ム、ムッツリスケベじゃないもん!(6~7ヶ月目)

「ふぅ…… 総一、肩揉んで」


「はいはい……」


「はぁ…… 気持ち良い…… さすが総一ね、私の身体を知り尽くしているだけあるわ」


 美海よ、その言い方はどうかと思うぞ?


 妊娠中ということもあり、ここ何ヵ月かは晴海さんに寄り添っている時が多い。


 だが、長年付き合っている美海との時間も大切にしている。

 今もこうして仕事を終えた美海の肩を揉んで労いつつ、二人きりの会話を楽しんでいるし。


 ところで何故お前は家に居る時間が多いんだ? と気になっている人がいると思うが、恥ずかしながら大きな失敗をして正社員の話が無くなったからだ。


 特売のポップの金額を間違えて、設定した金額より安く売ってしまったんだ。


 他の人も確認を怠っていたからとクビは免れたが、正社員は無し、アルバイトに逆戻りしてしまったんだ。


 ……言い訳をさせて欲しい。

 突然彼女の母親に妊娠を報告されたんだぞ? 初恋の人とはいえ『彼女』の『母親』だ、動揺しない方がおかしい。

 その結果、仕事に集中出来ず失敗してしまったんだ。


 それを美海に伝えると『ママのせいにしないの! それくらいで動揺して失敗するなんて、総一は本当ダメダメね…… いいわ、生活費は私が出すから、総一はママに集中してなさい』だって。


 そういうわけで俺は今、絶賛ヒモ生活中だ。

 だから美海の肩くらい喜んで揉みますよ。


「はぁ、んっ、良いわぁ……」


「おい、変な声出すなよ」


 そんな声を出すと……


「…………」


 ほら! 美海の艶かしい声に気付いた晴海さんがこっそり覗いてるから!


「はぁん…… まったく、ママはムッツリスケベなんだから」


「ム、ムッツリスケベじゃないもん!」


 入ってきた…… でも、美海だって俺と晴海さんが二人きりでイチャイチャしていたら覗きに来るから、お互い様じゃないか?


「何よ、総一は私もムッツリスケベだと思ってるの?」


「いや……」


 美海はただのスケベだろ、なんせ圧倒的火力だもん。


「失礼な事を考えてるわね? おしおきが足りないのかしら?」


 お、お仕置き!? 昨日もお仕置きされたような…… 一昨日もか、あははっ、お仕置きされてばっかり。


「大丈夫よそーくん、おしおきの後はたーっぷり慰めてあげるから! うふふっ」


「お仕置きって…… そんな酷いことしてないでしょ? おしおきって感じで、総一だって喜んで白旗掲げてるし」


 ……うん、一応恋人同士での戦闘だから、痛くて辛いとかはないけど、火力高すぎじゃない?


「ふふっ、好きなくせに」


 …………


「戦闘? 戦闘するの?」


「あの、晴海さんは少し落ち付いて下さい」


 戦闘解禁になったからって喜び過ぎですよ? 無理はダメなんですから、一日は休んで下さい。


「えぇ…… がっかり……」


「ママの戦闘が激化すると赤ちゃんがかわいそうよ? 優しく戦闘して赤ちゃんを安心させてあげて」


「うん…… 善処しますぅ」


 戦闘を止めることはないのね? ……魚雷が勿体無いとは思わないんですか?


「魚雷は撃ってこそ魚雷でしょ?」


「無駄に撃っても、命中させても魚雷は撃ったらスッキリ、美海や私もニッコリ」


 晴海さん、ラッパーみたいですよ。



 ◇


 妊娠七ヶ月、優しく戦闘をして、その後に触れ合いながらイチャイチャしていると、晴海さんが俺の頭をお腹に付けてみるよう言ってきた。


「うふふっ、男の子だからかしら? 美海の時よりも元気に動いているような気がするわ」


 俺は晴海さんの大きくなったお腹に耳を当て、その俺の頭を晴海さんは抱えながら撫でている。


「パパ、話しかけてあげて? うふふっ、きっと聞こえてるから」


「……パ、パパだよ? 元気に産まれてきてねー」


 すると晴海さんのお腹がぽこんと振動した。


「うふっ、パパに話しかけられて喜んでるわぁ」


 こうして直接反応があると感動するな…… 俺達の赤ちゃんが順調にママのお腹で育っている証拠だから。


「身体は大丈夫ですか?」


「うん、これくらい大きくなると腰が痛くなっちゃうけど、大丈夫よ」


 それにしてもお腹も大きくなったが、胸部装甲もグレードアップしたなぁ……


 元々、晴海さんは胸部装甲厚めだったのに、更に大きくなって…… 凄いことになっている。


 赤ちゃんの補給のため厚みが増したんだろうが、補給口からは若干燃料が漏れてきている。

 正確にはまだ燃料になりかけらしいが、それでも胸部装甲から漏れ出る燃料を見ると……


「あん、また出てきちゃってる…… うふふっ、そーくんが赤ちゃんへの補給の練習してくれたからかしら?」


 膝枕で寝かされ、補給されながら潜水艦もメンテナンスするなんて、さすが晴海さんだ。


 あっという間に白旗が掲げられ、その後はお礼にメンテナンスした潜水艦の機動力を披露するために深い海溝に潜って……


 魚雷は上部のトンネルに向けて発射されたが不発弾はトンネル内ですべて処理され、そのまま海の奥底へと消えていった。


「そーくん、また補給の練習する?」


「は、はい……」


「んっ…… うふふっ、よしよし、おっきな赤ちゃんでちゅねー? あぁん、そーくん可愛い!」


 燃料の量はそれほどないが、補給口を含むと…… 癒される。


「うふふっ……」


 すると部屋の扉が開いて美海が入ってきた。


「……まだやってたの? 総一は補給が好きね」


「可愛いでしょ?」


「まあね…… ふふっ」


 二人に見つめられながらも、補給口から離れられない…… ああ、ママぁ……


「はい、ママでちゅよー?」


「うん、ママよね、総一のじゃないけど」


「あっ! また動いてるわ! うふっ、みんな仲良しで赤ちゃんも嬉しいみたい」


「本当? ……お姉ちゃんよー? ふふっ、早く会いたいわ」


 美海も晴海さんのお腹に顔を当て、お腹の中で元気に動いている赤ちゃんに話しかける……


「……ぷはぁっ、晴海さん」


「うふふっ、なぁに?」


「大好きです」


「やん、急にどうしたの?」


「いや…… 今言いたくて……」


 負担も大きいだろう、でもそれを感じさせないようにして、更に甘えさせてくれる晴海さんが無性に愛おしくなって、言いたくなったんだ。


「うふっ、私も大好きよ、そーくん……」


 そして、もうノルマも関係なく、当たり前となったキスをして、再び晴海さんに甘えるようにそっと抱き着いた。

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