


「うふふっ…… そこがまたそーくんの可愛いところなんだけどね」


「ママは総一に甘々過ぎるのよ、まったく…… 仕方ないわね、こっちも空いてるわよ? いっぱい補給しなさい」


 じゃあ次は凪海と相席させてもらって……


 そんな感じで、俺達は一家団欒の時を過ごしていた。



 ◇



「まぁま! おやま!」


「あらあら、凄いわねぇ大海」


「ふふっ、天気が良くて気持ち良いわね、凪海?」


 今日は家族みんなで近くの公園へと遊びに来ている。

 

 晴海さんと大海は砂場で山を作って遊び、俺と美海と凪海はベンチに座り、砂場で遊ぶ二人の様子を見ていた。


 この公園は広い運動場や、散歩するのに丁度良い道が公園内をグルっと囲むように整備された広い公園で、日中は近所のお年寄りや小さな子供を連れたママさん達などで結構賑わっている。

 ここら辺はそんなに栄えた地域ではないから、この公園に人が集中してるのもあるんだろうけど。


「まぁま! こっち!」


「はいはい、うふふっ」


 大海は晴海さんの手を引き、トタトタと歩いてブランコの方に向かって行った。


「ふふっ、ママ、毎日凄く幸せそう……」


「うん…… そうだな」


 毎日全力で大海や凪海を可愛がり、笑顔で家事などを一緒にこなしている晴海さん。


「私も…… 凄く幸せ……」


 今の俺達の家庭は美海が大黒柱になっている。

 それに伴い俺と晴海さんが家事を分担してやってるのだが……

 時々家事の途中でイチャイチャとして美海に見つかったり、美海の仕事の合間にイチャイチャして晴海さんに見つかったりと、家事や育児、夫婦としての生活もみんなで楽しみながら幸せに過ごしている。


 だが……


「そろそろスーパーのバイトに復帰しないとな」


 育児休暇としてずっと休んでいるから、そろそろ行かないとクビになっちゃう……


「えっ? 総一は大海が生まれてすぐくらいに退職したことになってるわよ?」


「えっ!? お、俺何も言ってないけど……」


「私が伝えておいたわ! どうせ大海の育児が落ち着く頃には私がデキちゃうと思ってたから…… って、二年も休んでまだ働けると思っていたのがビックリだわ…… 育児休暇で二年も休むバイト、普通なら雇わないわよ」


 そ、そんな!! ……そういえば休職中に一切連絡来ないし、スーパーに買い物に行った時も『いつ復帰するか』なんて話にならなかった! えぇぇ……


「さすがエリートダメンズの総一ね、ふふっ、私とママがちゃんと支えてあげるから、総一はそのままでいいわよ」


 いや! こんなダメダメな奴が二児のパパだと知られたら…… いずれ大海と凪海がバカにされちゃう!


「もう手遅れだと思うけどね? 『ぱぁぱ、だめだめー』って大海も言ってるじゃない」


 うぐっ! そ、それは…… 美海と晴海さんが教えるから…… くそぉ…… このままじゃいけない! 働かねば!!


「ふふっ…… 無理よ無理、黙って私達に甘やかされてなさい」


 ぜ、絶対にダメダメダメンズから脱却してやる!


「きゃははっ!」


「楽しいわねぇー? うふふっ」


 その頃、晴海さんは大海を膝に乗せて楽しそうにブランコをゆらゆらとさせていた。



 今に見てろよ! そう思い、帰りにコンビニで求人誌を買ってみたはいいが……


「いやぁぁん! そーくんは働いちゃダメ! そーくんがいないと私…… 寂しくて死んじゃう!」


 家に帰ってから早速見てみようと求人誌を手に取った瞬間、横から現れた晴海さんに没収されてしまった。

 しかも丸めて胸部装甲の隙間に……


「晴海さん、返して……」


「やん! エッチ!」


 いや、そこに挟んでる人が言うかな?


「いいから返して……」


「キャー! エッチ!」


 …………


「もう! ダメよ、もっと優しく取らないと…… うふふっ」


 …………


「それぇ…… 求人誌じゃ、ないわぁ……」


 …………


「もう…… そーくんの…… エッチ」


 …………



 諸事情により、求人誌を取り返すのは諦めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る