おまけの後日談2 勝負よ、総一

「ふぅ…… これで終わりか?」


「うん、お疲れ様」


 大海が生まれ賑やかになった分、俺達はあることに気が付いた。

 家族が増えると家が狭い! ということだ。


 そこで今より大きな部屋に引っ越すことを考えていたのだが、晴海さんが何かを思い出したみたいで


『そういえばこの家って昔、私のお父さんが使っていたんだけど…… その時はもっと広かったような……』


 そしてマンションの管理会社などに聞いて調べてみると、俺と両親が住んでいた家と晴海さんと美海が住んでいた家は元々、二つで一軒の家として使用していたことが分かった。


 主に晴海さんのお父さんが仕事部屋兼別荘代わりとして使われていた部屋だったみたいで、使われなくなり売りに出す時に二戸になるようにリフォームしたとか…… 


 そこで今は物置と化している俺の実家の方と繋げて元の一軒の家にリフォームしようという話になったんだ。


 リビングにある壁を一ヶ所くり抜いて、扉を新たに取り付ける工事を美海が依頼していたらしい、でも…… 工事が終わるの早すぎるだろ。


 美海が大海が生まれてすぐにもう工事をする手配を始めていたらしいのだが、手配も後始末も含め、一ヶ月もかからないうちに工事は全て終わってしまった。


 そして今、元俺の部屋に美海の仕事用のパソコンなどを運び終えたところなんだが


「総一が使っていたこの部屋を仕事部屋にするとして…… あとは大海が大きくなったら使う部屋と、私達の子供の部屋は…… お義父さんお義母さんが使っていた部屋を使ってもらおっか」


 俺の実家の方を見渡し、うんうんと頷いている美海、でも俺にはそれよりも気になることがある。


「う、うん…… なぁ…… 晴海さん、大丈夫かな?」


「大丈夫よ、久しぶりの家族との再会だもん、まあ勘当したママの両親…… 私のおじいちゃんおばあちゃんがもう亡くなっていたのは悲しいけどね」


 美海がリフォームを依頼した会社が…… 晴海さんの実のお姉さんが経営する会社の子会社だったらしく、今、晴海さんは勘当されて以来、久しぶりにお姉さんと再会するために大海を連れて出掛けている。


 しかもその親会社、この辺では有名な企業で、飲食やアパレル関係など数多く経営している大企業だ。

 最近はお姉さんの娘さん…… 美海にとっては従姉妹にあたる人が団子屋のプロデュースを始めたとテレビやCMなどで話題になっている会社だった。


 まあ、俺達には直接関係はないのだが……


「美海、会社の事を知ってて頼んだんだろ?」


「……まぁね、昔、色々調べているうちに偶然知っただけなんだけど、大海が生まれてママも幸せそうだから、どうせならもっと幸せになってもらおうかなって…… 私を産むために実家を追い出されたようなものだし……」


 美海……


「こんな優しい娘に成長して、晴海さんも喜んでるよ『自慢の娘』だって」


「そう…… かな?」


「そうだよ! 美海が生まれてきてくれたおかげでみんな幸せなんだから!」


「ふふっ、ありがとう、愛してるわ、総一……」


 そういえば俺のベッド…… 久しぶりに使うけど大丈夫だよな? 掃除はこまめにしているし…… 


「ふふっ、この部屋で戦闘するのも久しぶりね…… いいわ、勝負よ、総一……」





 …………

 …………




「むぅー!! 二人ともズルいわよ、ママが居ない間に!」


「別に良いじゃない、ママ達だって私に内緒でこっそりしてるの知ってるのよ?」


「え、えっ!? こ、こっそりなんてしてないわよ? お風呂とかトイレとか……」


「……ママ、私にはバレバレだからね?」


「はぅぅ…… そんなぁぁ……」


 おー、よしよし大海ー? 良い子だからママとお姉ちゃんの話は聞いちゃダメだよー?


「……で? 久しぶりのお姉さんとの再会はどうだったの?」


「うふふっ、久しぶりだったけど、お姉ちゃんったら相変わらずだったわぁ、あっ、そういえばお姉ちゃんの娘さんに子供が生まれて、今はお義兄さんと二人して孫にメロメロなんですって!」


 晴海さんとお姉さんは少し歳が離れているらしい。

 だから妹の晴海さんを溺愛していたみたいだが、晴海さんが勘当されてからは行方を教えてもらえず、お姉さんはずっと探していたみたいだ。


 しかし晴海さんがこんなに近くにずっと住んでいたことを知って、お姉さんは凄く落ち込んでいたみたいだ、なので久しぶりの妹との再会を本当に喜んでいたらしい。


「近いうちに美海とそーくんを紹介しろって言われたわぁ、うふふっ」


 とにかく、縁が切れていた家族と再び関わりが出来たのは晴海さんにとって良いことだと思う。


「ありがとね美海…… お姉ちゃんに『可愛い自慢の娘』って紹介しなきゃ、あっ! そーくんも『ダメダメで私達がいないと生きていけないけど、自慢の旦那様』って紹介するから安心してね?」


「うぅっ…… ママぁ……」


 あの…… 良い雰囲気の最中に申し訳ないんですが…… 俺のその紹介、安心できる要素がないんですけど……


「きゃっ、きゃっ!」


 母娘で抱き合う感動の場面の中、たまたまだと思うが、俺は息子の大海にすら笑われている状況……


 まあ、幸せだから良いんですけどね?


 ……そろそろ俺もダメンズからの脱却、頑張らないとな!


「「総一(そーくん)は今のままでいいの!!」」


 あ、はい……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る