おまけの後日談 スケベなことを考えてる顔よ 

「うふふっ、可愛い……」


「ふふっ、お腹いっぱいで寝ちゃったみたいね」


 大海が生まれて数ヶ月、子育ての大変さを実感しながらも、賑やかで幸せな毎日を過ごしている。


 リビングのソファーに座りながら授乳をしていた晴海さん、その後、大海が眠ったのを微笑みながら見つめていて、その隣には一緒に座り授乳を見守っていた美海がいる。


 そんな家族の様子を、俺もキッチンで洗い物をしながら微笑ましく見ていた。


「うふふっ」


 晴海さん、大海が生まれてから更に魅力が増したんじゃないかな?

 元々ほんわかとして包容力のある優しい人ではあったが、その印象が更に強くなったというか…… 


「ふふっ」


 それに美海も…… しっかりして頼れる印象はあったが、たまに末っ子のような感じでワガママを言っていたりしていたのに、お姉さんになったからかワガママも少なくなったような気がする。


 大海が生まれて、みんなも色々と成長しているのかな?

 


「総一、洗い物終わったならこっちにおいでよ、大海の寝顔、可愛いわよ」


「そーくん、いつもありがとね、頼りになるパパだわ」


 ……俺も大海のおかげで少しは成長したかな? 父親として、男として。


 それにしても……


「うふふっ、なぁに、そーくん? ジーっと見られると照れちゃうわぁ」


 胸部装甲が…… 凄いんだよ。

 厚みもそうだが、燃料タンクとしての役割もあって…… パンパンなんだ。


 パンパン過ぎて燃料は漏れ出てくるし、別の容器にも移してストックもしておかなきゃいけないし…… しかも『うふふっ、そーくん手伝って?』なんて言ってくるんだぞ? ……困っちゃうよ。


「ママ、総一の顔を見てよ、きっとあれはスケベなことを考えてる顔よ」


 み、美海!? いや、俺はそんな事を決して考えて……



『あーん、そーくん燃料出すの上手ぅ……』


『ついでに…… 補給、する?』


『うふふっ、大海の分の燃料失くなっちゃう……』



 決して…… 


「やーん! そーくんの…… エッチ! うふふっ」


「ほらね? まったく…… 仕方ないパパねー? 大海」


 こらっ! 寝ているからって大海に言うんじゃありません! 


「ほ、ほら! 晴海さん、風邪引くから早くしまって下さい!」


「はぁーい! 美海、大海を抱っこしてて?」


「分かったわ…… あぁん、可愛いわ大海…… 早く私も……」


 うっ! チラッと俺を見ないでくれ!

 ……落ち着いたらって約束だろ?




 そして夜になり、大海を寝かし付けた後……


「うふふっ! やっと戦闘解禁ね!」


 ウキウキしながら装備を外していく晴海さん。


「久しぶりに三人でじっくり戦闘出来そうだね、ママ」


 同じく装備を外す美海……


 圧倒的戦力の姉妹艦…… いや、母娘艦を前に、潜水艦は徐々に浮上してきた。


 三人での実戦は本当に久しぶりだ。

 最後は大海が生まれる前だよな?

 ただ、たまに美海との戦闘はしていたし、横で見守られながら晴海さんとも時々模擬戦も…… ほどほどにはしていたが。

 そしてようやく晴海さんの戦闘許可が下りて、早速戦闘開始ってわけだ。


 それにしても…… 相変わらずの美しく強そうな巨大戦艦、補給装置や船体を強化し更に能力の増えた巨大揚陸艦が相手だ…… 勝ち目はあるんだろうか、潜水艦で。


「うふふーっ、じゃあ…… 戦闘始めましょ?」


「覚悟しなさい、総一」


 うぐっ…… ま、負けないぞ!







 …………

 …………







 あぁぁー!! 撃沈! 撃沈するから! 


「うふふっ、また魚雷発射しちゃう?」


「負けそうになってすぐ魚雷を撃っちゃうんだから…… ダメダメ潜水艦ね」


 四つの大きな海山に行く手を阻まれ、航行不能となった潜水艦。

 目の前ある二つトンネルからも攻撃を受け撃沈寸前だ。


 既に母なる海の深い海溝や、潮の流れが強い海溝での戦いを終え、ボロボロの状態でのトドメの攻撃を今受けている。


「は、晴海さん!」


「あっ! また『さん』って付けたわね?」


「うふふっ、えいっ、また攻撃しちゃうんだから!」


「駄目よ総一、ちゃんとママも『晴海』って呼んであげないと」


 そ、そんな事言われても…… ずっと『晴海さん』と呼んでいたから、すぐには直せないって。


 

 『パパが『晴海さん』なんてよそよそしく呼んでいたら、大海が可哀想でしょ?』という理由で『晴海』呼びをさせられそうになったのだが、すぐには無理だから、ならば戦闘中くらいは呼び捨てで呼ぶように言われてるのだが……


 大海の前では『パパ、ママ』呼びだから、意味ないんじゃない?


「でも戦闘中に『晴海』って見つめられながら呼ばれて…… ドキドキしちゃったぁ…… うふふっ」


「ほら、ママだって喜んでるでしょ? 家族の絆を深めるためにはもっとみんなでラブラブしないと!」


 うーん…… 十分してると思う…… はぅっ!!


「口答えしない! 魚雷を無駄撃ちさせるわよ?」


「美海、もっとそーくんに優しくしてあげて? あっ、不発弾は私が処理するから、いつでも、何度でも魚雷発射していいからね? うふふっ」


「そう言ってるけどママの方が攻撃が激しいじゃない」


 うぅぅっ! 美海っ、は、晴海……


「あはっ! そうそう、ちゃんと『晴海』って呼んであげてね?」


「んっ! ……はい、なぁに? そーくん?」


 もう……


「ふふっ……」


 暴発しちゃうっ!!


「うふふっ、好きなだけ、いーっぱい魚雷を発射してね?」




 …………

 …………


 

 晴海…… さん…… 美海……


「うふふっ、また晴海さんに戻ってるわ」


「仕方ないわね、まぁそのうち慣れるわよ」


 

 ……激しい戦闘だった。

 久しぶりということもあって、二艦ともエンジン全開だったなぁ。

 特に久しぶりの戦場で揚陸艦の働きは凄いものだった。



 ただやっぱり戦闘中以外は『晴海』と呼べなくて『晴海さん』と呼んでしまう。


 それでも俺が『晴海さん』の名前を呼ぶ時には、昔とは比べ物にならないくらい愛が込もっていると思う。


 伝わっていればいいな。


「うふふっ、そーくん、私愛してるわ」

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