おまけ (美海 前日譚)
幼馴染の総一。
普段は背伸びをしてお兄ちゃんぶっているけど、優柔不断だしヘタレだしナヨナヨして情けない。
だけど、何事にも一生懸命で(上手くいくとは限らない)精一杯、私に愛情を向けてくれる可愛くて大好きな人……
だけど昔から私のことを好きだったわけではないのは知っている。
総一の初恋の女性は…… 私のママだ。
十四歳で私を生み、子供と言ってもいい歳なのに、私を愛し育ててくれた大好きな私のママ。
少しおっとりとして優しい雰囲気の女性で、なのに大人の色気もありナイスバディ…… そんな女性が身近に居て、常に甘やかしてくれたら…… 好きになっちゃうよね。
でも私は諦めなかった。
総一に甘えるようにわがままも言ったりしたけど、常に総一に『大好き』と伝え続けた。
しかしそこはヘタレな総一。
笑って誤魔化して逃げ続けるばかり。
そして総一がもうすぐ中学生になる時事件が起きた。
三人でお風呂に入っている時、私は潜水艦が浮上しているのを発見してしまった。
その時に総一も気付いたんだろう、自分が思春期に入っていることを。
私からしたら遅すぎない? と思っていたけど、総一の成長を見れるお風呂の時間は私にとっても貴重な時間だったので、あえて黙っていた。
そんな潜水艦が…… ママを見て浮上してきたのにはビックリした。
そして、私は何故か分からないがとても悔しかったのを覚えている。
その日は何事もなかったけど、その次にお風呂に入っていた時、ママは失敗をした。
『うふふっ、そーくんの…… 可愛いままね』
あれから総一が色々知識を得たのも知っていた私は、ママの言葉で総一が傷付いたのが分かった。
可愛い…… やっぱり子供としてしか見られていないことに……
それからもママは『そーくん、私がきれいきれいしてあげるからおいで?』なんて無神経なことを言って……
ママは気付いてなかったかもしれないが、その時に総一とママとの距離が空いたのに気付いた私は、その間に入り込むように総一との距離を急激に縮めた。
女と意識してもらうために色々した。
成長途中の胸部装甲を強調した服を着たり、総一にぴったりとくっつくように私の存在をアピールし続けて…… 私達は晴れて結ばれた。
私に夢中になるように色々勉強して、イチャイチャして、ついに……
『美海、変じゃないかな?』
『凄い…… カッコいい潜水艦…… 素敵……』
あの時よりグレードアップした潜水艦と初めての戦闘…… 最初は色々大変でちょっぴり痛くて激しい戦いだったが、お互いに良い経験を出来た戦闘だった。
そして……
そんな私達の様子を覗き見るママの姿が……
恥ずかしさよりも『ママに勝った!』という喜びの方が勝り、ゾクゾクっとしたのを今でも覚えている。
その後も暇さえあれば総一との幸せな戦闘を続け、その様子を観戦するママ。
そのうちママは大胆になり、顔が丸見えの状態でママと私の部屋を仕切る襖から戦闘を覗き、水遊びをしていた。
でも総一は不思議なくらい全く気付かないの。
私はたまにママと目が合って、勝ち誇った顔をしていたと思う。
でも…… ある時、ふと思ってしまった。
ママは私達が楽しんでいる歳の頃には、私を生んで子育てに追われていた。
若くして私を生んだことで、ママの大切な時間を潰してしまったんじゃないかということを。
そう思うと、わざわざ見せつけて戦闘していたことに、ひどく罪悪感を覚えるようになってしまった。
ママも私が居なければ普通に恋愛出来たかもしれない。
そう考えるたびに申し訳なくなってきて、罪悪感に押し潰されそうになった。
だからといって、ママを自由にしていたら危ない。
私も人のことを言えないが、男性の趣味がちょっと……
私の生物学的上の父親はとんでもないクズ人間、そんなダメ男をママは好んでしまう傾向があるから…… 危ないんだ。
じゃあどうしようかと悩んだ末…… 私は幸せをお裾分けすることを選んだ。
だって総一の初恋の女性はママで、あんなに熱心に戦闘を覗いていたママなら…… 総一のこと、男性として好きになるよね? だって私のママだし、総一は良い感じにダメダメだし。
そして私は計画を立てた。
私の誕生日パーティーの時、総一にたくさんお酒を飲ませ、ママの部屋に誘導するようにして私の部屋に鍵をかけていた。
そしてベロベロになった総一は思惑通りにママの部屋に行って…… あっさりと上手くいき、ママと総一は結ばれた。
イヤと言いつつ幸せな顔で戦闘していたママにひと安心。
あとはネタばらしをして…… と思っていたのだが、一度、一戦…… じゃなくて一線を越えたママは予想以上に大胆だった。
長年溜まっていた闘争本能のせいなのか、毎日のように総一を誘惑して、優柔不断な総一は流されるまま戦闘……
好きになった人にはすべてを捧げちゃいたくなるんだろう、ママはとことん総一を甘やかし、総一の望むがまま母なる海で包み込むように受け入れていた。
私が嫉妬するくらい幸せそうに何度も何度も魚雷を被弾しちゃって……
そしてついに命中して撃沈……
まあ、私はママが幸せになってくれるなら別に良かったんだけど。
『うふふっ、命中しちゃったらどうしよう…… 考えただけで幸せになっちゃう…… でもダメよ晴海、そーくんは娘の、美海の彼氏なのよ! ……あぁん、でもぉ、そーくんの魚雷をいっぱい被弾したい……』
そう独り言を言いながらこっそり水遊びしたもんね、良かったねママ。
最初はちょっとお裾分けするつもりが、三人になって更に大きな幸せになり……
そして、新たに素敵な宝物を手に入れたママ。
今は毎日幸せそうにその宝物を抱き締めている。
そんなママを見て……
『総一、次は私だからね? ……ちゃんと命中させてね?』
私も宝物を手に入れるために、総一と毎日のように幸せな戦闘を繰り返している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます